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異世界子供ヤクザ:無名のバクト  作者: 忍絵 奉公


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第21話 生け花


 極楽連合の賭場。

 破壊済み。

 床には割れた茶碗。

 散らばる札。

 気絶した組員。

 そして。

「……で?」

 バクトが周囲を見回す。

「金どこだ?」

 カリナが笑う。

「探せぇー!」

 ワイザは既に棚を持ち上げていた。

 ゴゴゴ。

「力技やめろ!」

 ヒャッポは静かに壁を叩く。

 コン。

 コン。

 音を確かめている。

 そして。

「……ここ」

「お?」

 壁の一部を押す。

 カチ。

 隠し扉。

「うお」

 中には袋。

 大量。

 バクトが開ける。

 銀貨。

 ぎっしり。

「……」

「……」

「……」

 カリナが震える。

「すご」

 ワイザも目を丸くした。

「肉いっぱい買える」

「夢が小さいな」

 数える。

「銀貨……」

 バクトが止まる。

「三百六十五枚」

 沈黙。

「やば」

 カリナが笑う。

「大金持ち!」

 だが。

 バクトたちはそこで終わらなかった。


「よし」

「やるか」

 極楽組員たちが目を覚まし始める。

「う……」

「や、やめ……」

 だが。

 無名は無言だった。

 服を剥ぐ。

「ぎゃああ!?」

「やめろぉ!!」

 バクトがロープで縛る。

 ワイザが転がす。

 ヒャッポが花を持ってくる。

 カリナはもう笑い転げていた。

「ダメ……っ」

「面白すぎる……!」

 頭。

 耳。

 胸。

 花を差していく。

「芸術だ」

「やめろォ!!」

 その時。

 外。

「うぅ……」

 二階から落ちた男が気づいた。

 足が折れている。

「ぐっ……」

 必死に這う。

 逃げようとする。

「た、助け……」

 ズル。

 ズル。

 だが。

 目の前に影。

「……」

 ヒャッポ。

 怖い顔。

 男の顔が凍る。

「いやだぁぁ!!」

 逃げる。

 無理。

 ヒャッポが襟首を掴む。

「ぎゃああ!!」

 ズルズル引き戻される。

「離せ!」

 ヒャッポは無言だった。

 服を脱がせ始める。

「やめろぉぉ!!」

 カリナが腹を抱えて笑っている。

「またお前!?」

 そう。

 この男。

 二回目だった。

 以前。

 橋の下で。

 花を活けられた極楽組員。

 また生け花にされる。

「運命だね!」

「いやだぁぁ!!」

 頭へ花。

 さらに数本。

 ヒャッポは最後に。

 ゴッ。

 軽く殴った。

 男、昏倒。

「完成」

 四人は満足した。


 翌朝。

 通り。

「……え?」

 住民たちが止まる。

 路地。

 そこには。

 裸で花を活けられた極楽組員たち。

 芸術的に並んでいた。

「まただ……」

「無名だろこれ」

 しかも。

 今回は妙に完成度が高い。

 子供たちが集まる。

「かわいい!」

「花いっぱい!」

「このおじさん昨日もいた!」

「また!?」

 極楽組員たちは泣きそうだった。


 そして翌日。

 極楽連合事務所。

「……辞めます」

「は?」

 若い組員が頭を下げる。

「実家帰ります」

「お前も!?」

「俺も……」

「俺も……」

 四人。

 一気に辞めた。

 理由は同じだった。

「もう嫌です……」

「花が夢に出る……」

「通り歩けない……」

「子供に“お花おじさん”って言われた……」

 幹部たちは頭を抱えた。

 無名。

 あのガキども。

 殺すよりタチが悪い。

 西五番街。

 西六番街。

 極楽連合の面子は。

 どんどん崩壊していっていた。



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