第38話 神の金
王都。
燃えていた。
だが。
誰も止めない。
なぜなら。
この街には。
治安部隊が存在しないからだ。
治安維持。
縄張り管理。
揉め事処理。
全部。
街の守役。
つまりヤクザの仕事だった。
だから。
貴族へ被害が及ばない限り。
王も。
禁軍も。
動かない。
それが王都イデオのルールだった。
一方。
チェリーパイ。
弱っていた。
先日の。
尻から花。
あれが痛かった。
笑い者。
威厳崩壊。
しかも今。
無言竜内戦。
下手に動けば巻き込まれる。
結果。
静観。
守り。
耐え。
そういう方針になっていた。
だが。
その“弱り”を。
見逃さない勢力がいた。
東区一番街。
宗教組織。
光界。
神光るゲンジを崇拝する一本列島に広がる組織。
総帥ガンダム率いる巨大宗教。
白い法衣。
金の刺繍。
杖。
信者。
歌。
異様な集団。
そして。
二番街。
チェリーパイ縄張り。
大通り。
堂々と。
布教開始。
「神は宇宙を見ている!」
男が叫ぶ。
信者たち。
「おおー!」
「神はあなたの行いを見ている!」
「あなたが支払う金!」
「それが正しいかを見ている!」
人が集まる。
買い物帰り。
商人。
子供。
野次馬。
皆。
話を聞いていた。
「正しくない金は!」
「不幸を買うのと同じだ!!」
ザワッ。
空気が変わる。
皆。
理解した。
遠回し。
だが。
完全に。
チェリーパイ批判だった。
「チェリーパイに払う金は穢れている」
そう言っているのと同じ。
「……おいおい」
低い声。
人混みが割れる。
ラクラ。
チェリーパイ。
東二区幹部。
細目。
派手なスーツ。
後ろに若衆。
イライラしていた。
「お前ら」
「どこでお話してるんだ?」
ニヤつく。
だが目が笑っていない。
布教男。
無視。
さらに声を張る。
「神は見ている!」
「不浄なる金!」
「不正なる暴力!」
ピクッ。
ラクラのこめかみ。
「おい」
「聞こえてねぇのか?」
近づく。
布教男。
なお無視。
「やめろ!」
「やめろって言ってんだろ!」
ラクラ。
肩を掴もうとする。
その瞬間。
布教男。
スッ。
懐。
杖。
「……は?」
ボォッ!!
火。
一瞬。
火魔法。
直撃。
「ぎゃああああ!!」
ラクラ。
燃える。
全身。
炎。
通行人絶叫。
「うわぁ!!」
「魔法!?」
「やべぇ!!」
ラクラ転げ回る。
「てめぇ!!」
「こんなマネし――」
最後まで言えなかった。
燃え尽きた。
黒い塊。
煙。
臭い。
静寂。
布教男。
平然。
杖を戻す。
「神は見ている」
それだけ言った。
チェリーパイ若衆。
固まる。
誰も動けない。
相手は宗教。
しかも。
魔法使い。
そして。
周囲の野次馬。
恐怖しながらも。
少しだけ。
思ってしまった。
「……チェリーパイ、弱ってる?」
その空気。
それが。
一番危険だった。




