第4話 イリーナの腕輪
気持ちのいい朝だーー
夜勤から戻ると、いつも出迎えてくれる我が妻が、出てこない。
不思議なこともあるものだ。
白い子ネコが、家から出てくる。
入り込んだのか?
何か、首のあたりが光っていたが……
「イリーナ、どうした」
「アナイス!!」
寝室から、出てきた我が妻のイリーナ。
「どうしたんだい? 今日も綺麗だね」
「ないの!! 失くなってしまったの」
「何が」
イリーナの顔色は蒼白だ。
「私たちの婚礼の腕輪……」
それを聞いて、オレは頭がクラっとした。
たたの婚礼の腕輪ではない。
オレのこだわりがつまった職人泣かせの特注品。
しかも裏には、古代レトア語で『祝福』と掘ってある世界でたった一つ金の腕輪。
オレは、イリーナと婚礼を挙げるときに、一生彼女を大切にすると決めた。
たとえ、オレの親友が《《あの》》イアン・ヴァルだとしても。
イリーナが、イアンの元カノだったとしても。
小柄で小太りなオレをーー誠実で優しいからと選んでくれた。
寝室は、アクセサリー入れが、ベッドの上にひっくり返っている。
部屋の引き出しという引き出しは開いていた。
「落ち着いて、イリーナ。もう一度いっしょに探そう。案外、ベッドの下にあるかもしれないよ」
オレだって、焦っていた。
オレにとっても思い入れのある腕輪だ。
オレは、ベッドの下を覗き込む。
「お前ら、新婚だからって朝からそんなところでやるの?」
聞きなれた声。
十五年、同じ釜の飯を食ってきた。
同じ、はぐれ魔法使いに引き取られ、修行し、やつは神殿公認の魔法使いに。
オレは、水の魔法が、少し使えたから、サントス神殿で、治療士の職を得た。
そんなイアンは、オレたちの新居のとなりに、魔法屋の店をはじめた。
ただでさえ、トラブルのほうからやってくるやつなのに。
「オレは、夜勤明けだ! オレたちの婚礼の腕輪がなくなったんだよ」
「腕輪?」
「そう」
「もしかして、金色?」
「何か知ってるのか?」
イアンは、外を見る
「白い子ネコの首についてたな~ と」
オレは、イアンに詰め寄った。
「お前、何かしたか?」
「だって、落ちてたんだぜぇ~ そこに子ネコが来てさ。つけてやったら、似合ってて……」
オレは、最後までイアンの言葉を聞かずにやつの無駄にいい面に、グーパンを食らわせた。
「お前かーー!!」




