第32話 東地区へ
「……というわけで」
バクトが立ち上がる。
「チェリーパイ潰す」
カリナが腕を組む。
「まぁ、ポロン狙ったしね」
ワイザも頷く。
「あれは駄目だ」
ヒャッポは矢を削りながら。
「……子供はだめ」
珍しく口を開いた。
埋められた三人が震える。
「お、おい!」
「出してくれ!」
「反省してる!」
バクトが振り向く。
「まだ早い」
「反省が浅い」
「もっと土と一体化しろ」
「なんだそれ!?」
カリナが笑う。
「ちょっと面白い」
結局。
三人はそのまま放置された。
頭だけ出して。
しかも。
ポロンが起きた。
「あ!」
てちてち歩く。
埋まった男たちを見る。
「おやさい!」
「違う」
バクトが即答する。
夜。
無名会議。
といっても。
木箱を囲んで座ってるだけ。
「どうする?」
カリナが聞く。
バクトは地図を見ていた。
「東地区行く」
「いきなり?」
「あぁ」
指で叩く。
「チェリーパイ本部」
「派手な連中だろ」
「逆に目立つ」
ワイザが聞く。
「殴り込み?」
「違う」
バクトがニヤつく。
「いたずらだ」
その顔を見て。
皆ちょっと嫌な予感がした。
翌日。
東地区。
西とは空気が違う。
派手。
騒がしい。
赤い看板。
酒。
踊り子。
笑い声。
そして。
治安が悪い。
「うわー」
カリナが辺りを見る。
「西よりゴチャゴチャしてる」
「人多い」
ワイザも周囲を警戒。
ヒャッポは完全に浮いていた。
怖すぎる。
通行人が避ける。
そして。
見えてきた。
チェリーパイ。
本部。
派手な建物。
赤提灯。
ドクロマーク。
「趣味悪ぃな」
バクトが呟く。
「で?」
カリナが聞く。
「どうするの?」
バクト。
ニヤリ。
異空間収納から。
袋を出す。
「……なにそれ」
「秘密兵器」
袋が動く。
カサカサ。
ワイザが後退する。
「嫌な予感しかしない」
「正解」
バクトは建物の裏へ回った。
そこには。
換気窓。
「よし」
袋を開く。
中。
大量。
ゴキブリ。
「うわぁ……」
カリナが引いた。
「いけー」
バクト。
投入。
カサカサカサカサ!!
ゴキブリ軍団。
侵入。
数分後。
チェリーパイ本部。
「ぎゃあああ!!」
「なんだこれぇ!?」
「ゴキブリぃぃ!!」
大騒ぎ。
女が椅子へ飛び乗る。
酒瓶割れる。
料理落ちる。
組員が暴れる。
「踏めぇ!!」
「無理だ!!」
地獄絵図。
その中心。
キャンドル。
「……」
額に青筋。
肩へ。
ゴキブリ。
「……誰だ」
低い声。
「誰がやった」
その時。
窓の外。
ニヤニヤしてるバクト。
目が合った。
「……」
「……」
キャンドル。
立ち上がる。
「……あのクソガキかぁぁぁ!!」
ブチギレ。
バクトたちは全力疾走で逃げた。
「逃げろー!!」
カリナ大爆笑。
ワイザも笑っている。
ヒャッポだけ真顔で走っていた。
東地区。
西地区。
ついに。
無名とチェリーパイ。
本格的な火種が。
燃え始めた。




