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異世界子供ヤクザ:無名のバクト  作者: 忍絵 奉公


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第17話 竹光


 宴会場。

 まだ笑いの余韻が残っていた。

 昏倒したスミスは端に転がされている。

「起きねぇな」

「めちゃくちゃ打ったからな」

 そんな中。

 バクトはガンリュウを見ていた。

「なぁ爺さん」

「おう?」

「どうやったら強くなれんの?」

 周囲が少し静かになる。

 ガンリュウは酒を飲みながら笑った。

「居合斬りだよ」

「居合?」

 バクトはよくわからないまま頷いた。

「居合か!」

・・・ギフト居って・・

「絶対わかってねぇだろ」

 ガンリュウが笑う。

「間合いを見極めて、一太刀で斬り抜く」

 酒を置く。

「早いぞ」

「あ」

 バクトが思い出す。

「橋の下で見た!」

「ん?」

「あのシュッって袈裟斬り」

「あぁ」

「居合っていうのか?」

「そうだ」

 ガンリュウは立ち上がった。

「教えてやるか?」

 周囲がざわつく。

「会長が?」

「マジか」

 ガンリュウは腰の刀へ手を置いた。

 スッ。

 空気が変わる。

 隣にいた幹部が顔色を変えた。

「……っ」

 座ったまま後ろへ下がる。

 本能だった。

 その瞬間。

 シュッ。

 銀が走る。

「ひっ!?」

 刀は幹部の首元でピタリと止まっていた。

 一瞬だった。

 誰も見えなかった。

 汗が幹部の頬を流れる。

 ガンリュウは笑う。

「これが居合だ」

「へぇー」

 バクトが立ち上がった。

「こうか?」

 構える。

 だが。

 手に刀は無い。

「……何してんだ」

「エア刀」

 カリナが吹き出した。

「だっさ!」

 しかし。

 バクトは真面目だった。

 スッ。

 構える。

 そして。

 あろうことか。

 ガンリュウへ向かって踏み込んだ。

「シュッ」

 エア居合。

 空気だけ切る。

 その瞬間。

「ぐあぁぁ!!」

 ガンリュウが突然苦しみ始めた。

 周囲が凍る。

「会長ォ!?」

「なっ!?」

 ガンリュウが倒れる。

 ドサッ。

 幹部たち総立ち。

「毒!?」

「何された!?」

「エア刀!?」

「新種のギフトか!?」

 バクトも焦った。

「え!? え!? 俺!?」

 数秒後。

「……ぶはははははは!!」

 ガンリュウが笑いながら起き上がった。

「筋がいいなぁ!!」

 大爆笑。

 周囲が固まる。

「会長ぇぇ!!」

「脅かすな!!」

 ガンリュウは涙を拭く。

「本当に斬られたかと思ったわ!」

「なんだよそれ!」

 バクトも笑った。

 ガンリュウは近づいてくる。

「マジで筋いいぞバクト」

 バシバシ肩を叩く。

「痛ぇ痛ぇ!」

 そして。

「おい」

 後ろを振り向いた。

 壁。

 そこに飾られていた刀を指す。

「それ取れ」

 組員が持ってくる。

 長い刀。

 銀色。

 綺麗だった。

 ガンリュウはそれをバクトへ渡した。

「やるよ」

「え?」

「いいの?」

「あぁ」

 バクトが恐る恐る抜く。

 シャッ。

 銀色。

 だが軽い。

「……あれ?」

 組員たちが笑う。

「竹光だ」

「模造刀?」

「そうだ」

 ガンリュウがニヤリ。

「子供にはそれくらいで十分だ」

 バクトは刀を振る。

 軽い。

 でも嬉しかった。

「かっけぇ」

「だろ?」

 ガンリュウは笑う。

「ハッタリだけでも、お前ならなんとかなる」

 バクトも笑った。

 その横で。

 ワイザが竹光を見ていた。

「それで殴ったら強そう」

「斬るもんだろ!」

 カリナが笑う。

「でもバクト、似合うかも」

 ヒャッポは静かに言った。

「……詐欺師っぽい」

「褒めてる?」

 宴会場にまた笑いが広がる。

 バクトは竹光を肩へ担いだ。

 少しだけ。

 本当に強くなった気がした。



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