第20話 『魔獣を生み出す魔獣』
午前10時。
古都アーテナイン。
4人の星使いは南東部入り口前に着く。
魔獣だけを破壊する爆弾を使った作戦が始まろうとしている。
爆弾の数は全部で6つ。
形は円柱状。
大きさは直径15センチ。
高さ5センチ。
色は白。上部に赤いボタンがある。
魔獣を死滅させる特殊なガスが発生。
そのガスを浴びた魔獣は爆散。
その爆風でガスは更に広がり、連鎖的に魔獣を破壊していく。
試算では爆弾一個の爆発でアーテナインの半分はガスが行き渡る。
今回は早期解決のため、多くの爆弾を使用する。
ガス自体は人体に無害だが、巻き込まれれば窒息する。
たとえ星使いが結界を張っていたとしてもガスに囲まれていては必要な空気を取り込めず、窒息して死ぬ。
爆弾の作動はボタンを押し、魔力を注ぐ。
作動するとボタンが点滅。30分後に爆発する。
作戦内容を確認。
作戦行動は二人一組の二班に分かれて行う。
南部を担当する南班。
北部を担当する北班。
北班は馬車に乗り北部の入り口まで移動。
爆弾は各班、3個ずつ所持。
それぞれ爆弾作動後30分以内に退避できる場所まで移動。
そこに爆弾を一つ設置する。
退避する途中にもう一つ設置。
最後の一つは予備に残しておく。
作戦開始は北班からの合図をもって開始。
「以上が本作戦の内容だー。質問は手短にー」
と、ヌンキが具合が悪そうに言う。
二日酔いはまださめていない。
レグルスが聞く。
「班分けはどうします?」
「あー、そうだな能力的に考えて、俺とサダルメリク、レグルスとアルタイルでいいんじゃないか」
「……」
「ん?なにか不満かレグルス」
「いや、それなら俺とヌンキの旦那、サダルメリクとアルタイルに替えてもらえないっすか?」
「おう、別にいいけど。お前がアルタイルの援護にいてくれると助かると思ったんだがな。それにほら、こいつはサダルメリクとは昨日会ったばかりだし」
「アルタイルとサダルメリクが会ったのは昨日が初めてじゃないっすよ」
「あれ。そうだっけ」
「それに援護で言ったら俺より攻撃範囲の広いこいつが向いているし」
「あー。そうか、じゃあそれでいいか」
サダルメリクが答える。
「僕は構いません。アルタイルが良ければ」
アルタイルも答える。
「は、はい!よろしくお願いします」
班が決まる。
南班は射手座のヌンキ、獅子座のレグルス。
北班は水瓶座のサダルメリク、鷲座のアルタイル。
移動前にアルタイルはレグルスの元に駆け寄り、二人だけで会話する。
「あの、兄者」
「ん?どうした?」
「あの、もしかして私のために」
「ん、ああ。俺がしてやれることなんてこれぐらいしかないからな」
「あ、ありがとうございます」
「まあ星使いは引退まで結婚は出来なくても恋愛は禁止されていないみたいだから、うまくやれよ。応援してるぜ」
「……はい」
北班は馬車に乗って移動を開始する。
運転は警備隊員が行い、後部座席にはアルタイルとサダルメリクが乗った。
アルタイルは緊張していた。
サダルメリクがアルタイルに話しかける。
「どうしたの?緊張しているの?」
「へっ?えっ?」
「大丈夫だよ。彼女の作った爆弾なら必ず成功する」
「あ、そうですね!カマリさんの爆弾なら必ず!うん!」
「危なくなったら遠慮なく僕を頼っていから」
「は、はい」
馬車は進む。
アルタイルは嬉しくもあり恥ずかしくもあり、移動中全く、顔を合わせることができなかった。
一方、ヌンキとレグルスは木陰で休んでいた。
「うう、気持ちわるう」
「あんなに飲むからですよ」
「馬車で移動していたら吐いていたかも、班を替えて正解だったな」
「え?もともとヌンキの旦那が北に行く予定だったんですか」
「ああ。と言うより、アルタイルをこっち側に居させる予定だったんだよ」
「なんでですか?」
「えーっと、なんだっけ?」
「忘れたんですか」
「そうだそうだ!あいつを驚かせるために黙ってたんだよ。うん」
「なにがですか?」
「……あれ?なんだっけ」
「えー」
午後1時半過ぎ。
アルタイル達が北部の入り口に到着。
午後2時。
アルタイルが合図として、聖哲体の弓で空に向かって大きな矢を放つ。
ヌンキがその矢に答えるように同じように矢を放つ。
両班、作戦を開始。
北部では魔獣の数は多く。
入り口に入った途端に襲われる。
サダルメリクが聖哲体を具現。
直径8センチの水色で球状の瓶。
空中に8個、浮遊する。
瓶は遠隔操作で、自在に動かす事が出来る。
瓶の口からは、青い魔力の光線が発射される。
光線は四方八方から繰り出され、魔獣の急所を貫通し、撃破していく。
アルタイルは魔獣の相手をせず、自分の背負い鞄に爆弾を入れ走り続ける。
午後2時半。
両班は順調に、爆弾設置場所に到達。
一つ目の爆弾を作動させる。
アルタイルは作戦が順調に進んでいる合図に、再び矢を空へ放つ。
矢は空中の結界に当たり、散って消滅。
ヌンキも同様に数秒遅れて矢を放ち、無事を知らせる。
その後、魔獣と何度かの戦闘を行うが、いずれもレグルスとサダルメリクが各班で奮闘。基本的に爆弾の設置と作動、及び合図をアルタイルとヌンキが行った。
各班、二つ目の爆弾も設置及び作動が終わり、合図を上げ、全員結界の外へと走って出る。
出入り口の結界が自動で戻る。
アルタイル達を追ってきた魔獣が出入り口付近で足を止め、立ち尽くす。
無事に爆弾の設置を完了し、ほっと一安心のアルタイル。
その様子を見て、サダルメリクが話す。
「お疲れ様。よくできたね」
「ありがとうございます。あとはうまく爆発してくれればいいんですが」
「魔獣が爆弾を壊すような事はないよ。あれは作動させた者の魔力を元に爆弾の外へと魔力が漏れないように結界が張られる仕組みになっている。魔獣があの爆弾の魔力に反応したり、探知することはまず無いから」
「そうなんですね。だったら安心です」
午後3時。
一つ目の爆弾が、北部と南部でほぼ同時に爆発。
爆発そのものは大きくない。
爆発と同時に放たれた緑色のガス。
ガスは空気を喰らい広がる性質を持つ。
広がる速度はとても速く、走って逃げ切る事など到底できない程である。
ガスが魔獣を襲う。
魔獣の核を破壊し、その魔獣を爆散させる。
試算通りガスは更に広がり、破壊と拡散を繰り返す。
30分後。二つ目の爆発で追い打ちをかける。
魔獣が死滅していく。
さらに30分後、結界の中はガスで充満する。
緑色の半透明な景色が不気味に映る。
外側から見ていたアルタイルは唖然とする。
自分たちが今までこつこつと減らしてきた魔獣を一瞬で葬っていく。
その威力に絶句する。
ガスは数分後には自然と消滅していく。
景色の色が戻っていく。
魔獣の姿だけが消えている。
サダルメリクがアルタイルに話す。
「それでは予定通り魔獣が残っていないか確認しよう。と、言ってもこんな広い街を全部見て回るのは今日は無理だから、一つ目の爆弾を置いた付近まで行ってみよう」
二人は再び街に入る。
しばらく歩いても、魔獣の姿は一匹も見当たらない。
先ほど無数に襲い掛かってきたのが嘘のようである。
空気も澄んでいて、先ほどまでガスが充満していたとは思えない。
アルタイルは驚きと安心の混ざった複雑な感情を持つ。
逆に不安を感じる。
視線の端に、すーっと動く見慣れた紫色が通る。
鳥肌が立つ。
距離はかなり離れている。
それは感じたことのある気配。しかし今までとは違う異様な気配。
たった一体のみ。
死んでいない魔獣がそこにいた。
その特徴は異質。
人型だが、服を着ているように見える。
頭の先端が尖った帽子を被る。
色は体も服も紫色。
服はローブ。足は見えない。
地上から数センチ宙を浮き、移動する。
両手の手のひらは赤く光る。
目は赤く光り、口も鼻も無い。
その魔獣はこちらに気づいたのか近づいてくる。
サダルメリクもそれに気がつき、宙に浮く瓶の聖哲体を8個出し、魔獣に向けて飛ばす。
サダルメリクのその聖哲体の操作が可能な範囲は最大300メートル。
最大で出せる数は122個。
一度にこの距離と、数の聖哲体を遠隔操作できるのは星使い連合体の中でもサダルメリクを置いて他にはいない。
青色の光線が8方向ばらばらな距離と場所から魔獣を襲う。
光線は全て弾かれる。
「魔獣が結界を!!?」
と、アルタイルは叫ぶ。
サダルメリクは更に聖哲体を自身の周りに具現する。
魔獣は両腕を前に伸ばし、赤い手のひらを広げ、下に向ける。
赤く光る小さな物体を手のひらから数個落とす。
アルタイルは戦慄する。
予測できてしまう。
ヌンキとレグルスの会話が脳裏によぎる。
赤い物体はそれぞれ紫色の煙を放ち、物体を形成していく。
一つ一つが同じように、できていく。
アルタイルは、言う。
「あれは、魔獣を生み出す魔獣」
体長2メートル強の人型の魔獣が9体。
その姿を完成させる。




