第35話 葬式
王都。
空気が変わった。
無言竜。
会長。
ガンリュウ死去。
その知らせは。
表も裏も。
一瞬で駆け巡った。
◇
二番街。
無言竜本部。
今日は黒一色だった。
巨大な屋敷。
門の外まで人。
着物。
喪服。
護衛。
馬車。
高級車輪馬車。
王都中の“大物”が集まっていた。
「東区チェリーパイ」
「会長代理ウォーレント様、ご到着」
ザワつく周囲。
赤いスーツ。
派手。
だが。
今日は静かだった。
ウォーレントは焼香し。
静かに手を合わせる。
「……あんた嫌いじゃなかったぜ」
低く呟く。
「光界」
「総帥ガンダム様、ご到着」
白い法衣。
金刺繍。
巨大な十字架。
宗教組織。
東一番街を縄張りに持つ巨大勢力。
総帥ガンダム。
異様な威圧感。
だが。
意外にも丁寧に頭を下げた。
「古き友へ祈りを」
さらに。
「アルマンドラ侯爵様、ご到着」
貴族。
金髪。
豪華な装飾。
周囲の空気が変わる。
王族関係者まで来ていた。
しかも。
「ソルトロック辺境伯様、ご到着!」
どよめき。
急遽駆けつけた。
軍事貴族。
歴戦。
傷だらけの顔。
「……間に合ったか」
低い声。
さらに。
「商業連合会長」
「ウォルマート会長様、ご到着」
財界。
超大物。
太った老人。
指輪だらけ。
「惜しい男を失った」
杖をつきながら進む。
まさに。
王都オールスター。
裏社会。
宗教。
貴族。
軍。
財界。
全部。
ガンリュウの葬式へ来ていた。
それだけ。
この男の影響力は大きかった。
一方。
ガボルド。
喪主席。
目が赤い。
泣いていた。
隠そうともしていない。
強い男。
だが。
今日は完全に沈んでいた。
「……お頭」
小さく呟く。
その背中を。
陰で見る幹部たち。
「……泣いてるぞ」
「そりゃ泣くだろ」
「問題はその後だ」
ヒソヒソ。
「ガボルドで無言竜回るのか?」
「腕っぷしは強ぇ」
「だが経営はなぁ」
「頭脳派じゃねぇ」
「組潰れるぞ」
陰口。
不安。
派閥。
既に始まっていた。
ガンリュウという巨大な蓋が消え。
中の不満が漏れ始めている。
その頃。
入口。
「……なんだこれ」
バクト。
呆然。
カリナも固まる。
「人多すぎ……」
ワイザは緊張していた。
ヒャッポだけ通常運転。
怖い。
ポロンは喪服姿。
「じーじ?」
無邪気。
その時。
周囲がザワつく。
「あれ……」
「無名……?」
「花の……」
「ガンリュウお気に入りのガキ共」
一斉に視線。
超大物たちの視線まで飛ぶ。
だが。
バクトはそんな事どうでもよかった。
棺を見る。
ガンリュウ。
眠っていた。
笑っていた。
まるで宴会の途中みたいな顔。
「……ほんとに死んだのか」
バクトが呟く。
返事はない。
ポロンがトコトコ歩く。
棺の横。
持っていた花を置く。
「じーじ、おはな」
静まり返る会場。
そして。
ガボルドが。
とうとう堪えきれず。
顔を覆って泣いた。




