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異世界子供ヤクザ:無名のバクト  作者: 忍絵 奉公


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29/46

第29話 ポロン誘拐


 東地区。

 チェリーパイ本部。

 赤い照明。

 煙草。

 酒。

 そして。

「……なるほど」

 キャンドルが笑う。

「ガキ共の弱点見つけたか」

 部下が頷く。

「はい」

「四歳くらいの子供がいます」

「名前はポロン」

「かなり可愛がってる様子でした」

 別の男がニヤつく。

「そこ突けば終わりっすね」

「人質だ」

「脅せば従う」

 キャンドルはワインを飲み干す。

「派手にやるなよ」

「まず試せ」

「はい」

     ◇

 数日後。

 西五番街。

 昼。

 バクトとカリナ。

 そしてポロン。

「アニキー!」

 ポロンが走り回る。

「走るな!」

「転ぶぞ!」

 カリナが笑う。

 平和。

 ワイザとヒャッポは別行動。

 荷運びの仕事中だった。

 その時。

「すみません」

 観光客風の男が近づく。

 帽子。

 荷物。

 普通。

「この荷物、少し持ってもらえませんか?」

「ん?」

 バクトが見る。

 さらに。

 別の男がカリナへ。

「道を聞きたいんだが」

 地図を広げる。

「ここどこ?」

「えっと……」

 自然だった。

 何も不自然じゃない。

 バクトが荷物へ手を触れる。

 シュン。

 異空間収納。

「おお!」

 男が驚いたフリをする。

 その瞬間。

 カリナが地図へ視線を落とした。

 男の指。

「ここなんだけど――」

 そして。

 サッ。

「……え?」

 軽い音。

 カリナが振り向く。

 ポロンがいない。

「あ!」

 十メートル先。

 男がポロンを抱えて走っていた。

「アニキーー!!」

 ポロンが笑う。

 一瞬。

 カリナの顔色が変わる。

「待てぇぇ!!」

 爆発的加速。

 地面を蹴る。

 速い。

 速すぎる。

 男も焦る。

「ちっ!」

「なんだあの速さ!」

 カリナはどんどん距離を詰める。

 あと少し。

 手が届く。

 ガシッ!!

 襟首を掴んだ。

「返せ!!」

 男が振り返る。

 その目。

 冷たい。

 スッ。

 ナイフ。

 ポロンの首元。

「……っ」

 カリナが止まる。

 呼吸が止まる。

 男が低く言う。

「放せ」

「……」

「下がれ」

 ポロンは笑っていた。

 遊んでると思っている。

「カリナー……」

 カリナの手が震える。

 怒り。

 悔しさ。

 だが。

 ナイフが近すぎる。

「……っ」

 ゆっくり手を離す。

「そうだ」

 男が後退する。

「下がれ」

 カリナは睨みつける。

 殺しそうな目だった。

 その時。

「おい」

 バクト。

 追いついた。

 息も乱れていない。

 状況を見る。

 ポロン。

 ナイフ。

 誘拐犯。

 一瞬で理解した。

 男はニヤつく。

「動くなよ」

「このガキ死ぬぞ」

 周囲の空気が変わる。

 カリナが震えていた。

「バクト……」

 だが。

 バクトは静かだった。

 妙に静か。

「……へぇ」

 笑った。

 目だけ笑ってない。

「俺ら相手に」

 一歩前へ出る。

「人質なんて取るんだ」

 男が少し怯む。

 理由はわからない。

 だが。

 寒気がした。

 バクトの目。

 今まで見たことない目だった。



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