14.村の移動
夕日が落ち、辺りが暗くなり始めた頃。役人の目を盗んで、村人が畑に密かに集まってくる。
そうして、村人が集まると村長が話し始める。
「みんな、集まってくれて感謝する。役人に見つかると厄介なことになるから、この場所で集まってもらった」
すると、村人は不安そうな顔をしながらも、しっかりと頷いて見せた。そして、疑問が飛んでくる。
「この村について重要な話ってなんですか?」
「領主を討つ決断したのか?」
「それとも、他の村に?」
その疑問を聞きながら、村長は今回の計画を話し始める。
「簡単に言うと、俺たちはこの場所から移動することになった」
「やっぱり、村を出るんですね!」
「いや、村ごと移動するんだ」
「村、ごと? そんなことが可能なはずが……」
「それが、可能になったんだ。ここにいる、ユマ様のお陰だ」
村長はすぐに私を紹介した。村人たちは私たちの姿を見て、不思議そうな顔をした。
「子供と女性にそんなことが?」
「この子がユマ様で、話をまとめてくれた女性がクラリスさんだ。二人がこの村を救いに来てくださったんだ」
そう説明すると、村人たちのざわめきが強くなる。その反応は、まさか自分たちを助けに来てくれる人がいるとは思っていなかったように。
「そして、ユマ様の力で村ごと離れた領地に移動するんだ」
「そ、そんなことが……本当に? だ、だが……村からいなくなると、俺たちは死刑に……」
「その手が届かない場所まで移動するらしい。だから、捕まって連れ戻されて死刑にされることはない」
村長が再度説明すると、やはりざわめきが大きかった。信じられない。そんな気持ちが現れているようだ。
「俺はこの目で見た。人が簡単に移動をするところを。だから、村ごと移動するのも可能だと思う」
「そ、それが本当なら……私たちはあの領主から離れられるんですか?」
「そうだ。もう、虐げられることもない。搾取されることもない。普通に生きていけるんだ」
力強い村長の言葉に村人は静まり返った。だけど、それも数秒。すぐに声が上がる。
「ほ、本当に……この生活から逃げ出せるんだな!」
「子供に……たくさん食べさせることは出来ますか!?」
「もう、あんな思いをしなくても……」
歓喜の声がどんどん広まっていく。村人たちはこの村から出ていける希望を抱くと、耐えきれなくなって声を上げた。
すると、村長がこちらを向く。
「ユマ様……大丈夫、ですよね?」
少しの不安を抱いている目をしている。だから、私は笑顔で頷いて見せた。
「うん、大丈夫。今すぐにでも、移動することは出来るよ」
「今すぐは役人の目がありますので……。早朝、朝日が昇ってからでいいですか? それなら、役人たちの目も届かないでしょう」
「朝日と共にね。新しい門出には丁度いいんじゃない?」
暗がりで移動しても、状況が分からないから不安になるだろう。だったら、朝日が照らしだした瞬間に移動をした方がいい。
話がそうまとまると、村人たちは家に戻っていった。
◇
「ユマ様、起きてください。そろそろ、日の出ですよ」
寝ていると、エリザが起こしに来てくれた。私は着替えて準備をすると、部屋から外へと移動をした。
すると、地平線から太陽が少しずつ昇ってきているのが見える。そろそろ、朝日が昇る。
「ユマ様、とうとう時間になりましたね」
「うん。村のみんなは準備が終わっているかな?」
「終わっていますよ。あとは、ユマ様の能力次第です」
クラリスも起きてきて、三人で合図となる太陽を見る。太陽が完全に登れば、私は能力を発動する。国の第一歩を踏み出せるのだ。
そうして待っていると、太陽が地平線から顔を出した。
「よし。じゃあ、移動をするよ」
私は意識を村に向けた。すると、村の様子がよく分かる。みんなが窓から外を見て、その時を待っているようだ。
家、ひとつ一つに意識を向け、移動先を決める。そして、能力を発動すると――何もなかった大地に次々と家が建つ。
不揃いに建っていた家を規則正しく並べて、見栄え良く。一本の道に並ぶように、家々が立った。
だけど、それだけじゃない。畑の作物も移動させる。そのために、大地の土を空中に移動させて、それを落とす。それだけで、大地は耕されたようにフカフカの畑が出来た。
その畑に、育ててあった作物を一瞬で移動させる。すると、畑にはずらっと作物が並び、あっというまに新しい大地に作物が植えられた。
「……凄いです。本当に一瞬で村が移動してきました」
「家だけじゃありませんよ。畑だって……」
その光景を見て、クラリスもエリザも驚いた様子だった。信じてくれていたけれど、この目で見ると印象が違って見えたのだろう。
「ほら、出来たでしょ?」
私が胸を張って言ってみると、二人は笑顔になり頭を下げた。
「ユマ様のお力、御見それしました」
「その力、信じ切れずに申し訳ありません」
「ふふっ、全然いいよ。私だって驚いていたからね」
そう、自分で使っておいて、自分の能力に驚いていたのだから。だから、二人を責める気持ちなんてこれっぽちもない。
すると、家の扉を開けて村人が飛び出してきた。とても驚いた様子で周りを見回り、歓喜の声を上げていた。
みんなが喜んでいる。その様子に、自然と胸がいっぱいになった。だけど、これで終わるつもりはない。まだ、移動をするものがある。
次は税として奪われた物も返してもらう。




