4話
17時、19時に投稿します
町外れの小さな森へと足を運び、人目のない場所で、私は改めて自分の力と向き合うことにした。
掌を前に掲げ、意識を集中させる。すると、あの日と同じように、金色の光が指先に灯った。
「……癒しは、確かに使える」
昨日、衛兵の足を癒したことを思い出す。ならば、他には何ができるのか。
私は近くに転がっていた枯れ枝に向かって、光を放ってみた。すると枝は淡く輝き、まるで芽吹くように、小さな新芽が生え始めた。
「これは……生命力を高める力、ということかしら」
癒しと、生育。あの日、ダイアウルフを弾き飛ばした力は、防御と浄化に近いものだったのだろう。試しに、目の前の空間に薄い光の膜を張ってみる。以前ほど強くはないが、確かに手応えがあった。
――思ったよりも、多くのことができるかもしれない。
夢中になって力を試すうち、いつのまにか日が傾いていた。額には汗が滲み、体には心地よい疲労感がある。
「今日はこのくらいにしておこう」
森を出ようとしたその時、木々の向こうから、複数の足音と、荒々しい声が聞こえてきた。
「――おい、あっちに逃げたぞ!」
「追え! 逃がすな!」
何やら物騒な気配。私は咄嗟に、近くの木の陰に身を隠した。
やがて、茂みを掻き分けて姿を現したのは、ぼろぼろの外套を纏った、まだ幼さの残る少年だった。腕には、痛々しいほど深い傷。背後からは、剣を手にした荒くれ者らしき男たちが、三人ほど追いかけてきている。
「捕まえたら、高く売れるぞ!」
「聖属性持ちなんて、滅多にいないからな!」
その言葉に、私は思わず息を呑んだ。
――聖属性を持つ子ども。
もしかすると、この少年もまた、私と似たような力を宿しているのかもしれない。そして、それを利用しようとする者たちに追われている。
少年は森の奥へ逃げようとして、木の根に足を取られ、無様に転んでしまった。
「くそ……!」
男たちが、勝ち誇ったような笑みを浮かべながら距離を詰める。少年は傷ついた腕を庇いながら、それでも必死に後ずさっていた。
その光景に、あの夜会での自分の姿が、重なって見えた。
理不尽に追い詰められ、逃げ場を失う者。
――見過ごせるはずがない。
私は木陰から一歩、前に踏み出した。
「そこまでになさい」
凛とした声が、森の中に響き渡る。男たちが、驚いたようにこちらを振り向いた。
「なんだ、お前は」
「関係のない女は引っ込んでな」
下卑た笑いを浮かべる男たちに向かって、私は静かに掌を掲げた。
指先に、金色の光が灯る。
「関係なくは、ありません。少なくとも今この瞬間からは」
男たちの顔から、一瞬にして笑みが消えた。
――この続きは、また次でお話ししましょう。
よければ評価、感想、ブックマークお願いします!




