27.南方地方三分の一
「ユマ様。町の運営は滞りなく進んでおります。次の段階に進む時が来ました」
自信満々にそう言ったクラリス。どうやら、ようやく次に動けるらしい。
「じゃあ、次の町を移動させようか。どの町からいくか、決めてある?」
「はい。税収が高かった場所から順番に回っていこうと思います。今回はこの五か所を一度に進めようと思います」
「五か所も? 大丈夫?」
前回、町の一つを移動するのにそれなりに時間を要した。なのに、今回は五か所も同時進行するという。それは、問題ないのだろうか?
「はい。前回、町を一つ移動するのに、かなりの時間を要しました。ですが、改めて作業の内容を見直してみたところ、すべてを順番に進めるよりも、同時進行で進めたほうが効率が良いと判断いたしました」
「同時進行?」
「前回、最も時間がかかったのは、町そのものを移動させる作業ではございません。ユマ様が町を移動させることを領民の皆さんに認識していただき、今後の生活について説明する時間のほうが長かったのです」
確かに、私が町を移動させること自体は、そこまで時間がかからない。問題は、その前後だ。
突然、自分たちの暮らしていた町が別の場所へ移動すると知らされれば、誰だって不安になる。だからこそ、事前に説明して納得してもらう必要があった。
「でしたら、その待ち時間に次の町の説得を進めればよいのではないかと考えました」
「……ああ。それなら、確かに効率がいいね」
「はい。例えば、最初の町について認識を広めている間、私たちは二つ目の町へ向かい、移動について説明をいたします。そうすれば、ユマ様が何もせず待っている時間を大幅に減らすことができます」
「それなら五か所でも大丈夫そうだね」
「むしろ、五か所程度であれば問題ないと考えております」
クラリスは自信ありげに答えた。こんなに自信満々にいうのだから、きっと心配はない。
「町ごとの説明や準備は、私たちが分担して進めます。ユマ様には、最終的な移動をお願いすることになりますので」
五つの町を一度に動かすと聞いたときは、かなり大変そうに思えた。だけど、実際には私が五つの町を同時に移動させるわけではない。
私が一つの町を移動させている間に、クラリスたちが次の町の準備を進める。そうやって順番に作業を繋げていけば、確かに効率はかなり良くなる。
「それに、今回は前回の経験があります。どのような説明をすれば領民の皆さんが安心できるのかも分かってきました」
「一度やったことがあるから、次はもっと早くできるってことだね」
「はい。経験を活かして、少しずつ効率を上げていくことが大切かと思います。それに、今は協力者も大勢おりますから、その方々のお力もお借りして進めます」
私があれこれ指示をしなくても、クラリスが良い感じに進めてくれる。本当に頼りになる。
次の町への移動計画が始まり、忙しくなってきた。今回は一つではない。五つの町を、一気に新しい場所へ移す。
大きな仕事に自然とやる気も漲ってきた。
◇
そして、私たちは町を回り、提案をし、説得をした。初めはみんな戸惑った様子だったが、実際にそれで移動した町を見て驚いた様子だった。
だったら、自分たちも移動をしたい。この重税から逃れ、人らしく生きたい。その願いが強くなった。
すべての希望は叶えられないかもしれない。それでも、少しでも力になってあげたい。その思いで私たちは活動をした。
もちろん、全ての人は移動できない。中には甘い汁を吸って、肥えた人がいるからだ。そういう人を選別して、新しい土地からは排除する。そうやって、選別をしていった。
クラリスと新しい協力者のお陰で、説得は順調に進んだ。そして、町を移動する。その繰り返しをしていく――気づいたら南方地方の三分の一を私たちの国に移動できてしまった。
……クラリス達、凄くない? 私はただ付き添って、少し話しただけだよ? なのに、ここまで進むなんて思ってもみなかった。
どうやら、私の部下も規格外が集まったようで……。みんな、私のためにと動いてくれている。
中には世界で一番の王にする! と、言っているほどだ。いや、私は普通でいいんだよ。そんなに偉大にならなくてもいいんだよ?
そう言っても、周りが張り切るだけだ。謙遜すると、逆に忠誠心に火をつけてしまい、もっとやる気になってしまうという……。これで良かったのかなぁ?
でも、みんなのおかげでここが良い国になりそうで良かった。今まで虐げられてきた人たちが人らしく生きれる場所。そんな場所にしたい。




