第18話 正月の終わり
宴会は終わらなかった。
夜。
さらに夜。
そして深夜。
無言竜本部は、ずっと騒がしかった。
「次ぃ!!」
「一発芸!!」
「やれぇ!!」
組員たちが大盛り上がりしている。
完全に酒の勢いだった。
変な踊り。
意味不明な歌。
顔芸。
筋肉自慢。
誰かが机の上で逆立ちし始めた。
「なんなんだこの組織……」
バクトが呆れる。
カリナは腹を抱えて笑っていた。
「変なのしかいない!」
ワイザはずっと食っている。
ヒャッポは酒に酔った大男へ無言で水を渡していた。
そして。
深夜三時。
ようやく解散になった。
「寝ろぉぉ!!」
「会長まだ飲めます!!」
「黙れ!!」
無名一行は寝室へ案内された。
「……おお」
バクトが止まる。
広い部屋。
綺麗。
しかも。
ふかふかの布団。
「やわらかっ!!」
カリナが飛び込む。
ワイザも沈んだ。
「すごい」
ヒャッポは無言で布団を押している。
そして。
ポロン用の籠まで用意されていた。
さらに。
女性使用人が頭を下げる。
「ポロン様は私がお預かりします」
「様?」
バクトが困惑する。
「寝ずの番をしておりますので、ご安心ください」
「寝ずの番!?」
カリナが驚く。
使用人は優しくポロンを抱いた。
慣れている。
ポロンも安心して眠っていた。
バクトは少し肩の力を抜いた。
「……安心して寝れるな」
「うん」
五人は、そのまま泥のように眠った。
昼頃。
バクトたちは起きた。
「寝すぎた」
「布団が悪い」
「良すぎるって意味だろ」
大広間へ行く。
すると。
「ぐごぉぉ……」
「……」
組員たちが雑魚寝していた。
廊下。
机。
柱の横。
そこら中に転がっている。
料理もまだ残っていた。
カリナがつまみ食いする。
「まだうまい」
ワイザも食べる。
ヒャッポは魚を回収していた。
その時。
「おう」
ガンリュウが来た。
普通に元気だった。
「爺さん寝たの?」
「少しな」
「化け物か?」
ガンリュウは笑う。
「楽しかったか?」
「あぁ」
バクトは素直に頷いた。
「ありがとな」
「気にすんな」
ガンリュウは煙管を咥える。
「また遊びに来い」
「いいのか?」
「いつもこんな騒がしい訳じゃねぇがな」
「昨日だけ異常だったの?」
「まぁ正月だからな」
カリナが笑う。
「楽しかった!」
「料理もうまかった」
ワイザも頷く。
ヒャッポは静かに頭を下げた。
ガンリュウは少し嬉しそうだった。
「じゃあ行くよ」
「おう」
「またな」
「おう」
それだけだった。
だが。
妙に温かかった。
無名一行が帰った後。
夕方。
「……ん」
スミスが目を覚ました。
頭が痛い。
「うっ……」
周囲を見る。
片付け中の組員たち。
なぜか全員、妙な顔をしていた。
「……?」
誰かが目を逸らす。
別の奴は笑いを堪えている。
「なにか……あったのか?」
沈黙。
「……」
「……」
「なんだ?」
聞いても誰も答えない。
代わりに。
「帰れ」
「え?」
「今日はもう帰れ」
「いや、この宴会三日まで続く予定では?」
「帰れ」
「なんで!?」
スミスは混乱した。
立ち上がる。
ズキッ。
「痛っ!?」
頭を押さえる。
たんこぶ。
「……?」
記憶が曖昧だった。
確か。
剣舞をして。
その後。
「……なんだ?」
誰も教えてくれない。
組員たちは肩を震わせていた。
スミスはとぼとぼ帰る。
廊下を歩く。
「なんなんだ……」
しかも。
パクチは出張で不在。
「どう報告すれば……」
頭を抱える。
たんこぶがズキッと痛んだ。
「いっっ!!」
遠くで組員たちの笑い声が聞こえた。
スミスはまだ知らない。
自分が今。
無言竜本部で“伝説”になっている事を。




