第22話 花と疑心
無言竜本部。
昼。
組員たちがざわついていた。
「またやったらしいぞ」
「今度は賭場」
「極楽の」
「しかも生け花付き」
笑いを堪えている。
そこへ。
「おう」
ガンリュウが現れた。
煙管を咥えている。
「なんだ騒がしいな」
若い組員が駆け寄った。
「会長!」
「また無名です!」
「ん?」
「極楽の賭場潰しました!」
「ほぉ?」
「しかもまた花活けてます!」
一瞬。
沈黙。
次の瞬間。
「ぶはははははは!!」
ガンリュウが爆笑した。
「また生け花かぁ!!」
腹を抱えている。
「好きだなあいつら!」
組員たちも笑う。
「今回は完成度高かったらしいです」
「芸術点上がってるって」
「やめろ笑う」
ガンリュウは涙を拭いた。
「見たかったなぁ」
「写真残ってませんかね」
「絵師呼べ」
「何の記録だよ!」
大騒ぎ。
だが。
奥。
スミスだけ頭を抱えていた。
「笑い事じゃないんですが……」
「お前は黙ってろ」
「はい……」
まだ机の角事件を引きずっている。
ガンリュウは笑いながら煙管を吸う。
「極楽の連中、今頃顔真っ赤だろうな」
「もう真っ赤通り越して青いですよ」
「組員辞め始めたらしいです」
「は?」
「花が怖いって」
一瞬静かになる。
そして。
「はははははは!!」
また大爆笑。
「ヤクザ辞める理由じゃねぇ!!」
一方。
極楽連合事務所。
空気は最悪だった。
重い。
暗い。
誰も喋らない。
パクチは戻ってきていた。
会長。
丸顔。
髭。
派手な着物。
だが今。
目が死んでいた。
「……で?」
低い声。
「賭場潰されたと」
「……はい」
「金庫も?」
「はい」
「生け花?」
「はい」
パクチが頭を押さえる。
「なんなんだあいつら……」
沈黙。
そして。
「情報漏れてんじゃねぇのか?」
空気が変わる。
幹部たちが顔を上げる。
「……え?」
「賭場の隠し金庫まで見つかってる」
「普通わからねぇだろ」
確かに。
あれは内部しか知らない。
パクチの目が鋭くなる。
「誰だ」
誰も答えない。
「裏切り者いるだろ」
「ち、違います!」
「ならなんで毎回やられてんだ!!」
怒鳴り声。
ビクッ。
若い組員たちが震える。
「無名のガキ共だぞ!?」
「なんでこっちが怯えてんだ!!」
空気が壊れていく。
疑心暗鬼。
誰かが漏らした。
いや違う。
あいつらが異常。
意見が割れる。
「ザードが喋ったんじゃ」
「俺じゃねぇ!!」
「じゃあ誰だ!」
「知らねぇよ!!」
怒鳴り合い。
そこへ。
「……あの」
若い組員が震えながら手を挙げた。
「なんだ」
「今日、辞めたい奴が……あと三人……」
静寂。
パクチの顔が引きつる。
「理由は」
「……花が怖いって」
沈黙。
パクチは天を仰いだ。
「終わってる……」
極楽連合。
西地区5・6番街を支配している組織。
だが今。
橋の下のガキどもによって。
じわじわと。
内部から崩壊を始めていた。




