↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界子供ヤクザ:無名のバクト  作者: 忍絵 奉公


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/60

第55話 ヒャッポと百歩の矢


 王都イデオ。

 年に一度の大イベント。

 王都弓術大会。

 各街道には旗が並び、露店がずらりと並ぶ。

 焼き串。

 果物飴。

 酒。

 玩具。

 街全体が祭りだった。

 そして中央広場には巨大な的場。

 そこへ無名の四人とポロンが来ていた。

「すっげぇ人!」

 カリナが目を輝かせる。

 ワイザは串肉を両手に持っていた。

「うまい」

 ポロンも真似して串を持っている。

「うまー!」

 バクトは大会の看板を見上げた。

『王都弓術大会』

『優勝賞金 金貨5枚』

「五枚!?」

 カリナが叫ぶ。

「ヒャッポ! 出ろ!」

 ヒャッポは無言。

 しかし。

 視線だけで的を見ていた。

 真剣。

 バクトがニヤリ。

「いけるだろ?」

「……」

 少しだけうなずく。

 受付へ向かう。

 係員はヒャッポの顔を見た瞬間、ビクッとした。

「ひっ」

「出場したい」

 バクトが代わりに言う。

「は、はいぃ!」

 名前を書く。

『ヒャッポ』

 受付係は二度見した。

「本名ですか?」

「ヒャッポ」

「……はい」

 その頃。

 観客席。

「今年は誰が勝つかな」

「軍の射手団じゃね?」

「東区の名手も来てるらしいぞ」

 ざわざわしていた。

 やがて大会開始。

 最初は近距離。

 三十歩。

 次々と射手が矢を放つ。

 パンッ。

 パンッ。

 的の中心へ刺さる。

 歓声。

「おお!」

「やるな!」

 ヒャッポの番。

 静かに前へ出る。

 ざわつく観客。

「あいつ子供じゃね?」

「顔怖っ」

「殺し屋か?」

 ヒャッポは何も気にしない。

 弓を持つ。

 風を見る。

 旗を見る。

 地面の砂を見る。

 矢をつがえた。

 静寂。

 そして。

 シュッ。

 矢が消えた。

 次の瞬間。

 ド真ん中。

 しかも。

 前の矢に突き刺さって割った。

「えぇぇぇ!?」

 観客が総立ちになる。

 バクトが笑う。

「うははは!」

 カリナが飛び跳ねた。

「すごぉぉぉ!!」

 ワイザは串を食べながら拍手。

「うまい」

「肉の感想じゃねぇ!」

 予選通過。

 次は五十歩。

 さらに七十歩。

 百歩。

 どんどん距離が伸びていく。

 だが。

 ヒャッポは外さない。

 風向き。

 弓のしなり。

 矢羽の重さ。

 全て計算していた。

 百歩先。

 普通なら見えにくい距離。

 しかし。

 ヒャッポは目を細める。

 スゥ――。

 静かに息を吐いた。

 放つ。

 シュン!!

 矢が一直線に飛ぶ。

 そして。

 カン。

 的の中心に刺さっていた細い針。

 その穴を貫通した。

 一瞬。

 会場が静まり返る。

 そして。

「うおおおおおおお!!」

 大歓声。

 実況役の男が絶叫する。

「百歩で針穴を通したぁぁぁ!!」

「化け物だ!!」

「なんだあいつ!?」

「すげぇ!!」

 ヒャッポは無表情。

 だが。

 少しだけ鼻が高くなっていた。

 決勝。

 相手は王都射手団のエース。

 大人。

 しかも軍属。

 会場の空気が変わる。

「さすがに子供じゃ無理だろ」

「相手は軍だぞ」

 だが。

 結果は。

 ヒャッポの圧勝だった。

 最後の一射。

 相手の矢を弾き飛ばし、そのまま中心へ突き刺した。

 完全勝利。

 審判が叫ぶ。

「一般の部、優勝!! ヒャッポ!!」

 歓声。

 拍手。

 口笛。

 ヒャッポは静かに前へ出る。

 渡されたのは。

 銀色のトロフィー。

 そして金貨五枚。

 ずっしり。

 バクトたちは大騒ぎだった。

「すげぇぇぇ!!」

「ヒャッポ優勝!!」

「肉いっぱい食える!」

「ヒャッポすごーい!」

 ポロンがぴょんぴょん跳ねる。

 ヒャッポは照れくさそうに顔をそむけた。

 だが。

 トロフィーはしっかり抱えていた。

 帰り道。

 バクトが言う。

「今日は宴会だな!」

 カリナが叫ぶ。

「高い肉買おう!!」

 ワイザもうなずく。

「肉」

 ヒャッポは少し考えて。

「……矢の材料・・ほしい」

「買おうぜ!」

 こうして。

 無名の倉庫では。

 夜遅くまで祝勝会が続いた。

 ポロンはトロフィーを頭に被って遊び。

 カリナは酔っ払い。

 ワイザは肉を焼き続け。

 ヒャッポは少しだけ笑っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。