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9希望の過去5

 修学旅行が終わり、普通の学校生活が再開した。私はとても、怖かったが学校に向かった。そして、教室に着くと何も起こらなかった。


 何も起こらなかったのだ。


 無視。これを徹底的にされたのだ。私は修学旅行で自分の容姿は憧れの対象で羨まれるものだと言うことを強く自覚した。同時に目立ちすぎると孤立することを知った。当然の結果と言ったらそれまでのことなのかもしれないけど、私は悲しかった。涙をいっぱい流したかった。でも、私は鉄仮面を貫き通した。


 きっと、泣くと、更に距離を置かれてしまうと悟ったから。


 今にして思えば、私は、この時、素直に泣くべきだったと思う。悪目立ちしても良かったと思う。クラスメイトにやっていることの残酷さを知らしめるためにも。私の心を守るためにも。私のこの態度は、余計にクラスメートの気に障ることとなったから。


 小学生の集団いじめと言うのは表立って大きなことはしないが小さなことはする。体育の時の着替えを少し荒らす。掃除した後に椅子を下ろさない。ゴミが椅子の下に多く落ちている。ランドセルの中を少し濡らす。などなど。表立ってはこういう小さなことの積み重ねが行われる。この小さな積み重ねが活発に行われていた理由は何となく想像ができた。

「ねえ、昨日の見た?」

「うんうん」

「そっか。・・・そっか」

 クスクス。

 私は悟った。おそらく、クラスで連絡網ができていて、そこで、遊びあっているのではないか?と。この悪い遊びが私を孤立させるのを加速させていたのだと思う。私はクラスメイトの去り際にこんなことを言われたことがあった。

「そうやって、孤立してることが素晴らしいって思ってるんでしょ?」

 私は孤立していても小学校を卒業するまで学校に行った。誰にもいじめられていることを言わずに。メイちゃんにも。私が休まずに学校に行ったのにはいくつか理由はあるが、一つは、私が学校を休むことで更に過激になるんじゃないか?と思ったから。一つは、冬休みが明けたら私への熱も冷めるだろうと思ったからだ。だが、私への熱は冷めることはなかった。




 卒業式の日。当然親が来る。私は母が来た。だから、私はその日は安全だと思っていた。だが、違っていた。私は体育館に行く前の時間、いつも通り教室で本を読んでいた。皆は、私が独りなのをいつものように笑いながら見ていた。だが、同時に苛つきながら見ていた。クラスメイトたちは焦っていた。修学旅行の日に視線が集まって辱めに会った仕返しが十分にできていないと感じていたから。希望が泣く顔を見たいと思ったから。だから、後ろに座っていた一人のクラスメイトがわざとに水筒を零した。


 私は声を上げて泣きたくなった。でも、止めた。私の必死に自分を鼓舞していた。


 悲しくなんかない。泣くもんか。泣いたら私が悪いことになっちゃう!


 私はなんとか泣かずに、ただ、睨んでやった。クラスメイトは私に謝りはせず、先生に自分から泣いて報告した。私は泣きまねだとすぐに分かった。でも、私は黙った。


 結局、私は保健室にあった替えのブレザーを着て卒業式に参加することになった。卒業式で私をいじめていた人たちが泣いているのを見て、私は急激に冷めた。元々冷めていた感情が更に冷めた。私の心は檻を破る元気を失くした。


 卒業式が終わって私は保健室にブレザーを取りに言った。保健室の先生は私の手首を掴んで顔を近付けた。私は思わず

「痛い」

 と言ってしまった。保健室の先生は私の言葉を聞いて目を鋭くして手首を見た。私は両手の手首に付けていた手首バンドを外した。右手と左手には傷が一筋、二つずつあった。私は傷を三つ増やしていた。

「ぁあ、辛かったね」

 私は抱きしめられた。私は久々に両親や育美以外からの愛を感じた。私はそれが凄く嬉しくて思わず涙が出て来てしまった。


 その後、親も保健室に来て、私は事の顛末を話した。私は私立の中学校に行くことが決まっており、小学校の同級生とはほとんどお別れだったため、大事にしないで、と頼んだ。私はもう、関りたくなかったのだ。


 それから、両親は私にべったりと近づくようになった。私を独りにしないために。




 私がこの短期間にリストカットを増やしたのにはいくつか理由がある。もちろん、いじめによる精神の消耗もある。だが、一番大きかったのは精神の療養ができなかったからだ。メイちゃんからの連絡頻度がだんだんと減ったのだ。私はメイちゃんは楽しくやっているのだろうと思って連絡を催促しなかった。

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