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異世界子供ヤクザ:無名のバクト  作者: 忍絵 奉公


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57/60

57話 スカウト


 王都では、ヒャッポの弓術大会優勝が、静かに話題になっていた。

 無名。

 あの得体の知れない子供集団。

 しかも優勝したヒャッポは、表彰式でも一言もしゃべらなかった。

 壇上で無表情のまま、トロフィーと金貨5枚を受け取る。

 観客はざわついた。

「あいつ本当に子供か?」

「兵士より強くねぇか?」

「目が怖ぇ……」

 しかし本人はまったく興味がない。

 帰宅後。

 ヒャッポはトロフィーを倉庫の隅に放り投げ、いつも通り矢を削っていた。

 一方ポロンは、金貨5枚を見て目を輝かせていた。

「きらきらー!」

 ぽふん。

 手の中に、金貨そっくりのものが現れる。

「お?」

 バクトが拾う。

 軽い。

 そして柔らかい。

「なんだこれ?」

 噛む。

 ぐにゃ。

「まずっ」

 カリナが吹き出す。

「なによそれ!」

 ワイザも持つ。

「・・・軽い」

 ヒャッポは矢を削りながら横目で見る。

 ポロンはむきになった。

「きんかー!」

 ぽふん!ぽふん!ぽふん!

 次々と金貨っぽいものを創造する。

 だが全部軽い。

 金属じゃない。

 金色の謎物質。

「惜しいなぁ」

「・・・偽物」

「お前それ作れたら世界征服できるぞ」

 しかしポロンは諦めない。

 両手を前に出して集中する。

「うぬぬぬぬ」

 ぽふん!

 ぽふん!

 ぽふん!

 大量発生。

 倉庫の床に金貨風の何かが転がり始める。

 最終的に、ポロンの周囲が金色で埋まった。

「わぁー」

 満足そうに笑う。

 そして。

 ぱたり。

 前に倒れて寝た。

「あ」

「魔力切れね」

 カリナが抱き上げる。

 すると。

 コンコン。

 扉を叩く音。

 バクトが開ける。

 そこにいたのは、軍服姿の男達だった。

 胸に王国軍の紋章。

 3人。

「無名の方々ですね?」

「・・・誰だ?」

「王国西方第三軍団所属、勧誘部隊です」

 うさんくせぇ。

 全員そう思った。

 男は笑顔を作る。

「弓術大会を見ましてね。ぜひヒャッポ君を軍に――」

「断る・・」

 即答。

 早い。

 ヒャッポ本人だった。

 矢を削りながら答えている。

 男が苦笑する。

「いやいや、条件は悪くありません。食事。住居。給金。さらに正式な兵として――」

「・・断る・・」

「まだ最後まで――」

「・・断る・・」

 兵士達が困る。

 バクトが笑う。

「こいつ、喋るの珍しいぞ。3回も断ってる。帰った方がいい」

 だが兵士達は食い下がる。

「ではそちらの小さい子は?」

 全員の空気が変わった。

 静かになる。

 ポロンはカリナの腕の中ですやすや寝ている。

 兵士が続ける。

「創造系ギフトですよね?国家管理対象になりうる貴重な――」

「帰れ」

 今度はバクトだった。

 笑ってない。

 兵士達も空気を察する。

 だが中央の男だけは強気だった。

「国家への協力は義務です。拒否権は――」

 ドゴッ!!

 突然。

 巨大な木盾が男の顔面にめり込んだ。

 ワイザだった。

 そのまま盾で押し込み、兵士ごと外へ押し出す。

 扉を出て転げる兵士。

「ぎゃああ!」

 残る二人が青ざめる。

 ヒャッポ。

 いつの間にか矢を番えていた。

 矢先が喉元を狙っている。

「・・・帰れ」

 兵士二人は、倒れた上官を抱えて逃げた。

 バクトがため息を吐く。

「めんどくせぇことになってきたな」

 カリナが寝ているポロンを見る。

「ポロン、狙われるかもね」

 ワイザは盾を撫でていた。

「・・・いい音した」

 ヒャッポは静かに新しい矢を削る。

 その頃。

 第三軍団本部。

 顔を腫らした兵士が報告していた。

「危険です……無名……」

 将軍は報告書を見る。

 ヒャッポ。

 弓術大会優勝。

 ワイザ。

 怪力。

 バクト。

 正体不明。

 そして。

 ポロン。

 創造系。

 将軍は笑った。

「面白いガキ共じゃねぇか」

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