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5:王立学園の新学期

レッカが大量に持ってきた自己まnいや、お見舞い?の品々を、マリー、リンカ、変態執事の3人が変装しつつ、フリーマーケットで売り払っているうちに、王立学園の始業式の日を迎えた。


初回授業に間に合うように、マリーはリンカを連れて登校している。オルレアン王国では日本と違い、9月が1年の始まりとなっているため、夏休み明けの浮かれた雰囲気が学園内に漂っている。


「マリー様、いつぶりの登校ですか?」

「夏休みに入る前からだから、数ヶ月ぶりかしら?」

「学生らしくもう少し登校したらどうですか?」

「そうしたら誰が裸の王様のフォローをするのよ。王族が対応しないと国が回らない職務が結構あるわ」

「王族・・・マリー様と国王陛下のお二人しかいませんからね・・・」

「あの裸の王様がほんの少しでも良いから多少は有能なら良かったのだけど・・・」


2人は普段通りのつもりで会話しながら学園内を歩いている。しかし、2人のことを、正確には、マリーのことを認識した生徒はその場からそれとなく去り、2人の前には道が開けていた。


「・・・マリー様。めちゃくちゃ怖がれてませんか?荊の女王でしたっけ?何をしたんですか?」

「・・・わたくしが聞きたいわ。・・・いえ、裸の王様が”アレ”だから、わたくしこそが王族の威厳を示さなければならないと思い、いかにも王族らしい振る舞いをしていた気がするわ・・・」

「それじゃないですか?見てください、みなさん道をあけてくますよ」

「そうかもしれないけれど・・・。まぁ今は見通しが良いと考えましょう。ほら、向こうでは新入生の入学式が行われているわよ」


新年度の初日なので、新入生の入学式も行われていた。

その中には、周りからの注目を集めている生徒が何人かいる。


「マリー様のいう”ゲーム”の登場人物もいるんですよね?」

「入学式がゲームの始まりだから、そのはずね」


「そうね・・・」と言いながらマリーは新入生を見渡した。そして、お目当ての人物が見つかったのか、


「ほら、あのピンク色の髪の毛の子がヒロインね。希少な聖魔法の使い手で、教会が後ろ盾のはずよ」

「教会が後ろにいるんですか!マリー様大丈夫ですか?」

「何がかしら?」

「悪魔祓い、されません?」


従者の失礼なこの発言をマリーは微笑むだけで流した。しかし、運悪くその微笑みを見てしまった生徒はすくみ上がっている。


「それで、平民だけど特待生として入学許可が降りて、今は学園の女子寮に、・・・ほんとにヒロイン?」

「微笑んだと思ったら今度は怪訝な顔をして、どうしたんですか?」

「いえ、顔の作りとかはゲームのスチルで見たままで乙女ゲームのヒロインのような美少女なのだけど、雰囲気がちょっと違うわね。それに、ゲームではポニーテールではなかった気がするのだけど・・・ゲームではなくて現実だから、その日の気分で変えたりしているのかしら?」

「細かい設定の違いはしょうがないんじゃないですか?入学書類で知っていたんですよね?」


この中二病の専属侍女は、マリーの言う前世やゲームのことを、自分と同じように自ら考えた”設定”だと思っている節がある。

マリーもそれを思い出したのか、


「・・・そんなところよ」

「ちなみに、他にはどんな登場人物がいるんですか?」

「ええとそうね、あのヒロインの隣にいる茶髪の男の子が幼馴染ね。それと、少し後ろの方にいるあの金髪がメイン攻略対象だったと思うわ」

「幼馴染は優男みたいな見た目ですね。軟弱そう。それで、金髪は・・・ってめっちゃイケメンじゃないですか!王子様みたいですね!」


リンカの目線の先には、金髪で爽やかそうな青年がいた。周りの新入生の女子もチラチラと彼を見ていた。


「乙女ゲームのメインの攻略対象ですからね。王子様に憧れる女の子は多いものよ。それを反映しているのではないかしら?」

「へー、そんなものですか?」

「そんなものよ」

「登場人物は3人だけですか?マリー様好みの年上はいないんですか?」

「あと2人いるわね。1人はこの学園の教師で20代後半の年上だけれど、もう1人は年下の盗賊の少年だったかしら?」

「マリー様はその教師の人を狙っているんですね!」

「違うわ。ネットでは、その教師は”あります先生”、ってネタキャラにされてたわね。イケメンなのに残念なキャラで、」

「ネット?」

「あっ、なんていうのかしら、一瞬で情報が伝わる全国版の井戸端会議のようなものね」

「そんなものがあるんですか。マリー様の発想力はすごいですね!」

「・・・ええ、ありがとう」

「それより、そろそろ時間じゃないですか?」

「そうね。では、わたくしは授業棟に向かうわ」

「わかりました!それでは私は従者棟でのんびりしてきます!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


マリーが授業棟に向かって歩き出した様子を気にかけている新入生がいた。

視線を動かした時に、彼女のピンク色の髪を束ねたポニーテールが揺れた。


「悪役王女があたしを見てた?こわっ!まだイベントの時期じゃないよね?」


独り言だったためつぶやいた中身までは聞こえなかったようだが、隣にいた茶髪の少年が耳打ちをした。


「ジャンヌ、どうしたの?」

「なんでもないわ、テオ」

「そう?何か困ったことがあったらなんでも言ってね」

「ありがとう」


そう返事をした彼女の視線が、今度は後方に移動した。その視線の先には、金髪の王子様みたいなイケメンがいる。


「やっとサマエルに会える!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


新年度の初日ということもあり、上級生もほとんどオリエンテーションで1日が終わった。


放課後となり、マリーは教室を後にする。

ちなみに、リンカと別れてからは誰とも会話らしい会話はしていない。マリーの方は話したかったようだが、周りが怖がって近づかなかった。


「荊の女王の名は伊達じゃないわね。早くリンカと合流して、王宮に戻りましょう」


リンカのいる従者棟に向かって歩いていると、後ろから近づいてくる足音が聞こえた。


「リンカ?わたくしから迎えにいったのに」


けれど、振り向いた先にいたのはリンカではなく、片眼鏡をかけた、緑色の髪をした背の高い男性教師だった。


「あら?カーティス先生?従者と間違ってしまい失礼しました」

「気にしないでよいであります。しかし、自分とマリー嬢は初対面でありますよね?よく自分の名前と顔が一致したであります」

「・・・学園の先生ですから、見かけたことくらいありますよ。カーティス先生がわたくしの名前を知っているのと同じですわ」


乙女ゲームの攻略対象なので知ってました、とはいえず、当たり障りのない返事をしている。


「そうでありますか。しかし、マリー嬢は学園の外では王女であります。一教師と同列に扱うのは不釣り合いであります」

「学園では身分は関係ないのではなくて?それより、わたくしに何か用ですか?」

「そうではありますが・・・。いえ、今は用件でありますね。2つあるであります。1つ目は、夏休みの宿題の提出漏れであります」

「夏休みの宿題・・・?失礼ですが、わたくしはカーティス先生の授業はとっていなかったと思いますけれど・・・」

「読書感想文であります。マリー嬢の担任からの伝言であります」

「そうでしたか。読書感想文は忘れておりました」

(それにしても、担任の先生からの伝言ですか。さきほどまで同じ教室にいたというのに、直接言ってくれてもいいと思いますけれど・・・教師にまで怖がれているようね)


マリーが沈黙したのを、本がないから途方に暮れていると勘違いしたカーティスは、


「課題図書が女子寮の自室にないなら、図書室で借りれば良いであります」

「先生、わたくしは特例で女子寮ではなくて王宮から通っておりますわ。王宮の図書室にも課題図書はあるとは思いますが、せっかくご提案いただいたので、帰りに学園の図書室に寄ってみますね」

「・・・そうでありますか」


特例という単語あたりで、カーティスの顔が一瞬曇ったことが気になりつつも、マリーは話の先を促した。


「はい。それで、もう1つのご用件はなんでしょうか」

「自分が担当する魔法の授業に参加してほしいであります」

「ええと、確か先生が担当しているのは1年生向けでしたよね?わたくしは2年生にあがったのですけれど・・・」

「マリー嬢は1年生の時に受講していないであります。魔法を王宮の家庭教師から教わっているかもしれないでありますが、本来は必修授業なので参加してほしいであります」

(魔法の授業は必修だったのね・・・。国務を理由に参加していなかった気がするわね・・・)


「必修授業であることを失念しておりましたわ。参加させてもらいます」

「時間と場所はこちらの紙に記載してあります。当日は手ぶらで問題ないであります」

「わかりました。それでは、従者を待たせているのでわたくしは行きますね」


担任すら怖がって近づかない中、あります先生はわたくしにもちゃんと接してくれた。多少語尾が特徴的でも、良い先生なのでしょう。

と、本人の知らないところで、あります先生ことカーティス先生の株が上がっていた。

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