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異世界子供ヤクザ:無名のバクト  作者: 忍絵 奉公


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50/60

第50話 人質の入れ替わり


 無名の存在に気づかれている。

 そう判断したヒャッポは、橋から離れた瞬間、建物の壁をよじ登った。

 屋根。

 高所。

 そこから5番街の大通りを見下ろす。

 人の流れ。

 商人。

 馬車。

 子供。

 その中に――いた。

「……」

 ヒャッポの目が細くなる。

 娘と手をつないで歩く男。

 だが、妙だった。

 距離感。

 歩幅。

 顔。

 娘を見る目。

 気持ち悪い。

 さらに周囲を見る。

 いた。

 二人。

 三人。

 全部で五人。

 全員、不自然に娘の周囲を囲んでいる。

 ヒャッポは弓を構えた。

 狙撃。

 簡単。

 頭は取れる。

 だが――。

(一人射っても)

(残り四人の動きが読めない)

 娘を刺される可能性。

 高い。

 ヒャッポは静かに弓を下ろした。

 待つ。

 皆を。

 その時。

 遠くからセンネールが走ってくる。

「ミユゥゥ!!」

 涙目。

 必死。

 賊の三人が身構えた。

「来たぞ」

「金持ってるか?」

「待て……」

 その時だった。

 遠く。

 カリナが見えた。

 普通に歩いている。

 さらに。

 ワイザ。

 のしのし歩いてくる。

 だが。

 バクトがいない。

「……?」

 賊が周囲を見回す。

 嫌な予感。

 センネールは袋を差し出しながら近づいた。

「金だ!約束通り持ってきた!」

「止まれ!」

 賊が怒鳴る。

 ヒャッポ。

 弓を構えた。

 狙い。

 娘と手をつなぐ男。

 その瞬間。

 ヒュッ!!

 矢が飛ぶ。

 同時に。

 後ろから黒い影。

 バクト。

「おらぁっ!!」

 娘と手をつなぐ男の股間を、思い切り蹴り上げた。

「うごっ!?」

 男が白目を剥いて崩れる。

 その勢いで矢を避ける形になった。

 矢は髪をかすめて飛んでいく。

 バクトが上を見る。

 屋根の上。

 ヒャッポ。

 無言。

 賊を指差す。

「なるほどな!」

 バクト。

 即理解。

 そのまま娘を抱えて後退した。

「確保!」

 しかし。

「うごっ!?」の声で、他の賊が一斉に振り向いた。

「なっ!?」

「無名だ!!」

「クソガキ共!!」

 慌てた賊。

 近くにいたセンネールを掴む。

「うわっ!?」

 首に短剣。

 一瞬で人質。

「近づくな!!」

「殺すぞ!!」

 周囲の通行人が悲鳴を上げる。

 一気に人だかり。

 ざわざわ。

「無名だ……」

「また騒ぎか?」

「今度は誘拐犯?」

 カリナが歩いて近づく。

「その人、お父さんなんだけど?」

「黙れ!」

 ワイザも迫る。

 巨大。

 怖い。

 賊が怯む。

「来るな!!」

 さらに短剣を押し当てた。

 センネール涙目。

「た、助け……」

 バクトは娘を抱えたまま、ニヤリと笑った。

「面白ぇな」

「人質交換したつもりか?」

「あ?」

「そっちの人質、もう役に立ってねぇぞ」

 賊たちの顔色が変わる。

 確かに。

 娘は奪い返された。

 もう交渉材料がない。

「……っ!」

 焦り。

 その瞬間。

 ヒャッポの二本目の矢が放たれた。



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