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異世界子供ヤクザ:無名のバクト  作者: 忍絵 奉公


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第24話 本気のいたずら


 夕方。

 西五番街。

 無名の倉庫。

「新聞だよー!」

 元気な声。

 バクトが扉を開ける。

「お、ジェニス」

 新聞屋。

 ジェニス。

 十代前半。

 短髪。

 足が速い。

 街中を駆け回る情報屋でもあった。

 ジェニスは周囲を確認して、小声になる。

「……六番街の孤児院」

 バクトの顔が変わる。

「シスターんとこ?」

「また嫌がらせされてる」

 空気が冷えた。

 カリナも止まる。

「……何されたの?」

「近くの川に麻痺毒流された」

「は?」

「あと夜中に大音量」

「石投げ」

「窓割り」

 ワイザが拳を握る。

「クソ」

 ジェニスは続ける。

「前の貴族」

「あいつがやってるって噂」

 バクトは静かだった。

 静かな方が危ない。

「……あいつさ」

 低い声。

「前回、“次は燃やす”って約束したよな」

「ちょっ」

 カリナが止める。

「待って」

 ワイザも頷く。

「それはまずい」

「貴族だぞ」

 そう。

 街の貴族へ手を出す。

 それは。

 王都禁軍。

 百万人規模。

 国家そのものを敵に回す行為だった。

 さすがに危険。

「……」

 ヒャッポは矢を削りながら聞いていた。

 聞いてないようで。

 聞いている。

 バクトは腕を組む。

「じゃあどうする?」

 少し考える。

 そして。

「でもさ」

 ニヤリ。

「向こうの嫌がらせ、かわいいよな」

「え?」

「麻痺毒とか騒音とか」

「まぁ……」

「本気のいたずら見せてやる」

 カリナが笑い始めた。

「あ、始まった」

 ワイザはため息。

 ヒャッポは静かに立ち上がった。

 参加する気だった。


 深夜。

 西二番街。

 高級住宅街。

 巨大な貴族邸。

 警備もいる。

 だが。

「静かに」

 バクトたちは屋根から侵入した。

 庭。

 広い。

 綺麗。

「うわ高そう」

 カリナが呟く。

「よし」

 バクトが指示。

「掘れ」


 数時間後。

 庭。

 見た目は普通。

 だが。

 至る所。

 落とし穴。

 しかも。

 底には。

 麻痺毒付き画鋲。

「うわぁ」

 カリナが引く。

「えげつない」

「本気だからな」

 ワイザはせっせと穴を埋め戻している。

 ヒャッポは周囲を警戒。

 さらに。

 屋敷入口。

 階段。

 油を撒く。

 ぬるぬる。

 しかも。

 近くに火打石。

「それ置く必要ある?」

「親切心」

「絶対違う」

 さらにさらに。

 油は屋敷周囲にも撒かれた。

 かなり広範囲。

 カリナが笑う。

「これ絶対大惨事になる」

「まだ燃やしてない」

「時間の問題だよ!」


 その時。

 グルルル……

 番犬。

 大型。

 牙。

 かなり危険。

 ワイザが固まる。

「やば」

 だが。

 ヒャッポが前へ出た。

 怖い顔。

 番犬も止まる。

「……」

「……」

 沈黙。

 ヒャッポは懐から肉を出した。

 差し出す。

 番犬が食べる。

「え?」

 さらに撫でる。

 番犬が尻尾を振り始めた。

「なんで!?」

 カリナが驚く。

 ヒャッポは無言。

 ただ。

 怖い顔のまま犬を撫でていた。

「同類?」

「犬に失礼だろ」


 空が少し白み始める。

「よし」

 バクトが頷く。

「帰るぞ」

 無名は静かに撤退した。

 後には。

 一見美しい。

 だが。

 地獄みたいな庭だけが残された。

 朝。

 何も知らない貴族邸の使用人たちが。

 その庭を歩く事になる。



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