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異世界子供ヤクザ:無名のバクト  作者: 忍絵 奉公


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第6話 無言竜


 西地区二番街。

 地下。

 そこには、王都イデオの裏社会でも限られた者しか入れない場所があった。

 無言竜本部。

 広い畳部屋。

 高級香。

 静かな空気。

 壁には巨大な黒竜の掛け軸。

 そこに、一人の老人が座っていた。

 無言竜会長――ガンリュウ。

 初老。

 髪は真っ白なオールバック。

 皺だらけ。

 だが背筋は伸びている。

 着ている和服は、生地だけで家が買えそうな代物。

 そして腰には刀が二本。

 年老いているのに、妙な迫力があった。

 その前で、幹部たちが頭を下げている。

「……つまり」

 若い幹部スミスが言った。

「極楽連合は、子供四人に壊滅寸前です」

 一瞬。

 静寂。

 次の瞬間。

「ぶははははは!!」

 ガンリュウが腹を抱えて笑った。

「なんだそりゃ!」

 畳を叩いて爆笑する。

「花刺されたんだって!? しかも全裸!?」

「……はい」

「ギャハハハ!!」

 幹部たちは困った顔だった。

 だがガンリュウだけは楽しそうだった。

「面白れぇガキだなぁ!」

 スミスが眉をひそめる。

「会長、笑い事ではありません」

「ん?」

「現在、東区のチェリーパイと抗争中です」

 部屋の空気が少し変わる。

 東区。

 そこは西とは別世界。

 貴族。

 商人。

 劇場。

 高級店。

 そして、その裏社会を支配する組織――チェリーパイ。

 無言竜とは長年争っていた。

「もし、そのガキどもをチェリーパイが取り込んだら厄介です」

「ほぉ?」

「西地区の住民人気まで持たれたら、面倒になります」

 ガンリュウは煙管を吸った。

 そしてニヤリと笑う。

「ますます会いてぇな」

「……会長?」

「そんな痛快なガキ、見てみてぇじゃねぇか」

 幹部たちがざわつく。

「行こうぜ」

「どちらへ」

「六番街」

 スミスが立ち上がる。

「護衛を用意します」

「いらんよ」

 即答だった。

「ですが……!」

「ガキだろ?」

「チェリーパイの鉄砲玉が動いてる可能性も――」

「来ねぇよ」

 ガンリュウは笑った。

「儂みてぇな爺さんが、一人でふらふら歩いてる方が自然だろ」

 立ち上がる。

 刀が揺れる。

「観察もできる」

「しかし――」

「大丈夫だ」

 ガンリュウは軽く手を振った。

「死ぬ時ゃ死ぬ」

 そのまま、ふらりと出て行ってしまう。

「会長!」

 止める声も聞かない。

 部屋に沈黙。

 スミスは頭を押さえた。

「……自由すぎる」

 周囲の幹部が苦笑する。

「でも会長らしい」

「絶対止まらねぇしな」

 スミスはため息を吐いた。

 そして静かに言う。

「影をつけろ」

 三人の男が前へ出る。

 無言竜の戦闘員。

 全員、目つきが鋭い。

「絶対に姿を見せるな」

「は」

「会長に危険が及ぶ前に処理しろ」

「了解」

 男たちは静かに消えた。

     

 一方その頃。

 西六番街。

 橋の下。

 バクトたちは昼寝していた。

「平和だなぁ」

「昨日暴れてた人のセリフじゃない」

 カリナが呆れる。

 ワイザは肉の残りを食べていた。

 ヒャッポは矢を削る。

 その時。

 橋の向こうから、一人の老人が歩いてきた。

 白髪。

 着物。

 刀二本。

 だが妙に自然だった。

 西六番街では珍しい格好なのに、なぜか浮いていない。

 老人は橋の下を見る。

 そして。

 ニヤリと笑った。

「お前らか」

 バクトが目を細める。

「……誰だ爺さん」

 老人は楽しそうだった。

「面白ぇ事するガキどもだなぁ」

 風が吹く。

 橋の下の空気が、少しだけ変わった。



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