↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界チートで全員に溺愛される悪役令嬢の私が世界を壊すまで  作者: しらたま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/31

第21話 孤高の公爵子息①

 翌日、私たちは、再びダンジョンの奥を目指して歩いていた。

 薄暗い通路には、相変わらず湿った空気が漂っている。足元には苔が生え、ところどころ水滴が石畳へ落ちていた。

 私は何となく隣を歩くガレスの肩へ視線を向ける。


「毒、もう平気なの?」


「ああ」


 ガレスは肩を軽く回してみせた。


「ノアの解毒魔法が効いた」


 その動きに痛む様子はない。あれだけ全身へ毒が回っていたのに、今では何事もなかったように歩いている。

 やっぱすごいな、ノア。さすが原作主人公。いや、ガレスの丈夫さが規格外すぎるのか?


「良かったー」


「心配したか?」


 ガレスが横目でこちらを見る。


「うん。今後の戦力的に」


「…………お前は期待を裏切らんな」


 ガレスは呆れたように息を吐いた。でも、目は笑っているから大丈夫そうだ。


 あれ以来、ガレスは少しだけ変わった。

 相変わらず私を気に掛けるし、何かあれば真っ先に前へ出る。だけど、以前みたいに私だけを守るための『おかしな暴走』はしなくなった。


 【魅了補正】。好意を増幅させることで、男を落として逆ハーレムを作れる私にとって最高のチート。だが今は、世界の歪みと共に人を壊す呪いの能力。

 あの日のガレスを見て、私は改めて思い知った。今までみたいに乱用するのは危険だ。


 でもやっぱモテたいしなぁ。やめられるかな、私。


◇


「あー、もう無理」


 私は通路の真ん中へしゃがみ込んだ。


「歩けない。足痛い。てかこのダンジョン、床に苔生えすぎじゃない? 滑って転んだら誰が責任取ってくれるわけ?」


 気づけばダンジョン攻略三日目。いくらイケメンに囲まれているとはいえ、こんな陰気な洞窟に閉じ込められ、私の精神は限界を迎えていた。


「てかいい加減お風呂に入りたい。ふかふかのベッドで寝たい。ちゃんとしたご飯が食べたい」


 誰も返事をしなくとも全力で文句を垂れ流し続ける。愚痴くらい言わないとやってられない。


「……リゼ、少し静かにしてください」


 ため息混じりの声が降ってきた。アシュレイが眉間にしわを寄せて私をたしなめる。


「あと、その酒瓶。歩きながら飲むのはやめてください」


 アシュレイが私の手元を指差した。


「はいはーい。わかりましたよ」


 返事だけして、すかさず一口あおる。だって少しくらい酔わないと余計疲れるんだもん。


「だから飲まないでくださいって」


「お酒だって水分補給だし!」


 ああ言えばこう言う私に、アシュレイは天を仰いで大きなため息を吐いた。

 その前方では、リオンが意味もなく剣をぶん回している。


「見ろ! 新しい剣技を思いついたぞ!」


「通路で剣を振るな、バカ王子!」


 アシュレイの怒号が飛ぶ。しゅんと肩を落とすリオン。

 その直後、ドゴッ!! と鈍い音が響き、私たちが振り返ると、ガレスが壁を殴っていた。拳がめり込み、石壁に派手な大穴が空いている。


「この辺りは空洞かもしれんな。通路になるかもしれない」


「壊す前に一言言ってください! ダンジョンが崩壊したらどうするんですか!」


 アシュレイの悲鳴がダンジョン中へ響き渡る。ガレスは本気で首を傾げていた。

 バカ&脳筋コンビと、あまりにも自己中すぎる私の我儘に挟まれ、アシュレイは見るからに胃を押さえている。可哀想だけど、ちょっと面白い。


「リゼ、あまり好き勝手してると、アシュレイ様に見放されちゃいますよ」


 ノアが呆れたように私を見る。


「そう?」


「【魅了補正】がなかったら、一番リゼと仲良くならなそうなのってアシュレイ様ですし」


「いーや、そんなことないね。私は前世でインテリエリートと付き合ったこともある」


 ……三日で振られたけどな。


 それに、疲弊はさせているものの、アシュレイと私の関係は決して悪くなかった。

 イベント補正で独占欲を上げたせいか、アシュレイは何かと私に構ってくる。


「ほら、足元をよく見て歩いてください」


 アシュレイが私の手を取り、気遣うような優しい視線を向けてきた。


「ん、ありがと」


「さっきから三回ほど滑りかけています。歩幅も少し大きすぎますね。疲れているならもう少し小さく刻んでください」


「細かっ」


「あと靴紐はもっとキツく結んだほうが歩きやすいです。その結び方だと解けやすい。それに……」


「まだあるの?」


「その歩き方も少し変えたほうがいいですね。踵から着地すると足音で魔物に気づかれやすくなります。つま先から着地してください」


「いや、そんなとこまで求められても」


「それから、さっきの飲酒の件ですが――」


「ストップストップストップ!」


 私は両手を突き出してアシュレイを遮った。


「アシュレイさぁ」


「はい?」


「お前は私のなんなんだ?」


「…………」


 アシュレイは珍しく言葉に詰まった。少しだけ真剣に考え込んでから、大真面目な顔で答えた。


「未来の夫ですが?」


「いや、未来の夫でもそこまで干渉してこないわ!」


 なんかこういう男……前世にもいたな。

 ハンカチ持ち歩けだの、箸の持ち方だの、LINEの返信時間だの。やたら細かく注意してくる男だった。

 好意の示し方が説教ベースだから、付き合ってるこっちは息が詰まるのだ。

 ……あれは本当にしんどかった。


 私はじっとアシュレイの顔を見つめる。


「……アシュレイ」


「はい」


「お前、めんどくさいって言われない?」


 ぴたりと、アシュレイの歩みが止まった。


「……は?」


 アシュレイの表情が歪む。

 すかさずアシュレイが何かを言い返そうとしたときだった。ぞわり、と背筋を撫でるような冷たい殺気が通路を走る。

 ガレスの手が、瞬時に剣の柄へ伸びた。


「……止まれ」


 低い声が響く。リオンも表情を変えて剣を抜いた。

 前方の暗闇から、何かがこちらへ近づいてくる。


 ズ……ズズッ……


 岩を擦るような、不気味な音だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。