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異世界子供ヤクザ:無名のバクト  作者: 忍絵 奉公


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60/60

第60話 将軍の涙


翌朝。

第3軍本部。

静かだった。

いや。

静かすぎた。

鏡の前。

エルミナ将軍。

ぼーっと自分の顔を見ている。

数秒。

そして。

「…………ぷっ」

吹き出した。

眉毛。

ない。

さらに。

顔には立派な黒ヒゲ。

しかも妙に達筆。

「わははははは!!」

腹を抱えて笑う。

「なんだこれは!!」

「誰だよヒゲ書いたの!!」

ひとしきり笑った。

だが。

ふと冷静になる。

眉を触る。

つるっ。

「……あれ?」

もう一回触る。

つるっ。

「……ない」

沈黙。

「……う」

ぷるぷる震える。

「う……うぅ……」

涙目。

「眉毛ぇぇぇ……」

女だった。

年頃だった。

めちゃくちゃショックだった。

慌てて顔を洗う。

ごしごし。

ごしごし。

だが。

ヒゲが落ちない。

「なんで!?」

油性だった。

無名。

最低である。

さらに頑張って洗う。

少し薄くなった。

だが完全には消えない。

鏡を見る。

眉毛なし。

薄いヒゲ。

間抜けだった。

「うぅぅぅ……」

泣きながら眉毛を書く。

しかし。

ヒゲのせいで締まらない。

どう頑張っても面白い顔になる。

コンコン。

「将軍。会議の時間です」

「……入れ」

側近達が入って来る。

そして。

地獄だった。

全員。

眉毛がない。

さらに。

顔に落書き。

鼻毛。

涙。

鼻水。

よだれ。

片方だけ変なほっぺ。

頭に「肉」。

額に「中」。

一人は耳が真っ黒に塗られていた。

しかも。

誰も笑えない。

いや。

笑いたい。

でも笑ったら自分も終わる。

全員肩を震わせていた。

ぷるぷる。

ぷるぷる。

エルミナが真顔で言う。

「……笑ったやつ、減給な」

全員必死に耐える。

だが。

副官の一人が。

エルミナのヒゲを見た。

ぶふっ。

終わった。

連鎖した。

「ぶっ……!」

「くくっ……!」

「ひっ……!」

ついに。

「わほほははは!!」

大爆笑。

地獄だった。

笑いすぎて椅子から落ちる者。

机叩く者。

涙流す者。

エルミナも耐えきれなかった。

「ははははは!!」

「お前らその顔で笑うな!!」

笑い地獄。

数分後。

ようやく落ち着く。

エルミナが真顔に戻る。

「……結論を言う」

全員姿勢を正す。

「無名には手を出すな」

即答だった。

副隊長グレインが青ざめる。

「し、しかし将軍!あの連中は危険――」

「危険だからだ」

静かだった。

「敵に回した時の損害と、得られる利益が釣り合わん」

誰も反論できない。

200人眠らされた。

誰も気づかなかった。

しかも。

死者ゼロ。

なのにこの被害。

精神ダメージが酷すぎた。

エルミナは深くため息を吐く。

「調子に乗った」

「完全に舐めていた」

そして小さく笑う。

「……あいつら、本当に手に負えん」

その頃。

無名倉庫。

バクト達は普通に朝飯だった。

カリナがパンを食べる。

「今頃どうなってるかな?」

バクトがにやける。

「泣いてるかもな」

ヒャッポは無言で矢を削る。

ワイザは木盾を磨いていた。

ポロンは。

クレヨンで自分の顔にヒゲを書いていた。

「しょーぐん!」

全員吹き出した。


※無名のバクト:完結

 続きは、異世界少年ヤクザ:ダラムルバクトにて、毎日更新中。検索してね。

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