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王の花嫁  作者: 川本千根
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余計なこと

数日後、南の村から帰って来た王は戻ってすぐ自分の部屋にハナをよんだ


歴代の王は髪結い処を自分の部屋のなかに持っていたが、カエンは妻の部屋に髪結い処を設置した

なのでハナが自分の部屋とホールひとつ挟んだ王の部屋に入ることはめったになかった


カエンは部屋の長椅子にハナを座らせ付き人のライカに席を外すよう命じた


カエンはハナの前に立ち自分を見上げるハナの目をしっかり見て話しかけた



「ハナ、私に言いたいことがあるのならはっきり言え」


「聞こう、言え」


それに対しハナはぱっと椅子から立ち上がり王の前にひざまずいた


そしてシャリアに人を動かすのに報酬はいらないと諭されたこと、そして自分が作った薬で得た砂金を手元に置きたがったわがままを王に詫び、すでに砂金は財務を預かるユジンに収めたことを告げ、王に声をかけるって隙を与えず、逃げるように部屋を去っていった


それを見送ったカエンはめずらしくため息をついた


深い深いため息であった





結果として小さい温石は少量だが牧草地に隣接する砂のなかにあった


これでもし牧草地を掘り起こしてその下に温石が見つからなかったら、やはり温石が植物の成長に害を与えている可能性が高くなる


しかし貴重な牧草地を掘り起こす許可は出なかった



見つけた小さな温石は文献通りとても水に弱いことがわかった

水をかけただけですぐその温かさを失ってしまう

そして再び熱を発することはない


大きい温石は水につけてもその温かさは失われないのに



この丸い大きな温石と小さないびつな形の温石とは同じものなのだろうか?

政治所の一室で温石に手を当てながら考え込むハナにシャリアはある思い出を語った



「私の母親はとても穏やかで優しい人でしたが、5、6歳の時一度だけ叩かれたことがあります」


「森の国白国にいた時のことです」


「私は朝鳥小屋に卵をとりに行く母親についていき、鳥小屋の前の細い百日紅の木の根本で羽化したばかりのセミを見つけました」


「そのセミは全身透き通るような薄い黄緑でとても美しかったのです」

「思わず私はセミの羽根に触れてしまいました」


「鳥小屋から出てきた母親はそれを見て私の手を叩きました」

「シャリアが触ったことでこのセミはもう飛ぶことができない」

「羽根が変形してしまうと…」


「この石を生き物として考えてみたらどうでしょう」


「成長したセミは人に触れられても羽根は変形しませんが、羽化したばかりのセミの羽根は形が変わってしまう」


「温石も生まれたばかりの小さいうちは水にとても弱く、大人の温石にはとっては害なすものではない…と」



ハナは黙って考え込んだ


その様子を見てシャリアはハナ様は変わられた…と思った


最近様子がおかしい


前は私がこんな話をしようものなら、目を輝やかせて一緒に可能性を探って下さったり、その突拍子のなさに笑い出したりしていたのに


変わられたのはあの頃からだ

私が王にあの日のハナ様の話をしてしまった頃からだ


なにかハナ様が王を誤解されている様子だったので一度話し合ったほうが良いと思ってのことだったが…


私はとんでもなく余計なことをしてしまったのかもしれない


ハナ様にそのことをお話するべきだろうか?

しかし…


シャリアは二度目の失敗を恐れて口をつぐんだ




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