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異世界子供ヤクザ:無名のバクト  作者: 忍絵 奉公


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30/45

第30話 創る者


「動くな」

 誘拐犯が笑う。

 ナイフ。

 ポロンの首元。

 カリナは動けない。

 バクトも止まっていた。

 だが。

「きゃっきゃっ」

 ポロンだけ笑っていた。

「……?」

 誘拐犯が眉をひそめる。

 怖がっていない。

 むしろ。

 遊んでいると思っていた。

 ポロンはじーっとナイフを見る。

 興味津々。

 そして。

 ポロンの小さな手が。

 ぼんやり光った。

「……あ?」

 次の瞬間。

 ポロンの手の中。

 ナイフ。

「え?」

 誰も理解できない。

 しかも。

 誘拐犯が持ってるナイフと。

 同じ。

「え?」

 カリナも固まる。

 バクトも目を見開く。

 ポロンはナイフを見て嬉しそうだった。

「きゃー!」

 そして。

 ポロッ。

 落とした。

 カラン。

 地面へ。

「……」

 一瞬の沈黙。

 次。

 また光る。

 ポン。

 またナイフ。

「え? え?」

 さらに。

 ポン。

 ポン。

 ポン。

 次々出てくる。

「ちょっ」

 誘拐犯が混乱する。

「なんだこれ!?」

 ポロンは楽しそうだった。

 だが。

 落ちたナイフ。

 グサッ。

「ぎゃっ!?」

 男の足の甲へ刺さる。

「痛っ!」

 さらに。

 グサッ。

「うぐっ!」

 もう一本。

 足へ。

 男が怯んだ。

 その瞬間。

 バクトが動いた。

「おらぁ!!」

 竹光。

 全力。

 頭へ。

 ゴシャッ!!

 竹光が砕け散る。

「ぐぇ」

 誘拐犯。

 白目。

 昏倒。

 ドサッ。

 ポロンの身体が離れる。

「ポロン!」

 カリナが飛び込む。

 キャッチ。

 抱きしめる。

「……あれ?」

 ポロン。

 寝ていた。

 すやすや。

「寝た!?」

 バクトが近づく。

「なんだこれ……」

 ポロンを見る。

 そして。

 鑑定眼。

 発動。

 ポロン――

 【創】

「……は?」

 バクトの顔が固まる。

「創……?」

 ギフト。

 だが。

 意味がわからない。

「創る……?」

 さっきのナイフ。

 複製。

 生成。

「なんだそのギフト……」

 バクトは少し寒気がした。

 四歳。

 なのに。

 異常。

     

「やべぇ!!」

 その頃。

 荷物役の男。

 道案内役の男。

 逃走開始。

「失敗だ!」

「撤退!!」

「待て!!」

 バクトとカリナが同時に走る。

 速い。

 特にカリナ。

 爆速。

 だが。

 バクトも速かった。

 荷物役へ追いつく。

「うおっ!?」

 逃げる男。

 その踵を。

 バクトが。

 思い切り踏む。

 グギッ。

「ぎゃっ!?」

 バランス崩壊。

 男が派手に転がる。

 ゴロゴロ。

 一方。

 カリナ。

 道案内役へ並ぶ。

「っ!?」

 男が横を見る。

 カリナ。

 笑顔。

「逃がすと思うの?」

 スッ。

 足払い。

「うわぁ!?」

 男。

 前転。

 顔面から転がった。

 ドシャァ!!

 周囲の通行人たちが止まる。

「おおー!」

「すげぇ!」

「無名だ!」

 拍手。

 なぜか喝采。

 完全に街の人気者だった。

 バクトは倒れた男の背中へ座る。

「で?」

 低い声。

「誰の指示だ?」

 男たちの顔が青ざめる。

 そして気をうしなった。

 無名。

 そして。

 ポロン。

 その小さな“創”のギフト。

 王都の裏側が。

 また少し。

 大きく動こうとしていた。



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