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第八話 断罪イベントは、どこへ消えたのでしょうか?

王太子との婚約が発表されると、王宮は大騒ぎになった。

公爵家の令嬢と王太子。

身分の釣り合いに問題はない。

家同士の関係も良好。


何より、ジュリアは学院での評判が非常に良かった。

国王夫妻も、私のことを気に入ってくれていた。


「ジュリア嬢なら、きっとよい王妃になってくれるだろう」


国王陛下はそう言って、嬉しそうに笑った。

王妃陛下も、私の手を取った。


「あなたは、相手の身分に関係なく、人を大切にできる方ですね。どうか、その優しさを忘れないでください」


私は深く頭を下げた。


「ありがとうございます。精一杯、努めさせていただきます」


その後、私はリリアーナにも婚約のことを報告した。

すると彼女は、目を輝かせて私の手を握った。


「ジュリア様! おめでとうございます!」


「ありがとう、リリアーナ」


「私、最初はジュリア様のことを怖い方だと思っていたんです。でも、今は本当に大好きです!」


私は思わず笑ってしまった。


「私も、あなたと友達になれてよかったわ」


リリアーナは、聖女としての修行を続けていた。

ゲームでは、彼女が聖女の力を覚醒させることで、王国を脅かす魔物を退ける展開があった。

けれど、彼女は以前よりずっと自信を持ち、周囲の人々に支えられながら成長していた。

私は彼女の努力を誇りに思っていた。


そして、ある日。

私はふと、気づいた。

「……あれ?」

学院の卒業式も終わった。

王太子との婚約も決まった。

主人公とも仲良くなった。

家族との関係も良好。

攻略対象たちから嫌われるどころか、むしろ好意的に接してもらっている。


そして、ゲームの最終章で起こるはずだった断罪イベント。

その気配は、まったくない。


「……もしかして、バッドエンド回避、成功した?」


私は恐る恐る自分の両手を見つめた。

火刑に処されるはずだった未来。

すべてを失うはずだった人生。

それが、いつの間にか、幸せな未来へと変わっていた。


「やった……!」


私は思わず小さくガッツポーズをした。


「これで、もう処刑されなくて済む……!」


その姿を、偶然通りかかったアレクシスに見られてしまった。


「ジュリア? 何を喜んでいるんだ?」


「い、いえ! 何でもありません!」


「そうか?」


彼は少し不思議そうに首を傾げたあと、私の手を取った。


「それなら、少し散歩でもしないか。今日は公務も終わったし、君とゆっくり過ごしたい」


私は笑顔で頷いた。


「はい、喜んで!」


もう、無理をしなくてもいい。

誰かに嫌われないように、必死に振る舞わなくてもいい。

自分の人生を、誰かのためだけに使わなくてもいい。

私は、ようやく自由になれたのだ。

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