第12話 『目撃』
調星機関。
構成員の17歳の少女ナゴミと、普通ではない猫のグレープは、任務の為、アリオン町に到着。
任務の内容は行方不明になっていた、りゅう座のトゥバンを連れて調星機関本部に連行する事。
協力を予定していた鷲座の星使いアルタイルとの接触に成功するも、突如巨大な魔獣の発生により彼女は魔獣を目指し街に消える。
残された二名は近くにあった時計塔に登り、その様子を観察。
偶然にも射手座の星使い、ヌンキを発見。
射手座のヌンキの一撃で魔獣が撃破される瞬間を同時に目撃。
アルタイルもヌンキに遭遇。
しかし星使いの二人は特に会話する様子もなくその場を別々に離れる。
現在、ナゴミ、グレープ両名は時計塔を離れ、近くの飲食店にて休憩中。
「と、まあとりあえず以上が結果報告ね」
テーブルの上に置かれた画面付きの小さな通信機に話かけるナゴミ。
画面には一人の灰色の髪の女性が映っている。
〚ご苦労さま。それで?二人は今どこに?〛
と、通信機から声が聞こえる。
画面に映る女性の声が転送されている。
調星機関の本部との通信。
彼女はナゴミの上司。年齢はナゴミと同じ18歳。
本部は空の上。宇宙にある。
ナゴミの報告通り、ここは飲食店の中。
物珍しい通信機に客の一部はナゴミのいるテーブルに興味深々の様子。
テーブルの上には通信機以外にナゴミが注文した海鮮料理が並ぶ。
テーブルの下には、グレープが寝ている。
ナゴミは食事しながら、通信機で上司と会話する。
「あの二人の気配は憶えた。まだ遠くには行ってないよ、たぶん」
〚協力は?してもらえるんだろうな?〛
「アルタイルは大丈夫だろうけど。射手座の人は知らない」
〚射手座の星使いが地上に降りたという連絡は受けていない。おそらく許可も取らずに勝手に来ているんだろう〛
「ははっ!そこを突いて、脅して協力させろと?」
〚やれ。念のために少しでも戦力は欲しい〛
「あのさぁ、戦力を現地調達ってどうなの?だれか他に人呼べなかったの?」
〚暇なのはお前達だけだったんだよ。戦力になるやつで、な〛
「よく言うよ!」
〚それに相手は星使い。星使いの味方も、連れていくのが得策だろう〛
「まだ戦いになるって決まった訳ではないけど」
〚もちろんだ。基本はお前達だけでなるべく穏便に、事を済ませろ〛
「星使いさまに、余計な借りはこれ以上作りたくないものね」
〚そういう事だ。彼らにはあくまでも援護として参加してもらう。いいな?〛
「はーい。分かったよ」
ナゴミは食事を終え、通信機を制服にしまい、グレープを起こして店を出た。
眠りの洞窟。アリオン町の北西部に位置する。
岸壁は草原を遮るように連なり、近くには深い森がある。
アルタイルと射手座の星使いヌンキは、街中でそれぞれナゴミに声を掛けられ、同行し、今ここにいる。
三人と一匹が洞窟の前に並ぶ。
ナゴミが二人に話しかける。
「ご協力ありがとう、二人とも!」
「……なんで俺まで」
射手座のヌンキが小さくぼやく。
ナゴミはすかさず近寄り、小声で話す。
「射手座のヌンキ殿は許可なくこの地上に降りているとの事。この件、十二星座はともかく陛下のお耳にふれれば……」
「あ、ああ喜んで協力するぜ!なあ!?」
「えっ!あ、はい!」
ヌンキはしどろもどろに、アルタイルは状況が飲めずに答えた。
ナゴミがヌンキと話す。
「確認するけど、この洞窟の奥に、りゅう座の星使いトゥバンがいる。彼女は4年間も行方を眩ませていてた」
「そうらしいな」
「そのトゥバンを連行するのが今回の任務」
「で、星使いの俺たちは何をすれば?」
「基本なにもしなくていいよ。洞窟の外で待機。異常が発生したら援護」
「俺たちは洞窟の中には入らなくていいのか?」
「そういう事。洞窟内には私とグレープが入る。トゥバンとの接触は私達だけ」
ヌンキは「ああ分かった」と、返事。
アルタイルも小さく返事した。
「いざとなったら逃げても構わない。というか逃げてね」
ナゴミが言った。更に続ける。
「星使い同士で争わせる訳にはいかないから」
星使い同士の争いを防ぐ。
それが調星機関の最大の目的。
りゅう座の星使いは4年間、なんの報告も無しにこの地上に滞在し続けている。
これは星使いの掟に反する行為であり、連合体への反乱とも言える。
ゆえに、りゅう座のトゥバンと他の星使いとの接触は極力、避けなければならない。
「とは言え。私達は君らとは違う力を持ってはいるが、星使い自体の扱いというものを知らないからね。聖哲体とかさ」
「そこで俺達を援護にね。分かったよ」
ナゴミの説明を一通り聞き終わり、ヌンキも改めて協力を承諾する。
ナゴミとグレープが並んで洞窟に入っていく。
中は暗く、外からでは奥は何も確認できない。
二名は明かりも持たずにスタスタと歩いて行った。
外にはアルタイルとヌンキが待機している。
横に並び、洞窟を眺める。
「あの、初めまして。鷲座のアルタイルと申します」
「ん、ああ、よろしくな。俺は射手座のヌンキ」
「ヌンキさん。よろしくお願いします」
「お前も災難だったな。あんなのに捕まって」
「……ええまあ、びっくりはしましたけど」
「『仕事しない』で有名な調星機関がわざわざのお出ましに出くわすなんて、俺もお前も相当、運が無いよな」
「私の場合、待ち伏せされてましたけどね」
「マジかよ。ご苦労さん」
今。
星使いの二人は異変に気づく。
洞窟の奥で急に魔獣の気配がする。
二人は身構える。
ヌンキは弓の聖哲体を、アルタイルは杖の聖哲体をそれぞれ具現した。
「中に魔獣が?という事は魔女の正体ってまさか」
「……」
アルタイルは、そう喋り、ヌンキは沈黙した。
次の瞬間、魔獣の気配が洞窟内から迫る。
ヌンキは弓を構え、すぐ放つ。
緑色の魔力の矢が、真っすぐと洞窟内を走る。
「よし!逃げるぞ!!」
「えっ!ええっ!!?」
「何してる!走れ!!」
「ナ、ナゴミさん達は!?」
「あれぐらいじゃ、あの連中は死なない!いいから逃げるぞ!」
ヌンキは弓をしまい、走った。
アルタイルもそれを追うように走った。
二人は逃げた。
洞窟から魔獣が這い出る。
その魔獣は植物のような姿。
暗い紫色の茨。
がんじがらめになった茨が、うねるように動いて、アルタイルとヌンキを追ってくる。
動きは速い。
走る二人に迫る勢い。
走りながら、後ろを気にしながら、二人は会話する。
「倒した手ごたえが無かった!!あの茨の奴、相当硬いぞ!」
「中心を破壊しないとだめなんでしょうか!?」
「いや知らん!だけど結果的に連中からこいつを遠ざけたのは良かった!」
「おびき寄せたんですね!」
「十分協力はできた!このまま森に逃げるぞ!」
魔獣は速度を変えず追ってくる。
二人はそのまま森に入った。
一方、眠りの洞窟内部。
ナゴミとグレープは洞窟の一番奥まで来ていた。
茨の魔獣はナゴミ達には襲い掛かることもなく、外へ出ていた。
「今のが噂の魔獣か。どうやら二人が引き付けてくれたようだな」
と、グレープは洞窟の外の方を見て話す。
ナゴミが気づき、グレープを目で呼ぶ。
二名はりゅう座のトゥバンを見つけた。
トゥバンは、おそらく聖哲体であろう物体の中にいる。
丸みのある白い物体に、半透明のガラス。全体的にうっすらと発光している。
青色の半透明のガラスに上半身が見える。
彼女はその物体にすっぽりと囲まれ、両手を胸に当て眠っている。
物体は、ほぼ直立してるが、洞窟の壁に立てかかっている状態。
むしろ一部は少し土に埋まっている。
「まるで冬眠カプセルだな」
と、グレープが言う。
「たしかに。これは手がつけられない訳だ。でも間違いない。写真で見たのと同じ顔。この女の人がトゥバン……なんだけど」
ナゴミは人の気配に気づき岩陰に目線をずらす。
「どうやら先客がいたようだね。姿を見せな」
ナゴミの言葉に、一瞬沈黙が走る。
そして、出てくる。
出てきたのは一人の女性。
髪は真っ白で長さは腰ぐらいまである。
赤調の化粧で、痩せ気味。
金色の装飾品を施した黒いローブを身に纏う。
ナゴミがその姿を確認し、改めて聞く。
「あなたはだれ?何者?」
女性は静かに、しかしはっきりと、答える。
「私は、地底の魔女」




