表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/15

11希望の過去7

 私の中学生活は精神の消耗が小学校の時よりは酷くなかった。ただ、毎日少しずつストレスが蓄積され続ける日々だった。ただ、今回はキキちゃんがいたためにリストカットをして、痛みを感じることで、生きているという実感を得る必要はなかった。ただ、何度もやりそうになった。と言うのもメイちゃんの連絡ペースが一ヵ月に一回になったからだった。私は不思議に思ってそれとなく、母にメイちゃんのことをメイちゃんの母から聞いてくれないかと頼んだが、ラインでの内容ぐらいしか返って来なかった。私はメイちゃんは孤立しているのではないかと思った。だから、毎日連絡を取ろうと何度も思って、でも、私との会話を避けているメイちゃんには迷惑なんじゃないかと思って、とそんなふうに何度も悩んでは踏み止まってを繰り返して、孤独を感じてしまって鋏やカッターを握りそうになったことは数知れずあった。




 私は高校に上がると周りが化粧をし始めた。中高一貫校だったため、突然の変化に凄く驚いた。私は化粧と言う者は凄く相性が良かった。私を私と感じさせるものが薄まり、私で悩む必要が無くなるからだ。デカルトが「我思う故に我あり」と言っていた。余計に私で悩んでしまうのではないかと一見思えるが、私は心に嘘を吐くことは得意だったため、嘘の補強に使うことができたのだ。どこかで、これは私であって私ではないという考えが頭に過って心が楽となったのだ。短期的には心が楽になるものだった。長期的には気付かない内に私の心を抉るものだった。




 そうやって私は私を傷つけながら高校三年生になっていた。そして、今日、私は久しぶりにメイちゃんに会う約束を取り付けることができた。私はずっと会いたいと言い続けていた。今朝、学校に行く前、母が私を酷く心配した様子で見つめていた。私は嫌な予感をピンピンに感じていた。だから、今朝の母の態度は私を更に不安にさせるには十分だった。私は午前中授業だったためそのまま、待ち合わせ場所に向かった。平日の学校のある日だ。メイちゃんはわざわざ学校を休んでこっちに来ていることになる。これも、私を心配させるのに十分な役割を果たしていた。私の心臓は強く跳ねていた。




 待ち合わせ場所の喫茶店に着いて私はメイちゃんを探した。十年近く会っていないがすぐに分かるだろうと思っていた。

「あっ!?」

 私が目にしたのはメイちゃんの母だった。私の心臓が強く跳ねた。一歩踏み出すのが怖かった。

 メイちゃんの母は私に気付くと微笑んだ。心なしか頬はコケていて痩せていた。私の心臓は強く跳ねた。私は全身が震えた。私は震える足を頑張って踏みしめて席に着いた。

「久しぶりね。希望ちゃん。随分大きく・・・」

 メイちゃんの母はその先の言葉を紡ぐことができなかった。私の心臓は強く跳ねた。

「最近は涼しくなって来ましたね。私は昨日、とうとう布団を冬仕様にしたんですよ。ちょっと早いけど電気湯たんぽも。母さんも昨日はおでんを作っちゃって。やっぱり、女性は体を冷やすとよくないですしね。おかげで、私はトイレに行く回数が減ったんですよね。最近は水筒には紅茶を入れっちゃったりしてますよ。・・・ぁあ、泣かないでくださいよ。泣かないで、泣かないでよ。泣か・・・ないでよ」

 私も涙が溢れて来た。ずっと、ずっとずっと、十年近く見ないようにしていたものに、今、向き合って見てしまった。私は無意識に悟ってそして、意識的に注意深く連絡を取っていた。確信があった。でも、それを受け入れたくなくて、深く深く踏み込まなかった。でも、今日、メイちゃん側から私に会いたいと連絡が来て私は、私は、一パーセントにも満たない希望に掛けて喫茶店まで一歩踏み出していた。私はここに来るまでの間に受け入れるための準備を無意識にしていた。私は必死に生きていると考えていたのだが、どうしても、それを否定するための材料が無かったから。

「私は、・・・私は、ずっと、ずっとずっと、耐えてたのに。ズルいよ。ズルいよ。メイちゃんのズルっ子!ズルっ子!ズルっ・・・」

 私は一度溢れてしまった感情を、私を止めることができなかった。私は声を上げて泣いた。泣いた。周りから視線を引いてもお構いなしに。私の心臓は強く跳ね続けた。




 私は強く感情が揺れながらも詳細を聞いた。場所を喫茶店から、カラオケに行き二人だけの静かな場所に移動してから。メイちゃんの母は紙に詳細を纏めていた。きっと、まだ、立ち直れていないのだと思った。私は涙でぼやける視界の中で必死に文字を追った。どうやら、小学六年生の時に、教室の窓から飛び降りていたみたいだ。教室は四階だったみたいだ。死ぬには十分だったみたいだ。どうやら、メイちゃんは転校してすぐにいじめに合ってずっと耐え続けていたみたいだった。私は、よくそこまで我慢できたね、と思ったと同時に私に強烈に憤怒して虚無感に襲われた。私がメイちゃんの心を常に明るく照らし続ける太陽になれなかったことへの憤怒。そして、私の最初の友達を失ったことによる虚無感だ。

「家まで着いて行くよ」

 私はメイちゃんの母にそう提案された。だが、私は断った。

「ごめんなさい。学校に忘れ物しちゃった。良ければ先に行っててください」

 私は走ってカラオケボックスから抜け出した。空は暗い雲で覆われていて雨が降っていた。私は走った。走って走って走り続けた。そして、学校に着くと屋上まで駆け上がった。

「私は学校という社会に殺されたメイちゃんに会わなければならない。メイちゃんの純粋な心を取り戻さなければ」

 私は徐々に縁に近づいた。

「うん。聞こえるよ。メイちゃん。願わくば、次の世界では報われますように」

 私は走って思い切り踏み込んだ。そして空で止まった。


 希望神が現れた。





 私が皆無君を見た時、同類だと思った。ただ、心に素直に生きている子だとも思った。そして、心に素直に生きている子には生きて欲しいと思った。だから、私は今の心に嘘を吐いた。私はこの時、今まで身に着けていたものは無駄じゃなかったと初めて思って感謝した。


 でも、


 皆無君の過去を見て私は、私は心を偽れなくなってしまった。やっぱり、心に素直に生きることは自分を苦しめてしまうのだ、と。私は蓋をした感情が再び溢れてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ