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異世界子供ヤクザ:無名のバクト  作者: 忍絵 奉公


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26/45

第26話 痛快事件


 無言竜本部。

 昼。

 ガンリュウは縁側で新聞を読んでいた。

 煙管。

 茶。

 そして。

「……ぶっ」

 肩が震える。

 数秒後。

「わははははははは!!」

 大爆笑。

 庭に響き渡る。

 組員たちがビクッとなる。

「会長!?」

「なんです!?」

 ガンリュウは新聞を叩いた。

【フランペチーノ子爵邸全焼! 大規模捜査へ】

「気持ちいい事件だなァ!?」

 笑いが止まらない。

「誰だ!? 犯人は!?」

 側近幹部たちが微妙な顔をする。

「……推測ですが」

「おう」

「フランペチーノは、西六番街の孤児院を買い取ろうとしていたようで」

「ほぉ」

「嫌がらせも色々と」

 ガンリュウの口元が歪む。

「……ぷっ」

 肩が震える。

「くっくっくっ」

 そして。

「みなまで言うな!!」

 大爆笑。

「わはははははは!!」

 縁側を叩いて笑っている。

「あの小僧ォ!!」

「痛快すぎるだろ!!」

 幹部たちも苦笑していた。

「……まぁ」

「やりそうですよね」

「落とし穴とか特に」

 スミスだけ頭を押さえている。

「絶対関わってますよねぇ……」

 ガンリュウは楽しそうだった。

「また褒美でも取らせるか?」

「甘やかしすぎでは?」

「面白ぇからいいんだよ!」

 完全にお気に入りだった。


 一方。

 衛兵隊本部。

「……なんだこれは」

 捜査官が顔をしかめる。

 フランペチーノ子爵邸。

 焼け跡。

 そこから。

 大量の帳簿。

 隠し金庫。

 証拠。

 次々出てきた。

「裏帳簿です」

「脱税額が異常です」

「……こっちは?」

「女性使用人からの証言」

「強姦容疑」

 空気が凍る。

 さらに。

 脅迫。

 違法取引。

 土地の不正買収。

 次々悪事が出る。

 衛兵隊長が呟く。

「……最低だな」


 数日後。

 王都中に通達が出た。

【フランペチーノ子爵逮捕】

【爵位剥奪】

【終身刑】

 新聞が飛ぶように売れる。

 ジェニスが叫びながら走っていた。

「号外ー!!」

「悪徳貴族逮捕ー!!」

 街の人々も驚く。

「マジか」

「前から噂あったよな」

「ざまぁみろ」

 西六番街。

 孤児院。

 シスター・シンディローパーも新聞を読んでいた。

「……」

 沈黙。

 そして。

「……絶対あの子たちでしょ」

 頭を抱える。

 わかっていた。

 あの“いたずら”。

 完全にバクトたちの発想だった。

 だが。

 孤児たちは喜んでいた。

「悪い貴族いなくなった!」

「やったー!」

 シスターはため息をつく。

「はぁ……」

 怒るべきか。

 感謝するべきか。

 わからない。


 その頃。

 無名の倉庫。

 バクトたちは普通だった。

「文字むずい」

「“ぬ”と“め”がわからん」

「似てるよね」

 平和。

 そこへ。

 コンコン。

 扉。

「ん?」

 開ける。

 そこには。

 大量の肉。

 魚。

 米。

 酒。

「……なにこれ」

 手紙が入っていた。

『痛快だった。 ガンリュウ』

 沈黙。

 そして。

 カリナが吹き出した。

「褒美きたぁ!!」

 ワイザが肉を持ち上げる。

「でか」

 ヒャッポは魚を見ていた。

 バクトは苦笑する。

「……あの爺さん」

 笑う。

 王都。

 裏社会。

 そして街。

 少しずつ。

 無名という存在が広がっていく。



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