第59話 第3軍歓迎会
第3軍からの歓迎会の誘い。
いや。
ほぼ命令だった。
「歓迎会を開く。必ず来い」
女将軍エルミナが笑顔で言った。
断れる空気ではない。
帰り道。
バクト達は並んで歩いていた。
「いくの?」
カリナが聞く。
バクトはにやける。
「いく」
「え?」
「ぶち壊す」
悪い顔だった。
ワイザが笑う。
「・・・いいね」
ヒャッポは無言で頷く。
ポロンだけ意味がわかっていない。
「ぱーてぃー?」
バクトが説明する。
「俺たちに手を出すと、面倒だって思わせる」
「なるほど」
「殺しはしない。いたずらだ」
その足で。
4人は薬屋へ向かった。
5番街。
古びた薬屋。
カランカラン。
扉が鳴る。
店主の老婆が顔を上げた。
「いらっしゃい」
最初に入ったのはバクト。
「最近眠れなくてさ。睡眠薬くれ」
「何日分?」
「7日くらい、いや出来るだけ」
小瓶を受け取る。
次。
カリナ。
別の時間に来る。
「最近、寝不足でぇ」
「若いのに珍しいねぇ」
また購入。
さらにワイザ。
「・・・寝れない」
「あなた眠れそうだけどねぇ」
購入。
最後にヒャッポ。
無言。
店主が困る。
「えっと……眠れないの?」
こくり。
購入。
こうして。
少しずつ睡眠薬を集めた。
倉庫に戻る。
バクトが錠剤を机に並べる。
「よし」
石でゴリゴリ潰す。
白い粉。
カリナが笑う。
「悪い顔してる」
「楽しくなってきた」
半分は粉末。
半分は手間がかかるので、そのまま。
「飲み物には錠剤」
「料理には粉」
「完璧ね」
ポロンが横から見ていた。
「おかし?」
「違う」
歓迎会当日。
第3軍本部。
巨大な石造りの建物。
兵士達。
訓練場。
武器庫。
全部が物々しい。
だが無名は普通に入っていく。
大広間では歓迎会の準備が整っていた。
豪華料理。
酒。
肉。
魚。
大量。
エルミナ将軍が笑う。
「今日は楽しめ!」
「うぃーす」
敬語なし。
兵士達ざわつく。
だが宴会開始。
乾杯。
料理。
酒。
騒ぎ声。
その裏で。
無名が動く。
カリナ。
料理を運ぶフリ。
粉末をサラサラ。
ワイザ。
酒樽を運ぶフリ。
ぽちゃん。
ヒャッポ。
見張り。
誰か来たら咳払い。
バクト。
堂々とスープに錠剤を入れる。
誰も気づかない。
1時間後。
兵士。
「……あれ?」
ふら。
ドサッ。
「おい?」
バタン。
次々倒れる。
副隊長グレイン。
「き、きさまら……」
寝た。
兵士達。
机に突っ伏す。
床で寝る。
椅子から落ちる。
阿鼻叫喚の前に全滅。
最後まで耐えたエルミナ。
酒を飲みながら笑う。
「睡眠薬か……」
「正解」
「馬鹿だな……お前ら……」
そのまま寝た。
静寂。
200人近い兵士。
全員爆睡。
バクト達だけ起きている。
「成功」
カリナが吹き出す。
「効きすぎ!」
その時。
ポロン。
つまみ食い。
「あむ」
数秒後。
ぱたり。
寝た。
「食った!?」
「睡眠薬入り!?」
すやすや。
完全熟睡。
バクトが笑い転げる。
「わはははは!!」
ワイザが兵士達を見る。
「・・・いたずらタイム?」
全員ニヤけた。
翌朝。
第3軍本部。
悲鳴。
「眉毛がぁぁぁ!!」
兵士達。
全員。
眉毛全剃り。
さらに副隊長グレイン。
顔に墨で。
「バカ」
の文字と鼻毛。
訓練場には巨大な旗。
「無名参上」
兵士達発狂。
グレイン絶叫。
そして。
エルミナ将軍だけ。
腹を抱えて笑っていたが。
「将軍も眉毛!とヒゲ!」
「何!?」




