29.次に必要なものは?
「うん、良い眺めだね」
「はい。短期間でこんな巨大な施設を建てられるなんて、ユマ様は本当に凄い方です」
「そんなことないよ。職人が主導してくれたおかげで、この建物は出来たんだから」
私はエリザと一緒に高い建物から街並みを見下ろしていた。私の能力で瞬時に材料を資材に変え、職人の指導で作り上げた、いわば王城のようなもの。
この建物は国の中心。議会制にしたから王城ではないけれど、それと同じような機能を備えている。
国の法律や予算について話し合う議会だけではない。建物の中には、国を動かすために必要な様々な部署が置かれている。
それを集約して、国の運営に携わっていくつもりだ。と言っても、私は形だけの首相だから、仕事はクラリスやその部下たちがやってくれている。
南方地方の村や町を全て移動して出来た町。全てを一か所には収められなかったけれど、それでも首都にふさわしい街並みがそこにはあった。
村や町はその特性に合わせて、合う地域を選び、配置した。農業が発展しているのであれば広い土地を与えた。製品を作っている町は、材料が取れる場所の近くに。
そうやって、村や町の特性に合わせた地域を選ぶことによって、産業はどんどん発展していった。今では以前の倍以上もの成果を上げている。
それもこれも、神気と神土のお陰。神気で人は体を強化され、通常以上の成果を出し。神土で何倍もの速度で作物が育っていく。
今まで虐げられてきた人たちは、ここで生き生きと暮らしている。目を閉じて、様子を窺えば、誰もかれもが笑顔で日常を過ごしているのが見えてきた。
「いやー、平和っていいねー」
「そうですね。このまま、平和に暮らしていきたいですよね」
エリザと一緒に街並みを見ていると――。
「では、その平和は守らなければいけませんね」
クラリスが現れた。新調した制服を着こみ、副首相として立派な姿を見せてくれていた。
「ユマ様、議会のご提案です」
「次はどんなことをするの?」
「我が国の周囲には、敵となり得る国がいくつもあります。まだ国交を結んでいない国ばかりですから、いつ、この領地を狙ってくるか分かりません」
クラリスは真剣な表情で、街並みへ視線を向けた。
「それに、警戒すべきなのは人だけではありません。魔物の脅威もあります。今までは、それぞれの町に残っていた兵力を使って、なんとか対処してきました」
そこで一度言葉を区切り、私を見る。
「ですが、もうこの場所は一つの国です。これだけ多くの民が暮らす国になった以上、いつまでも町ごとの兵力だけに頼るわけにはいきません」
「つまり……」
「はい。国として、民を守るための武力を正式に整える必要があります」
クラリスは背筋を伸ばし、はっきりと告げた。
「そこで議会にて、騎士団の設立についての審議を行いたいと思っています」
「騎士団?」
「我が国の防衛を担い、外敵や魔物から民を守るための組織です。各地の兵力を一つにまとめ、必要な場所へ迅速に派遣できるようにします」
なるほど。今までは、それぞれの町を守るために、それぞれの兵士が動いていた。でも国になった以上、国全体を守るための組織が必要ということらしい。
「それなら、作ったほうがいいね」
「ありがとうございます。では、さっそく議会の準備をいたします」
「じゃあ、私は人材確保をするね」
「なるほど。ユマ様の観測の力があれば、国に住んでいる中から適した人材を見つけることが出来るでしょうね」
クラリスは納得したように頷いた。だけど、私はそこに注目していない。
「いや、アラカマン王国から引き抜こうよ。絶対に虐げられている人がいるって」
「あぁ……。それは良い案ですね。私の時のように、苦しんでいる人がいれば引き抜いてあげてください」
「じゃあ、早速見てくるね」
私はそう言うと、意識を王城に向けた。王城の中を気配を探り、適した人がいないか探してみる。すると、強い人たちが集まっている気配がした。
その部屋を見ると、リリアンヌとリンガーダがいるのが見えた。二人は聖女と剣聖。強い気配は二人からなのか?
そう思ってみていると、他にも強い気配がした。それは二つ。二人の前で傅いている二人だ。
そんな二人に、リリアンヌとリンガーダは罵声を浴びせる。
『まだ、南の国のベルルーガを落とせませんの!?』
『役立たずなお前たちなど、追放してくれる!』
どうやら、ひと悶着ありそうだ。




