第15話 正月大戦争
無言竜本部。
大広間。
宴会は既に最高潮だった。
「飲めぇ!!」
「食えぇ!!」
「会長もう樽三つ空けてます!」
「まだまだァ!!」
ガンリュウが豪快に笑う。
料理の量も異常だった。
巨大な舟盛り。
タイ。
エビ。
ヒラメ。
鍋。
焼き魚。
高そうな肉。
見た事ない料理まである。
バクトは刺身を見ていた。
「これ生だよな?」
「生だ」
「腹壊さねぇの?」
「壊さねぇよ」
恐る恐る食べる。
モグ。
数秒停止。
「……うまっ」
ガンリュウが笑う。
「だろ?」
「なんだこれ」
「ヒラメだ」
「ヒラメって踊るだけじゃねぇんだな」
「誰がそんな事言った」
一方。
ワイザは既に戦闘態勢だった。
目が完全に獣。
カリナも負けていない。
「絶対勝つ」
「負けない」
組員たちが気づく。
「……なんか始まったぞ」
「どっちが勝つと思う?」
「でけぇ方」
「いや女の方速ぇ」
自然と輪ができる。
料理が積まれていく。
「よーし!」
誰かが叫んだ。
「食った量で勝負だ!!」
「おおおお!!」
完全に宴会ノリだった。
ガンリュウも大笑い。
「やれやれ!!」
「負けた方は?」
「知らん!!」
スタート。
ワイザが肉を掴む。
消える。
「はっや!?」
組員が引く。
カリナもエビを連続回収。
「このガキらやべぇ!」
「胃袋どうなってんだ!?」
バクトは呆れていた。
「何やってんだあいつら」
ヒャッポは静かに魚を食っている。
その横で。
ポロンが組員に抱っこされていた。
「ほらー」
「きゃっきゃっ」
「かわいいぃ……」
顔面傷だらけの大男がデレデレだった。
周囲も完全に赤ちゃんモード。
「指握った!!」
「俺にも抱かせろ!!」
完全に治安悪い保育園だった。
フードバトルは激化していた。
「タイ追加ァ!!」
「鍋きたぞ!!」
ワイザは黙々と食う。
速い。
静か。
無限。
カリナは技巧派だった。
小さい身体で高カロリーを狙う。
「お前ら本当にガキか!?」
「育ち盛りです!」
組員たちは大盛り上がり。
「ワイザいけぇ!」
「カリナ負けんな!」
「賭けるか!?」
「やめろ!」
バクトがツッコむ。
そして。
一時間後。
カリナが箸を止めた。
「ぐっ……!」
「限界か!?」
「まだ……いける……!」
震える。
だが。
ワイザはまだ食っていた。
無表情。
静か。
怖い。
組員たちがざわつく。
「なんだあの怪物……」
「底なしだ……」
ついに。
カリナが机へ突っ伏した。
「むりぃ……」
「勝者ァ!!」
「ワイザァァ!!」
大歓声。
ワイザは最後にエビを食べた。
モグ。
「勝った」
ガンリュウが腹を抱えて笑う。
「がはははは!!」
「面白ぇガキどもだ!」
組員たちも大爆笑だった。
宴会後半。
ガンリュウは完全に酔っていた。
顔真っ赤。
酒瓶片手。
「聞きてぇかァ!?」
組員たちが慣れた顔で言う。
「始まった」
「会長の武勇伝だ」
ガンリュウが机を叩く。
「昔なァ!!」
「おう!」
「東地区の奴ら百人に囲まれてなァ!!」
「百!?」
「全員ぶった斬った!!」
「絶対盛ってる」
バクトが即ツッコミ。
周囲が凍る。
(会長に盛ってるって言った!?)
だが。
ガンリュウは大笑いした。
「がははは!!」
「まぁ百はいねぇな!」
「盛ってんじゃねぇか!」
さらに笑いが起こる。
ガンリュウは酒を飲む。
「でも四十はいた!」
「十分やべぇよ!」
「あと昔なァ!」
話は止まらない。
橋を落とした。
役人殴った。
地下闘技場潰した。
話のスケールがおかしい。
カリナが小声で言う。
「この爺さん若い頃絶対もっとヤバかったよね」
「・・今もヤバい」
ヒャッポが静かに言う。
ガンリュウは楽しそうだった。
そして。
バクトたちも。
気づけば普通に笑っていた。
こんな正月は初めてだった。




