第39話 カオス
新聞。
一面。
また血。
『三番街にて斬殺六名』
『宗教組織光界、二番街進出』
『無言竜内戦激化』
『床屋焼殺事件続報』
もう。
毎日これだった。
五番街。
倉庫。
朝。
バクトは床に寝転がりながら新聞を読んでいた。
「また殺してる」
ボソッ。
紙をめくる。
「今日は火か」
感想が軽い。
慣れてきていた。
カリナが隣へ座る。
「ねぇ」
「バクッチ」
「何もしないの?」
「あぁ?」
新聞から目を離さない。
「だって街めちゃくちゃじゃん」
外では。
悲鳴。
怒号。
時々爆発音。
もう日常になっていた。
だが。
バクトは新聞を閉じる。
「……子供のいたずらで」
「手に負えないだろ」
珍しく真面目だった。
今の争いは。
人が死にすぎる。
いつもの延長じゃない。
その空気を。
バクトは理解していた。
一方。
ワイザ。
「ほらポロン」
「こうやって垂らすんだ」
机。
蝋。
糸。
ポロン。
真剣。
「んー!」
小さな手。
不器用。
でも楽しそう。
そして。
「おぉ!」
ワイザ感動。
「出来た!」
ポロン。
胸を張る。
蝋燭。
しかし。
形がおかしい。
「……これなんだ?」
カリナ。
見る。
頭。
変な髪。
しかも妙に悪い顔。
バクトだった。
「アニキ型蝋燭!」
ポロン。
ドヤ顔。
頭から紐。
ちょこん。
出てる。
カリナ爆笑。
「なにこれ!」
「似てる!!」
ワイザも笑う。
「お前ほんとバクト好きだな」
ポロン。
満面笑顔。
「アニキ大好き!」
バクト。
「……なんか複雑だな」
だが少し嬉しそう。
ヒャッポ。
無言。
端っこ。
矢を削る。
シャッ。
シャッ。
静か。
怖い。
だが。
落ち着く音だった。
その頃。
二番街。
さらに悪化。
「神は救う!」
光界。
布教。
炊き出し。
孤児保護。
薬配布。
一気に支持を広げていた。
そして。
チェリーパイ。
ブチ切れ。
「光界の信者を潰せ!」
報復開始。
布教所襲撃。
信者拉致。
火付け。
光界も反撃。
魔法。
暗殺。
洗脳。
もう。
何でもあり。
王都。
カオス。
誰が敵で。
誰が味方か。
もうわからない。
大義名分?
そんなもの。
どこにもなかった。
ただ。
縄張り。
金。
面子。
復讐。
感情。
それだけで。
人が死んでいく。
夕方。
倉庫の外。
子供たちの笑い声。
ポロン。
バクト型蝋燭を持って走る。
「アニキー!」
「火つけてー!」
「やめろ燃える!」
カリナ笑う。
ワイザ笑う。
ヒャッポだけ少し口元が緩んでいた。
その小さな平和だけが。
今の王都では。
異常だった。




