表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
収納魔法を裏返したら世界最強でした!~極小収納しか使えない無能と辺境に追放されたので、もう好きに生きます~  作者: 鳥助


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/11

7.まず先に体を戻そう

「……ここは?」


 王城から移動させたのに、クラリスの反応は鈍い。まるで、現状を理解出来ていないような様子だ。それだけ追い詰められていたってことか……。


「こんにちは、クラリス」


「あなたは……ユマ様……?」


「私のことを覚えてくれて嬉しいよ」


 あまり接点はなかったけれど、こうして覚えてくれていたのは嬉しい。


「確か……デルトール地方に追放された、はずでは?」


「そう、追放されたよ。そして、ここはデルトール地方」


「……えっ?」


 クラリスは困惑したように周囲を見渡した。それでも、反応は鈍い。それだけ追い詰められていたってことか……。


 私は王城から極上の椅子を目の前に移動させると、その椅子にクラリスを座らせる。途端にクラリスの体から力が抜け、ふらりと体が傾く。


「大丈夫?」


「は、はい……。ご迷惑をおかけして、申し訳ありません」


「今の状態は辛いよね。体を元に戻さないと……」


「いえ、追放された身ですから、早く追放先に向かわないと……」


 クラリスは律儀に追放先に行こうとしている。こんな体では、起きているのもやっとなのに……。


 だけど、ほっといたら一人でも行動しそうだ。だから、嘘を交えてクラリスに言い聞かせる。


「追放された私と一緒にいるんだから、ここが追放先だよ」


「……あっ、それもそうですね。私ったら、恥ずかしい……」


 私の言葉を鵜呑みに出来るほど、思考力が落ちているみたいだ。これは、すぐにでも体を元に戻さないといけない。


「博識なクラリスに教えてもらいたいんだけど、この世にあるものでクラリスの体を元に戻せる力のある物はある?」


「わ、私の体をですか? ……それでしたら、深海の果実と言われた物が存在します。海深くに生えている果実で、それを食べると全てが正常に戻ると言われています」


「なるほど、深海にある果実か……」


「でも、それはおとぎ話……。未だかつて深海に潜り、その果実を手に入れた者はおりません」


 確かに。この世界では深海まで潜る技術も魔法もない。そんなものはおとぎ話の中での話だろう。


 だけど、それは私にとって可能に出来る。収納魔法が叶えてくれる。


「ちょっと待ってて。今、深海の果実を取ってくるから」


「ユマ様が? ……いや、それは無理ですよ」


「大丈夫。見てて……」


 私は意識を海に向けた。深海にまで意識を飛ばし、深海の果実を探す。


「その果実はどんな色や形?」


「リンゴのような姿だとおとぎ話には書いてありました」


 なるほど、リンゴのようなものか。それに意識を向けると――あった。深海の底に一つだけ生っているリンゴのような果実。


 それに意識を向けると、自分の手に移動させた。目を開けると、そこには意識の中で見た深海の果実が収まっていた。


「はい、取ってきたよ」


「えっ!? そ、そんなことが……!?」


 一瞬で出てきた深海の果実にクラリスはとても驚いた様子だった。まじまじと深海の果実を見ると、さらに目を見開く。


「こ、これは……おとぎ話で伝えられていたものと形や色が一致してます。ほ、本当に……深海の果実?」


「間違いないよ。それを確かめるためにも、食べてみて」


「は、はい……」


 私は深海の果実をクラリスの手渡した。クラリスはまじまじと見つめた後、一口食べた。すると、目を見開く。


「お、美味しいです!」


 曇っていた目がキラキラと輝きだし、夢中で食べ始めた。そして、全てを完食した後――クラリスの体に変化が起きた。


「こ、これは……?」


 クラリスが驚きの声を漏らした次の瞬間、光が優しく全身を包み込み、まるで体の奥深くまで染み込むように広がっていく。


 失われていた生命力を取り戻すかのように、痩せ細っていた体へ少しずつ血色が戻っていった。


 骨ばっていた頬はふっくらと健康的な丸みを取り戻し、細すぎた腕や脚にも程よく肉が付き始める。今にも折れてしまいそうだった体は、しなやかで美しい女性らしい体つきへと変わっていった。


 青白かった肌も、内側から光が溢れ出すように透明感を増していく。思わず見惚れてしまうほど美しく、その肌には健康そのものを思わせる艶が宿っていた。


 栄養不足で艶を失っていた銀色の長い髪も、さらさらと風になびくたびに光を反射し、美しい輝きを放ち始める。


 そして何より変わったのは、その瞳だった。目の下に深く刻まれていた隈は跡形もなく消え去り、張りを取り戻した目元には、自然と涙袋が浮かび上がる。


 その奥で瞳には、先ほどまで失われていた光が戻っていた。あらゆる感情が宿り、宝石のように澄み渡った瞳が、私を真っ直ぐ見つめ返してくる。


「……あれ? 体が……軽い……」


 クラリス自身も体の異変に気づいたようで、自分の腕を触り、頬へ手を添え、信じられないという表情を浮かべる。


 恐る恐る立ち上がる。先ほどまで震えていた足はしっかりと大地を踏みしめ、ふらつく様子はどこにもない。


 その姿は、まるで別人だった。使い潰され、命の灯火すら消えかけていた女性の姿はもうない。そこに立っていたのは、健康的な美しさと気品を兼ね備えた、一人の元公爵令嬢だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ