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異世界子供ヤクザ:無名のバクト  作者: 忍絵 奉公


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35/46

第35話 葬式


 王都。

 空気が変わった。

 無言竜。

 会長。

 ガンリュウ死去。

 その知らせは。

 表も裏も。

 一瞬で駆け巡った。

     ◇

 二番街。

 無言竜本部。

 今日は黒一色だった。

 巨大な屋敷。

 門の外まで人。

 着物。

 喪服。

 護衛。

 馬車。

 高級車輪馬車。

 王都中の“大物”が集まっていた。

     

「東区チェリーパイ」

「会長代理ウォーレント様、ご到着」

 ザワつく周囲。

 赤いスーツ。

 派手。

 だが。

 今日は静かだった。

 ウォーレントは焼香し。

 静かに手を合わせる。

「……あんた嫌いじゃなかったぜ」

 低く呟く。


「光界」

「総帥ガンダム様、ご到着」

 白い法衣。

 金刺繍。

 巨大な十字架。

 宗教組織。

 東一番街を縄張りに持つ巨大勢力。

 総帥ガンダム。

 異様な威圧感。

 だが。

 意外にも丁寧に頭を下げた。

「古き友へ祈りを」

     

 さらに。

「アルマンドラ侯爵様、ご到着」

 貴族。

 金髪。

 豪華な装飾。

 周囲の空気が変わる。

 王族関係者まで来ていた。

 しかも。

「ソルトロック辺境伯様、ご到着!」

 どよめき。

 急遽駆けつけた。

 軍事貴族。

 歴戦。

 傷だらけの顔。

「……間に合ったか」

 低い声。


 さらに。

「商業連合会長」

「ウォルマート会長様、ご到着」

 財界。

 超大物。

 太った老人。

 指輪だらけ。

「惜しい男を失った」

 杖をつきながら進む。


 まさに。

 王都オールスター。

 裏社会。

 宗教。

 貴族。

 軍。

 財界。

 全部。

 ガンリュウの葬式へ来ていた。

 それだけ。

 この男の影響力は大きかった。


 一方。

 ガボルド。

 喪主席。

 目が赤い。

 泣いていた。

 隠そうともしていない。

 強い男。

 だが。

 今日は完全に沈んでいた。

「……お頭」

 小さく呟く。

 その背中を。

 陰で見る幹部たち。

「……泣いてるぞ」

「そりゃ泣くだろ」

「問題はその後だ」

 ヒソヒソ。

「ガボルドで無言竜回るのか?」

「腕っぷしは強ぇ」

「だが経営はなぁ」

「頭脳派じゃねぇ」

「組潰れるぞ」

 陰口。

 不安。

 派閥。

 既に始まっていた。

 ガンリュウという巨大な蓋が消え。

 中の不満が漏れ始めている。


 その頃。

 入口。

「……なんだこれ」

 バクト。

 呆然。

 カリナも固まる。

「人多すぎ……」

 ワイザは緊張していた。

 ヒャッポだけ通常運転。

 怖い。

 ポロンは喪服姿。

「じーじ?」

 無邪気。

 その時。

 周囲がザワつく。

「あれ……」

「無名……?」

「花の……」

「ガンリュウお気に入りのガキ共」

 一斉に視線。

 超大物たちの視線まで飛ぶ。

 だが。

 バクトはそんな事どうでもよかった。

 棺を見る。

 ガンリュウ。

 眠っていた。

 笑っていた。

 まるで宴会の途中みたいな顔。

「……ほんとに死んだのか」

 バクトが呟く。

 返事はない。

 ポロンがトコトコ歩く。

 棺の横。

 持っていた花を置く。

「じーじ、おはな」

 静まり返る会場。

 そして。

 ガボルドが。

 とうとう堪えきれず。

 顔を覆って泣いた。


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