10希望の過去6
私は心機一転私立中学に通いいじめられることはなかった。でも、私は友達の作り方が分からなかった。だから、私の顔の可愛さから話し掛けてくれる人はたくさんいたが、友達と言えるほど心を許した人はできなかった。私は上辺だけでは難なく会話することはできた。当然だ。合わせに行くから。本当の私を見せることはないのだから。だから、共通の話題になった時もそこからの価値観の違いで一応は盛り上がることがあっても、これ以上、私を見せたらダメだ、というラインで一歩下がった。ほとんどの場合、私は話す内容に熱がないから。同年代の子はテレビなどのオールドメディアには全くと言っていいほど興味はなく、最近の流行りの外国のアイドル、ないし、配信者に興味があるからだ。私は一応その話題について行くために足を延ばすが踏み込みはしない。だから、熱がないのだ。また、私は決定的に根本の価値観が合わなかった。私立と言うこともあって金持ちが多かった。私の家は若干無理して通っていたため、金銭感覚の差、食べているものの差、などから、心からの会話というものはできなかったのだ。
私は何の部活にも入らなかった。だから、母は私をよく心配した。
「希望。今日、学校どうだった?」
「うん。まあまあ」
「そ、そう」
「うん」
「と、友達はできたの?」
「うんうん」
「そう。ゆっくり、自分のペースで馬の合う人が見つかるといいわね」
「うん。そうだね」
こんなふうに私と交友関係について話す時、ぎこちない感じになっていた。母としては、私が早く、心から信用できる、メイちゃんのような友達を早く一人でもいいから作って欲しかったのだろう。だから、私は嘘を吐かずに正直に答えていた。糠喜びはさせたくなかったから。父は私と会話する時は、交友関係のことは置いて私が読んだ小説やライトノベル、マンガのことだったり、テレビのことなどを話すようになった。父は踏み込まなかった。そして、育美を交えて話す時は私は両親と協力して嘘を吐くようになっていた。
「ねえ、お姉ちゃん。今日、育美はカンナちゃんの家に行って一緒にクッキー作ったんだあ」
「へえ、良かったじゃん」
「お姉ちゃんは何したの?」
「私はクラスメイトと昨日のドラマのことを話したよ」
「へえ、そうなんだ」
嘘は吐いていない。ただ、友達と話したよ、と言う感じの雰囲気は出していた。母はそんな私を見て笑顔がぎごちなくなることがたまにあった。
私の近況を尋ねる人が主に二人増えていた。一人はスクールカウンセラー。もう一人が精神内科の先生だ。私は小学校の卒業式でリストカットがバレてから最低でも一ヵ月に一回は第三者と話をする機会が与えられたのだ。
精神内科の先生は私と話す時、私の日々の生活に肯定して無理に友達を作れとは言わなかった。体にガタが来ていないかを確認していた。私の精神の状態が悪化していないかの確認をしていた。私は分かりやすく体に影響が出ていなかったため薬と言う薬は渡されていなかった。
スクールカウンセラーの先生は私の日々の生活を聞いた後、少しだけ「そんなに、話すことができたなら、もう、友達って言っても良いんじゃない?」的なニュアンスのことをたまに言って来ていた。だが、一方で、私の在り方に「分かる。私もそんなふうに適当に話しを切り上げること、あるから」と共感することが多かった。上手い具合に友達なんじゃないかと勘違いさせようとしている気がしたが、私はこのスクールカウンセラーの人と話すのは割と嫌いではなかった。
そんなこんなで学校生活を送っていると少し面倒なこともあった。普段の体育の時の着替えの時もそうだが、水泳の時が一番面倒だった。上手いこと端に移動してなるべく背中を向けて手首を隠して着替えるようにしなければならなかったからだ。一応、病院に行って見えにくい様にしていたのだが、やはり、跡は目立ってしまうため慎重にならざるを得なかった。
私は知人程度の付き合いと思っている子から、遊びに誘われたことがあった。私はその子とは会話を合わせに行けばそれなりに長く会話をできる関係性にあった。私はその子とカラオケに行くこととなった。
「ねえ、希望ちゃん。歌の選曲が古すぎない?」
「そうかなあ、キキちゃんが新しすぎるんだよ。そのアイドルの歌はダンスが、って感じでそこまで、歌には興味がないし。ってか、歌詞が日本語じゃないしね」
私は今後も誘われたら嫌だから、ある程度は私を見せることにしていた。
「まあ、確かに。ダンスありきの歌ってのは分かるかも。でも、明らかに希望ちゃんの選曲は古すぎる」
「古いって言ってもここ十年ぐらいじゃん。演歌とかとは違うんだから」
「さては、希望ちゃん、潜りだなあ?」
「うん。楽しくなかったら、もう帰る?」
「うんうん。別に古いってだけで、嫌いなわけじゃないし。ただ、私ぐらいしか対応はきっとできないと思うよ」
「なるほど。キキちゃんも潜りだったんだね?」
「うん。実はね」
私はこの時、合点がいった。私の潜りの知識である程度長く会話をすることができていたのはキキちゃんも潜りだったからなのか、と。私は少し嬉しくなった。
「何で、私を誘ったの?」
「今日は、確かめるために誘ったの。希望ちゃんは私と一緒で自分を隠してるって思ったからさ」
「これは、一本取られたね。ふふっ」
「まあ、私の女の勘が叫んでいたからね。希望ちゃんは私に近いって」
「へえ、趣味は何なの?」
「私はよくドラマを見てるかな。クラスの子と話すドラマはアイドルが出てるだけでそこまで面白いと思わないんだよね」
「ああ、それ分かる。私もざっくりとしか見てないから」
「だよね。話を合わせるのが大変だよ、ホントに。希望ちゃんは?」
私は中一の五月に割と早く友達と言える存在を作ることができた。だが、中学での友達は結局、その子しか作ることはできなかったが。
友達が一人できるとストレスは減って行くかと言われるとそうともならない。私は上辺だけで会話を合わせる子がそれなりにいたため、余計にストレスが溜まったとも言える。また、キキちゃんもそれなりに私ほどではないがそういう子がいたため、長い時間会話をすることはできなかった。
私はこの頃、メイちゃんと連絡を一週間に一回ほど取っていた。だが、メイちゃんの文字数が明らかに減っていた。だから、私は電話しよ。と言った。でも、メイちゃんは電話を断っていた。その代わりに文字数を増やして誤魔化していた。私はモヤモヤとしたものを感じていた。だが、私は無理に追及をしなかった。




