↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊と歩む少女【旧バージョン】  作者: アインス
エピソード 0

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/55

これからの道②

静寂が応接間を包む中、イツカは静かに口を開いた。


「まずは状況の整理からだな」


低く落ち着いた声が、場に緊張感を際立たせる。


ソファとノエルが並んで座り、ピエールは腕を組んで視線を落とす。


マウロは先ほどのやり取りのせいか、まだどこか落ち着かない様子だった。


「オロディア軍の敗走は確定した。

 しかし、ムタレンは取り逃がした。

 このまま何もせずに終わるとは思えない―

 って話をしてたんだが…嬢ちゃんはなんの用だい?」


「待ってください!……それって、また戦になるってことですか?」

ソファが不安げに尋ねる。イツカは頷きながら続けた。


「そうなるだろうな。少なくとも、

 ウチは宣戦布告もなく攻め込まれた。

 ムタレンは今回の不始末を誰かに押し付けるだろう。

 そして、それを正当化するために新たな策を講じるはずだ」


「……あのブタなら、もう言い訳の準備はできてるでしょうね」


ノエルが小さくため息をつきながら言う。

ピエールは苦々しい表情のまま頷いた。


「ええ。私の推測ですが、彼は本国へ戻る前に、

 まず自らの責任を回避するための行動に出るでしょう。

 恐らく、敗戦を裏切り者のせいにして、内部分裂を誘発させるのではと」


「タキミンの一族やピエールの妻……

 ムタレンの気まぐれ一つで、どれだけの人間が巻き込まれるか分からないな」


イツカがそう言うと、ピエールの顔が僅かに強張り、

その手は、無意識のうちに拳を握り締めていた。


「安心しろ…ピエールの妻はコードが救出に向かったんだろう?

 脱出はまだ無理だろうが、そこは信頼してくれて構わない」


その言葉に、ピエールが短く頷く。


「俺たちの次の動きは、オロディアへ向けて正式な使者を送ることだ。

 向こうは形はどうあれ、将軍が率いた正規軍として攻めてきた。

 これは個々の戦いではなく、国と国との問題だ。

 確かめたいこともあるしな」


イツカの言葉に、ソファは目を見開いた。


「使者って…そんなこと、ここで勝手に決めていいんですか?」

彼女の問いに、イツカはわずかに笑みを浮かべながら言った。


「問題ねぇよ。この国の王サマってのは俺だからな」


「……っは!? い、今……何と?」


マウロは信じられないものを見るような顔で、思わず声を上げる。


驚きのあまり、視線をあちこち彷徨わせ、アリアへ視線を向けた。


「ア、アリアさん!? これは……本当なんですか!?」

慌てて問いかけるも、アリアは至って冷静なまま頷く。


「ええ、本当よ。彼がこの国の王という事に間違いはないわ」

「お、王…様…?」

マウロの口が何度か動くが、言葉にならない。


あまりに自然体なこれまでのイツカの姿を思い返し、どうにも納得がいかないのか、

困惑したまま小さく何やらブツブツと呟いている。


ピエールはそんな彼を横目に、少し目を伏せていた。


「……お前さんは、薄々何かに気付いてたって顔だな」


イツカがピエールを見て言うと、彼は静かに頷いた。


「正直なところ、貴方はギルドの中枢にいる人物であるとは思っていましたが…

 影響力が強すぎるとも思いましたが…、王であるとは想像もしていませんでした」


ピエールは平静を装っていたが、その声にはわずかに震えが混じっている。


「私は軍の上層部にいたわけじゃない。だからこそ、

 この国の統治者について深く知る機会はなかったが…

 ……この国は他の国とは統治の仕方というか、

 国の在り方が異なるのですね」


国政を担う人間が、こうして現場にいるという事実が彼には信じ難かったのだろう。


ピエールの言葉に、イツカは静かに彼を見つめる。


「俺が何者であろうと、今までのお前にとっては関係なかっただろうしな」

「……確かに、それはそうかもしれません」

ピエールは口元を歪め、苦笑するように息を吐いた。


「ですが、知ってしまえば話は別です。

 正直、そこまで深く考えていたわけではありませんでしたが…

 …王が前線に立つ国というのは、

 私のいた国とは随分と違うのだと実感しました」


「まあ、そもそもここはハンターの国だしねぇ」

ノエルがやれやれといった様子で言葉を挟む。


「それ、この間ギルドで聞いたんだけど、本当だったんだ?」

ソファが驚いた顔で聞き返すと、ノエルは肩をすくめた。


「そ。荒くれものの連中をまとめて、自分たちの手で国を作ったのよ。

 そこに戦争やら圧政やらで居場所を失った人々が集まって、今の形になったの」


その言葉に、ソファはさらに目を丸くする。


「そんなこと……できるんですか?」

「普通は無理。でも、やっちゃったのがここの連中ってわけ」


ノエルの説明に、ソファは完全に圧倒されたような顔をした。


「話は聞いてたんならそんな驚く? そっちの方がびっくりなんだけど」

「普通、王様ってもっと……威厳がある感じで…

 もっと偉そうで、豪華な服とか着てるんじゃ…」


マウロの呟きをノエルは鼻で笑い、イツカの方を見やりながら、わざとらしくため息をついた。


「ここのギルドで活動してるなら、知ってて当然でしょ?

 イツカの態度が普段からアレだから、王様だって信じたくないのも分かるけどね。

 だって、全然威厳ないし」

「威厳がないは余計だ」


イツカが不機嫌そうにノエルを睨むが、彼女はまるで気にした様子もなくニヤリと笑う。


「実際そうじゃない? ギルドの長でもあるけど、

 王って名乗るのをめんどくさがってるでしょ」

「……別に、名乗る必要がないだけだ」


「まあ、知ってたところで、別に何が変わるってわけじゃないけどね」


「ハイハイ!詳しい話は今度するとして――

 次の動きを決めるにしても何かするにしてもこっち側の話。

 話を戻すわよ」


そこでアリアが話を遮るように口を開く。


イツカが軽く頷き、口を開く。


「ピエールの話とマウロの話はちょっと置いといて…だな、

 嬢ちゃんはなんの用だい?」


「なんかトリップしちゃってるし、ソファというよりアタシが話あるんだけど!」

ノエルがイツカにそのまま話を切り出す。


イツカも、側のアリアも目線でノエルに続きを促す。


「そもそもアタシたちがここに来たのはアンタに文句言いに来たのよ!

 アタシ以外の4人全員ってヒドくない?

 ウチはスプライト“クインテット”なのよ!

 名前どうしろってんのよ!ってね」


「…解散だな」


何かがツボに入ったのかイツカが俯き震えながら答えた。


「簡単に言うんじゃないわよ!ていうか、笑うな~!」

尚も俯き震えたままのイツカに対して、咳払いをして続けた。


「まぁいいわ。ここにいるソファと、そこで寝てるセレナ。

 この2人、ウチに貰うわよ。当人からは許可済みよ」


「…セレナからはさっき聞いた…が、嬢ちゃんもか?

 言っちゃあ何だが、お前ら2人とは圧倒的にレベルが違うぞ?」


先程までとは打って変わって、真剣な眼差しでイツカはノエルに向き合う。


「セレナには丁度いいリハビリになるでしょ?

 ソファとは、さっき話してとりあえず期間限定でってことで話はついてるの。

 そもそもこの子センスあるわよ。ちょっと2人で鍛えてみるわ」


「じゃあクインテット改め、トリオね」

横からアリアが冷静に告げる。


「そ。もう今回の話にも首突っ込んじゃったから、何かあったら手伝うわ。

 …依頼出すならコードのハゲとそこのピエール?の奥さん連れて来るわよ?」


「あら、助かるわ。頼んでいいの?」

「ちょっ!いきなりそんな…!」


話のテンポに付いて行けなくなったソファが割って入るが


「連れて帰って来るまでよ?あのハゲはいらないわ!」


「そんな事言わないで…コード入れたら、後1人でクインテットじゃない」

「メンバーはアタシが決める!ハゲはいらない!

 下品だし、ソファの教育上良くない!」

「それもそっか。

 じゃあ連れて帰って来るまではお願いするわ」


「了解~っと。あとはマウロ君だっけ?君どうする?」

突然話を振られたマウロは戸惑いながらも口を開く。


「実はソファがここに来る前にイツカさんに相談に来てたんです。

 予想外の話ばっかりで順序も何も滅茶苦茶になっちゃったけど。

 …ソファ、俺は一緒に行けない」


「?」

突然のマウロの宣言にソファは言葉が出なかった。


「今のままじゃあ、デイルの最後の頼みも聞けないってイツカさんに相談に来たんだ。

 ソファにはここから出たら話すつもりだったんだけど、

 イツカさんは俺を鍛えてくれるって。

 …で、ソファの事はそれまで任せとけって」


「…全部アンタの予定通りって訳ね?」

ノエルの一言はアリアに向けて放たれ、皆の視線がアリアに集まる。


「戦いが終わってからこうなるまでは予想通りね。

 あと一つ、ピエールさん?あなたはどうしますか?」

今度はピエールに視線が集まる。


「恐らく今頃は奥さんとコードはもう合流しているはずよ。

 ただオロディアからここまではコード1人じゃ簡単には来れないわ。

 こっちから迎えに行かなくちゃ。多分コードもそれは分かってる。

 迎えには、そこのノエルと、ソファちゃん。それにここで寝ているセレナ。

 あなたも一緒にどう?」


「…私としては願ってもない話だが、

 アリアさんの言う通り妻が無事で、運良く合流できたとして、

 オロディアには私達の居場所はない。この国で迎えてくれるのでしょうか?」


「自分達の食い扶持を自分で何とかする自信があるなら

 ウチは何の問題もねぇぞ?」


イツカの発言にピエールが答える。


「それは、この国で私にハンターとしての生き場所を与えてくれるという事ですか?」

イツカは答えずにただ微笑みながら頷く。


「-!是非、私も同行させて頂きたい」


「決まりね!とりあえず“スプライトカルテット”」


ポンっと手を叩き笑顔のアリアに


「負けた。ホンっといい性格してるわ!」

「さぁさぁ、今日はこれでおしまい!

 詳しい話は一休みして、朝ご飯食べてからね。

 お休みなさ~い」


そう言ってアリアは颯爽と部屋から出て行った。


「あいつ、ポンポン話まとめて…寝たかっただけじゃねぇかよ」


イツカの呟きにノエルも頷きながら


「まぁ、こういうのは全部アリアの仕事だし、今日は働き詰めだしねぇ。

 アタシもここで寝るわぁ。ソファちゃんも取り合えず休みな~」


「ちょっと展開に頭が付いて行ってないです。

 言われた通り、今日は…寝ます」


そう言ってノエルとソファはそのまま眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。