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王の花嫁  作者: 川本千根
45/50

金柑

シャリアはハナの温石調べを手伝うようになってつくづく王はこの方が妻では大変だなと思っていた



この方は人として賢くない


確かに頭の回転は早い

ひらめきにも他を寄せ付けないところがある

前進力も素晴らしい


だか、思い込みが強すぎる

自分の出した答えに自信がありすぎる


そしてこの方の生育歴が原因かも知れないが、モノの見方が歪んでる

自分にも似たところがあるからよくわかる


コンプレックスが強い人間には視界に欠けがある

恐れが強く、見たくないものを見ないようにしてしまうのだ

しかしその見たくないものの中にこそ重要な情報が入っていたりする


その情報が無ければ正しく思考できないような…



サリ様とは正反対だとシャリアは思った


サリ様はどんな答えも固定なさらない

物事をあらゆる方向から客観的に見ることができる

視界に欠けがない


正しく情報を受け取りあらゆる角度から思考する

だからこそサリ様の考え方はとてもしなやかなのだ


施政に携わる者としては欠かせない資質だ


王はよくあの可憐な容姿の内に潜むサリ様の能力を見破ったものだ


トウゴ様のあとの宰相には財務を司るユジン様がなるだろう

その次の宰相には多分…


鳥湖には女性が政治に関わる風習がない

将来的にサリ様を宰相にするにはサリ様の能力と片手間で施政に関わっているわけではないことの証明が必要だ


たまたまだろうが、王が人前でサリ様に結婚を禁じ、それをサリ様が受けたことで政治局の中にサリ様を受け入れる土壌が出来たのだ


実力のある者に人はすり寄る

すでにサリ様は局にご自分の派閥をお持ちだ

代々政治家を排出している家柄のせいだろうか

必要とあらばどんな理不尽なことも受け入れられる


ご自身も…王の期待がわかっているのだ


これからもサリ様は神に与えられた能力を王のため、鳥湖のために捧げるだろう


なにか…少し、お可哀想に感じる


人としての賢さがサリ様の女としての幸せを遠ざけた



逆にハナ様はあの思い込みの強さや少し理解の浅いところが女として可愛らしく感じさせるのかも知れない

たとえその方向性が間違っていても一途なところが


しかしハナ様が今のままではあまりにも王がお気の毒だ…



だいたいハナ様はあの金柑のことでどれだけ王を悩ませたか気づいているのだろうか


王は継続性のないことを嫌う


今回たまたまハナ様は砂糖を大量に手に入れられた

そして財務に少し余裕があったから金柑の砂糖漬けを運ぶ人足を南の大陸から雇うことが出来た


しかしこの青国で暮らした末、白国への移動の際今回と同じことをする予算が取れる保証はない


と、いうか多分無理だろう


今回しかできないであろう金柑の砂糖漬けを配ることなど、王としては本来受け入れられる話ではないのだ


ハナ様はご自分が果物好きなのだ


ハナ様は偉いお医者さまを味方につけ金柑の薬効や甘味が人の心に与える影響などを王に説いた


それで王も金柑を配ることを許したのだが…


それは王としての判断というより妻のわがままを受け入れた夫としての判断のようにおもう


王らしくない


そのことで葛藤があったはずだ


なのに、先ほどのハナ様のあの言い様は…



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