第58話 軍と無名
数日後だった。
朝。
倉庫の前に、また軍服姿の男達が現れた。
今度は10人。
しかも全員武装している。
槍。
剣。
革鎧。
中央には赤いマントの男。
階級が上らしい。
その姿を見て、通りの住民たちが距離を取った。
「軍だ……」
「無名のところに?」
「やばくねぇか?」
倉庫の扉が開く。
眠そうなバクト。
髪ぼさぼさ。
「……朝っぱらからなんだよ」
赤マントが前に出る。
「王国第三軍団副隊長グレインだ」
「へぇ」
「貴様ら無名に通達する」
バクトがあくびする。
「聞いてねぇ」
ぴくり。
副隊長の額に青筋。
「創造系ギフト保持者ポロンの保護及び管理を王国が――」
バタン。
扉が閉まった。
沈黙。
兵士達が固まる。
中から声。
「帰れー」
周囲の住民が吹き出した。
副隊長の顔が真っ赤になる。
「き、貴様ぁ!!」
扉が再び開く。
今度はカリナ。
「朝ごはん中なのよ!」
「王国軍だぞ!!」
「だから?」
完全に舐めていた。
兵士達がざわつく。
「不敬だ……」
「終わったなこいつら」
副隊長グレインは怒鳴った。
「子供だからと見逃していたが限界だ!創造系ギフトは国家管理対象!拒否権はない!」
その瞬間。
ギィ。
また扉が開く。
ワイザ。
巨大木盾装備。
副隊長を見る。
「・・・また来た」
ヒャッポも屋根にいた。
すでに弓を構えている。
副隊長も剣に手をかけた。
空気が張り詰める。
周囲の住民たちが逃げ始める。
「まずいぞ!」
「喧嘩になる!」
バクトは面倒くさそうに頭を掻く。
「だから帰れって」
「命令だ!」
「知らねぇよ」
副隊長が剣を抜いた。
シャリン!!
同時。
ヒャッポの矢。
副隊長の剣の鍔に直撃。
ガギィン!!
剣が弾かれる。
「なっ!?」
周囲騒然。
「速ぇ!!」
「見えなかったぞ!」
兵士達が一斉に武器を構える。
ワイザが盾を持って前進。
ズシン。
ズシン。
副隊長が怒鳴る。
「制圧しろ!!」
兵士達が突撃。
その瞬間。
ワイザの盾が吹き飛んだ。
ドゴォッ!!
兵士3人まとめて転がる。
さらにヒャッポ。
矢。
矢。
矢。
全て鎧の隙間。
武器を弾く。
膝を射抜く。
誰も致命傷ではない。
だが強い。
圧倒的だった。
カリナは背後に回り込んでいた。
「遅いわよ」
兵士の兜を後ろから引っ張る。
ゴン!
別の兵士の頭にぶつける。
二人まとめて昏倒。
副隊長グレインがバクトに斬りかかる。
「貴様ぁ!!」
バクト。
直した竹光を抜く。
シュッ!!
居合。
副隊長の軍帽が真っ二つになった。
髪がはらりと落ちる。
首寸前。
完全停止。
静寂。
副隊長の顔から汗が流れる。
「……殺す気か?」
「いや?」
バクトは笑う。
「帽子だけだ」
周囲がどよめいた。
「今の見えたか?」
「軍の副隊長だぞ!?」
「無名やべぇ……」
すると。
さらに遠くから馬の音。
ドドドドド!!
新たな軍勢。
20騎。
しかも中央には豪華な馬車。
住民達がざわめく。
「貴族か!?」
「なんだあれ!?」
馬車の扉が開く。
中から出てきたのは。
金髪の女。
軍服。
マント。
まだ若い。
しかし空気が違う。
全兵士が敬礼した。
「しょ、将軍!!」
第三軍団長。
エルミナ・ローゼンだった。
彼女は現場を見る。
倒れた兵士。
割れた軍帽。
木盾を持つワイザ。
屋根のヒャッポ。
そして。
竹光を持ったバクト。
数秒沈黙。
やがて。
エルミナが吹き出した。
「くくっ」
兵士達が固まる。
「副隊長。子供相手に何をやっている」
「し、しかし!」
「黙れ」
副隊長が青ざめる。
エルミナは興味深そうにバクトを見る。
「お前が無名の頭か?」
「頭じゃねぇよ」
「名前は?」
「バクト」
「そうか」
エルミナは笑った。
「気に入った」
全員。
「は?」




