第54話 痛快新聞と高級菓子
朝。
七番街。
雑貨屋二階の事務所。
ダモンは椅子に座りながら、足に巻かれた包帯を見ていた。
ようやく骨がくっついた。
まだ少し痛む。
「ちくしょう……」
新聞を広げる。
そこには大きく。
『光界誘拐事件!! 無名が少女救出!!』
さらに写真。
全裸。
花。
のぼり。
そしてバクトが笑っている。
ダモンはしばらく黙って見ていたが。
「……あいつら、やべぇな」
取り巻きも真顔だった。
「はい……」
「光界に乗り込むとか普通じゃないっす」
「しかも勝ってる……」
ダモンは頭をかいた。
「しばらく無名には触んな」
「え?」
「落書きも嫌がらせも禁止だ」
「……はい」
ダモンは新聞を畳んだ。
「階段の件、まだ根に持ってるからな俺」
一同うなずく。
あれは本当に痛かった。
一方。
東一番街、光界総本部。
ガンダム総帥は新聞を握り潰していた。
「なんなんだこいつらはぁぁぁ!!」
机を叩く。
幹部たちは縮こまっていた。
「総帥……」
「しばらく刺激しない方が……」
「わかっとる!!」
怒鳴る。
「いちいち誘拐するたびに身代金請求されたら、たまらん!!」
幹部たちが静かにうなずく。
「今後、無名には手を出すな!!」
「はっ!!」
完全に嫌な相手認定だった。
一方その頃。
五番街。
無名の倉庫。
バクトは新聞を読んでいた。
『光界!最悪!』
のぼりの写真付き。
「ぶはははははは!!」
腹を抱えて転げ回る。
「ワイザ! 見ろこれ!」
「ヒャッポ、顔怖ぇ!」
「……」
ヒャッポ本人は無反応だった。
カリナは写真を見て爆笑している。
「やだこれ! この全裸の角度すごい!」
ポロンは新聞を逆さに持っていた。
「ひかりかい! さいあく!」
「覚えなくていいって!」
その時。
コンコン。
扉が叩かれた。
「ん?」
開けると。
センネールとミユが立っていた。
さらに高級感ある箱を持っている。
「あ!」
バクトが笑顔になる。
「ミユちゃん!」
頭をわしゃわしゃ撫でる。
ミユは嬉しそうに笑った。
「ありがと、おにいちゃん!」
「元気そうだな!」
センネールが深々と頭を下げる。
「先日は本当にありがとうございました」
「気にすんな」
バクトはそう言うと。
突然、異空間収納に手を突っ込んだ。
そして。
ドサッ。
重い袋を机に置く。
「ほれ」
「……?」
センネールが開ける。
金貨。
ぎっしり。
「!?」
目を見開く。
「き、金貨五百枚!?」
「落とし前とってきた」
「多すぎます!!」
センネールは慌てた。
「受け取れません!!」
「なんで?」
「報復されたら困ります!!」
「あー」
バクトは腕を組んだ。
「じゃあ百枚受け取れ」
「え?」
「四百枚は俺たちの取り分だ」
「それでも多い!」
バクトは真顔になる。
「娘誘拐されたんだろ」
「……」
「夜も眠れなかっただろ」
「……はい」
「心労あっただろ」
「……」
「だから慰謝料」
袋をぐいっと押し付ける。
「受け取れ」
センネールは困った顔をした。
だが。
ミユが袋を見て。
「おとうさん、おうちなおせる?」
小さく聞いた。
センネールは固まった。
そして。
静かに頭を下げた。
「……ありがとうございます」
「おう!」
帰り際。
センネールは振り返った。
「何か困った事があれば言ってください」
「ん?」
「この金貨が役立つ事があるなら、惜しみなく使わせていただきます」
深く礼をして帰っていった。
扉が閉まる。
カリナはさっそく手土産を開けた。
「わぁ!」
箱の中には、美しい菓子。
ふわふわのマフィン。
白いクリーム。
ムース。
中には果物。
「うまそー!!」
一口。
「!!」
目を見開く。
「なにこれ!? 美味しい!!」
ワイザも食べる。
「ふわふわ」
ポロンも食べる。
「おいしー!」
ヒャッポも無言で食べた。
そして。
親指を立てた。
かなり気に入ったらしい。
バクトも一口食べる。
「……うっま」
全員、しばらく無言で食べ続けた。
高級菓子の力は偉大だった。




