第48話 偽金貨作戦
夕方、無名倉庫の扉が激しく叩かれた。
「相談事か?」
バクトが扉を開けると、そこには顔面蒼白の男が立っていた。服は乱れ、目は真っ赤。今にも倒れそうだ。
「む、娘が……!」
男はその場に膝をついた。
「おいおい、大丈夫かよ」
カリナが慌てて椅子を持ってくる。ワイザは水を差し出した。ヒャッポは無言で後ろに立っている。怖い。
「落ち着け。何があった?」
バクトが聞くと、男は震える手で一枚の紙を差し出した。
そこには乱暴な字でこう書かれていた。
『娘がかわいいか? 無事に返してほしければ、金貨100枚と交換だ。交換場所は3日後正午、4番街の大村橋の上だ。こなければ、娘を殺して、辱めて、いたずらして、全裸でさらす』
カリナの顔が険しくなる。
「最低……」
ワイザも静かに怒った。
「ぶっころ……」
ヒャッポは矢を削る手を止めていた。
ポロンは内容はわからないが、悪いことが書いてあるのは理解したらしく、バクトの服をぎゅっと掴む。
バクトは手紙を見つめながら、首を傾げた。
「……橋の上?」
「え?」
男が顔を上げる。
「逃げ場なくねぇか?」
「……あ」
「普通、こういうのって路地とか廃屋だろ。橋の上なんて囲まれたら終わりだ」
バクトは机に指で簡単な地図を書く。
「つまり、別に逃げ道がある」
カリナがハッとした。
「橋の下か!」
「下?」
男が目を丸くする。
「橋の上で金を受け取るフリして、橋の下に落とさせるのよ。そこに小舟でも待機してるんじゃない?」
「なるほどな」
バクトはニヤリと笑った。
「じゃあ簡単だ」
「え?」
「橋の左右。橋の下。小舟。全部張る」
男は呆然としている。
「おっさんは予定通り、橋の上に行け。犯人に金を渡すフリをしろ」
「し、しかし……金貨100枚なんて……!」
男は頭を抱えた。
「そんな大金、用意できません……!」
「ポロン」
「はい!」
バクトは金貨を一枚取り出して、ポロンに渡した。
「これっぽい金色のシール作れるか?」
「やってみる!」
ポロンの手が淡く光る。
「創」
ポワッと光が広がり、丸い金色のシールが現れた。
「おぉ!」
カリナが目を輝かせる。
「すご!」
バクトは銅貨を一枚取り出し、そこにシールを貼った。
すると、ぱっと見では完全に金貨だった。
「おぉぉ……!」
相談者が感動する。
「持てば軽さでバレる。でもパッと見なら誤魔化せる」
バクトはニヤリと笑った。
「銅貨100枚ならあるだろ?」
「……あります」
「よし。偽金貨100枚作戦だ」
「名前ダサ」
カリナが即ツッコミを入れる。
「うるせぇ」
ポロンは完全に楽しくなっていた。
「もっと作る!」
ポワポワと次々に金色シールが生まれていく。
バクトはそれを銅貨に貼り続けた。
机の上には、見るからに大金の山ができていく。
相談者の男は涙ぐんでいた。
「ありがとうございます……!」
「まだ礼は早ぇよ」
バクトは銅貨金貨を袋に詰めながら言った。
「娘を助けてからだ」
ワイザは大楯を持ち上げる。
「準備できた」
カリナは短剣をクルクル回した。
「誘拐犯なんて、全裸確定ね」
ヒャッポは無言で矢筒を確認する。
その時だった。
バクトだけ、まだ何か引っかかっていた。
(橋の上……)
(妙に堂々としてる)
(なんか変だな)
その夜。
バクトは一人で、大村橋の下見に向かった。




