第34話 笑って死ねるなら
「花が足りん」
バクトが言った。
倒れているチェリーパイ若衆。
二十人近い。
しかも今回は東地区。
派手にやる必要がある。
「まかせろ!」
カリナが走る。
数十分後。
戻ってきた。
両腕いっぱい。
「安い花五十本!」
「花束よ!」
ドサッ。
バクトへ渡す。
ワイザが感心する。
「すげぇ量」
ヒャッポは既に服を剥いでいた。
怖い。
「やめろぉ!」
「うわぁぁ!」
チェリーパイ若衆。
半泣き。
だが。
容赦なし。
財布回収。
服回収。
全部まとめて山。
そして。
「この体勢だ」
バクト指示。
「尻を天に向けろ」
「なんでだよ!?」
「芸術性」
「意味わかんねぇ!!」
無理やり並べられる。
ズラリ。
尻。
二十人。
異様だった。
そして。
花。
スッ。
「ぎゃぁ!!」
「入れんな!!」
「やめろぉぉ!!」
尻へ。
二本。
三本。
次々。
花が咲く。
カリナ。
顔真っ赤。
「やだー!!」
「最悪!!」
なのに笑ってる。
ワイザは腹抱えていた。
「だめだこれ」
ヒャッポだけ真顔。
黙々と花を刺していた。
職人みたいだった。
最後。
服の山。
バクトが火打石を鳴らす。
ボッ。
燃える。
「よし」
「逃げるぞ」
そして。
大声。
「火事だぁぁ!!」
四人が走る。
数分後。
野次馬。
町人。
水桶。
「どこだ火事!?」
やって来る。
そして。
止まる。
「……」
「……は?」
そこには。
刺青だらけの男たち。
尻を突き出し。
そこから。
花。
咲いていた。
「……なんだこれ」
「変態か?」
「祭り?」
「芸術?」
誰も理解できない。
だが。
インパクトだけは凄かった。
翌日。
新聞。
大きく掲載。
絵付き。
『東区守役チェリーパイ 無様な生け花』
『尻から栄養補給の花がかわいそう』
王都中。
大爆笑。
チェリーパイ。
面子崩壊。
二番街。
ガンリュウ邸。
静かな部屋。
ガボルドが新聞を持って入る。
「会長」
「……ん」
ガンリュウ。
かなり弱っていた。
「また無名です」
「ほぉ?」
ガボルドが記事を読む。
「東区守役チェリーパイ無様な生け花――」
「ぶふっ」
ガンリュウ吹く。
「尻から栄養補給の花がかわいそう――」
「ぷくくく……!」
肩が震える。
「だめだ……!」
「笑わせるな……!」
咳き込む。
「会長!」
ガボルドが慌てる。
だが。
ガンリュウは笑っていた。
「……最高だな……あのガキ」
涙を浮かべ。
笑う。
「最後まで……退屈しねぇ人生だった……」
静かだった。
ふっと。
力が抜ける。
笑顔のまま。
眠るように。
止まった。
「……会長?」
返事はない。
ガボルドの顔が固まる。
「……お頭?」
静寂。
風の音だけ。
ガボルドはゆっくり理解した。
無言竜。
会長。
ガンリュウ。
死去。
だがその顔は。
笑っていた。




