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収納魔法を裏返したら世界最強でした!~極小収納しか使えない無能と辺境に追放されたので、もう好きに生きます~  作者: 鳥助


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13.視察

「じゃあ、エリザ。行ってくるね」


「はい。くれぐれも気を付けてください。危険があったら、すぐに戻ってくるんですよ。それに――」


「分かった、分かった。行ってきます」


 心配そうに見つめてくるエリザを宥め、私は意識を集中させた。クラリスに教えてもらった場所を見つけると、その場所に移動をした。


 一瞬で私たちは目的の村に移動出来た。だけど、周囲を見て唖然としてしまう。


「ここが……南方地方の村?」


 思わず呟いた声は、しんと静まり返った村へ虚しく溶けていく。


 目の前に並ぶ家々は、どれも長い年月、手入れされていないようだった。壁板はあちこちが剥がれ落ち、屋根には大きな穴が空いている。窓ガラスが割れたままの家も多く、扉は傾き、今にも外れてしまいそうだ。


 人が暮らしている気配はある。けれど、その暮らしは辛うじて続いているだけ――そんな印象を受けた。


「これは……ひどいですね。現状は想像以上です」


 隣に立つクラリスも、息を呑みながら村を見回していた。


 村の中は静かすぎた。子どもが駆け回る声も、家族の話し声も聞こえない。時折、風が軋んだ扉を揺らし、ぎぃ……という寂しげな音を響かせるだけだった。


 辺りを見渡すと、ようやく数人の村人の姿が目に入る。しかし、皆やせ細り、俯きながら重い足取りで歩いていた。生気のない表情は、この村が置かれた現状を何よりも雄弁に物語っている。


 私はさらに遠くへ視線を向けた。村の外れには広い畑が広がっている。けれど、青々とした実りとは程遠かった。


 土は乾き切り、ところどころひび割れている。植えられた作物も背丈が低く、葉は黄色く変色し、今にも枯れてしまいそうだった。収穫できるとは到底思えない。


「あれでは、とても村人全員のお腹を満たせませんね……」


 クラリスが悲しそうに呟く。私も同じ考えだった。


 資料には『たくさんの税が支払われている』と書かれていたけれど、実際にこの光景を目の当たりにすると、その理由は一目瞭然だ。


 過剰に搾取された現実が目の前に広がっていた。それはまるで前世の私と同じ……前世を思い出す前の私と同じだ。


 私は静かに拳を握り締めた。


「……まずは、この村の人たちから話を聞こう」


「それなら、私に任せてください。」


 資料だけでは分からない現実が、ここにはある。現状を変えるために、私たちは早速行動に移した。


 ◇


 それからクラリスは村人に話を聞いた。どの人も外から人が来たことに驚き、現状を教えてくれた。


「……思ったよりも深刻ですね。税の徴収が小麦だけじゃなくて、野菜も含まれているなんて。これは、強制的な上納を強いています」


「そこまでする? 普段食べるものまで徴収するなんて……」


「そこまで手を出しているから、支払われる税が多かったんです。過剰に税の取り立てで、庶民の生活が圧迫されているのでしょう」


 深刻そうな顔をするクラリス。今まで見てきた数字の現実を見て、顔を顰めている。


 ここの人たちも領主に良いように使われている。この現状、どうにかしてあげたい。


「ここが村長の家みたいですね」


 歩いた先にあるのは、教えてもらった村長の家だ。クラリスが扉を叩くと、中から一人の女性が現れた。


「えっと……何か御用でしょうか?」


「初めまして。私はクラリスと申します。隣にいるのは、主のユマ様です。村に関してとても重要な話をしにきました。村長さんとお話したいのですが、御在宅でしょうか?」


「えぇ、おります。中へどうぞ」


 女性が中へと私たちを案内してくれた。廊下を進むと、そこは居間だった。その居間のテーブルの椅子に一人の男性が険しい表情で座っていた。


「あなた、お客さんよ」


「俺に客? ……役人でしょうか?」


 私たちの姿を見た瞬間、村長は視線を鋭くした。まるで、敵視しているように見える。


 さて、なんて言えばいいか。そう迷っていると、すかさずクラリスが前に出る。


「いえ、私たちは役人ではありません。離れた領地に住む者です。突然、お邪魔して申し訳ありません」


「……そうだったのか。すまない、睨みつけてしまって……」


「大丈夫です。ぜひ、お聞きしていただきたい村に関する良い話がありまして、お時間宜しいでしょうか?」


「……良い話? ……聞かせてもらえるか?」


 ……凄い。クラリスに任せると、話が進む。流石は公爵家も政務も取り仕切っていた人物だ。凄い、頼りがいがある。


 私たちは村長の前の椅子に座ると、クラリスが話し始めた。


「まず、お伝えしたいことがあります。私たちは、この村の現状を把握しています」


 村長の表情が強張る。


「過剰な税の徴収。それだけではありません。小麦だけでなく、野菜や家畜まで強制的に上納させられ、村の皆さんが生活するための食料まで奪われている。その結果、この村では十分な食事も取れず、畑を維持することすら困難になっています」


「……そこまで、調べてきたのか」


「はい。実際に村を見て回り、皆さんのお話も伺いました。このままでは、いずれ村そのものが立ち行かなくなるでしょう」


 村長は何も言い返せなかった。握り締めた拳が、小さく震えている。


「ですが――私たちには、この現状を打破する計画があります」


「……計画?」


 村長が思わず身を乗り出す。


「本当、か?」


「ええ。ただし、この村だけでは解決できません。だからこそ、ご提案があります」


 クラリスは一呼吸置き、はっきりと言った。


「この村ごと、私たちの領地へ移りませんか?」


「…………え?」


 村長は呆然と口を開けた。隣にいた奥さんも、何を言われたのか理解できないという顔で固まっている。


「む、村ごと……?」


「はい。住民の皆さん全員です。住む場所も、畑も、生活の基盤も、そっくりそのまま移動します」


「そ、そんなこと……気持ちはありがたいが、この村には何百人もの人がいる。老人も子どももいて、荷物だって山ほどある。それに、村を出ていくと……死刑に……」


「できます。ユマ様なら」


 クラリスが断言すると、二人の視線が一斉に私へ向く。私は少し照れながら頭を掻いた。


「えっと……百聞は一見にしかず、かな」


 そして奥さんへ視線を向ける。


「少しだけ協力してもらっても? 隣のお部屋で待っていてもらえますか」


「えっ? は、はい」


 戸惑いながらも奥さんは立ち上がり、隣の部屋へ入っていった。私は収納魔法の能力を解放すると、隣の部屋にいる奥さんの姿を認識した。


 次の瞬間。先ほどまで隣の部屋にいた奥さんが、村長の隣へ何事もなかったかのように現れた。


「きゃっ!」


「なっ……!」


 村長は勢いよく椅子から立ち上がる。奥さんも、自分が一瞬で場所を移動したことを理解できず、目を白黒させていた。


「わ、私は確かに隣の部屋に……」


「どうして、ここに……!」


 二人とも何度も周囲を見回し、信じられないものを見るような目で私を見つめる。


「これが、ユマ様の能力です。距離は関係ありません。人も荷物も、一瞬で移動できます。それに、私たちの領地はこの国とは別のところ……。捕まって死刑になることもありません」


 クラリスが再度説明をすると、私は頷いた。


「だから、この村のみんなを遠く離れた私の領地へ移動させられるよ。向こうには、皆さんが耕せる土地がある。税も生活を壊すような取り方はしない。安心して暮らせる場所を、一緒に作りたいの」


 私は村長の目を真っ直ぐ見つめた。その目は揺れているが、何かを求めるように私をじっと見つめている。


「どうかな? この村ごと、私の領地へ来ない?」


 部屋の中が静まり返る。村長はしばらく俯いたまま動かなかった。やがて、小刻みに肩を震わせると、椅子から立ち上がり、深く頭を下げた。


「……お願いします。どうか……私たちを助けてください」


 その言葉には、この村で耐え続けてきた苦しみと、ようやく見つけた希望が込められていた。

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― 新着の感想 ―
そのうち異端審問官が………来ても『世界の果てに行ってみよう』と追放されるだけかw
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