第3話 イアン、神殿公認魔法使いになる
オレ、アナイス・ルミエは、イアンの家のリビングで、上品に茶をすすってる人ーー
イサベル・エル・ロイル……
この世にただ一人の聖女さま。
「聖女さまですね?」
慌てて駆け寄る。
「そんなときもあったわね~」
「みなが心配されてますよ」
汗だくになりながら、なんとか警備騎士に渡さなければと考えるオレ。
「おばあちゃん~ もういっぱい茶を飲むかい?」
「ええ、いただくわ。それにしても美味しいお茶ね」
「だろ? だろ? イリーナの淹れるお茶は世界一なんだ」
イアンの言葉にオレはピクン。
ゆっくりとテーブルに目を落とす。
リリエラのティーポット。
リリエンハイム製のイリーナの嫁入り道具。
この野郎、また、家に黙って入ったな~!!
オレは、聖女さまの前まで行き、顔は、イアンを睨み付けた。
「町中が大騒ぎになってます」
「あら、ちょっと休んでいただけなのに」
聖女さまは、浮かない顔だ。
「大丈夫だよ。おばあちゃん、孫も魔法使いだって言ってたよな? 彼女におばあちゃんは、ここにいるよって、風の精霊に使いを出したから」
イアンは、仕事が早い。
そこは認める。
ほどなくしてーー
背の高い、銀髪、銀の瞳の色白の女の子が、イアンを訪ねてきた。
「おばあさま!!」
「アウグステ?」
「どこに行ってたんです? 戻ったらいなくて……心配しました」
「綺麗な花売りが通りかかったのよ」
「おばあさま~」
「あはははは……面白いおばあちゃんだな」
アウグステが、イアンを見る。
「お前か? おばあさまのことを知らせてくれた魔法使いは」
「イアン・ヴァルね〜」
「そうだ。アウグステ・エル・ロイルだ。おばあさまのこと、礼を言うぞ」
アウグステという少女、きっとイサベル聖女の若い頃にそ作りなんだろうな。
面影がある。
オレは、いやな予感がしてきた。
イアンを長年知っていると培われるカンだ。
「ねえ、お礼に、食事でもどう?」
こいつは、昔から女グセが悪い。
オレの妻のイリーナが彼女だったときから、美女とみれば口説いてる。
しかもこいつの見てくれも無駄にいい。
本当に無駄だと思う。
背だけでも、半分くれと思う。
ふと我に返った。
銀髪の少女は言った。
「礼は、今度また。おばあさまを早く休ませたい」
「あら、ゆっくり休んだから、大丈夫よ。歩いて帰れるわ」
「待って、おばあさま。輿を用意してます」
聖女さまは、ソファから立ち上がるとしっかりした足取りで、歩いていった。
そして、三日後ーー
イアン・ヴァルの家に、神殿公認の魔法使いのバッジが届けられたのだった。




