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王の花嫁  作者: 川本千根
41/50

シャリア1

王宮をこっそり抜け出し人気のない砂漠の日中をハナはストールを巻き一人歩いていた


なぜこっそり抜け出したかというと…


この数日前、湖での漁を見学した帰り、まっすぐ王宮に帰らず砂漠まで足を伸ばし砂の質など確かめているうちハナは脱水症状を引き起こし珍しく体調を崩した

それを王に咎められしばらく外出を控えるように言われていたのだ


今日は王は祭事のため一日神殿にこもる

付き人のナミは妹の出産を手伝うためさっき里に帰って行った


これ幸いとハナは王宮を抜け出した


歩いているうちハナは湖の縁に沿っている牧草地がプツリ終る場所を掘ってみたいと思った




砂漠に埋める網の試作品作りはユキと共に行った


三種類の太さの糸で三種類の目の大きさの網を作った

合計9種類の網を試作品を元に有志の協力者たちが今量産している


その網を埋める場所の選定を朱国でハナと共に作業した役人たちが行っている




ハナは今、温石に夢中だった

ハナはこの石の温かさが植物の成長を阻んでいるのではないかと感じていた


だとしたらいきなり緑が終るここには温石が埋まっていて草の生えている下には無いはずだ


衝動に駆られてハナは近所の家から鍬とミノを借り、緑地帯に接する砂を掘ってみた


そこにたまたまリオスとシャリアが通りがかった

二人は灌漑のため湖から水を引くトイの設置予定場所を見てきた帰りだった


彼らもこの牧草地の縁を歩いていた


「姉上…ですよね?」

「姉上、こんなところで何をなさっているのです」


気持ちがすぐ行動に出るハナの性分をこの頃のリオスは充分わかっていた

その性分に一番早く気づいたのはリオスだった

怒らせて踵を蹴られたことがある



「また何か思いついたのですね」

と、鍬を持つハナに呆れ顔のリオスの横でシャリアはほほえんで立っている


シャリアは朱国にいた頃、サリと組んで地図を作るための聞き込みに回ったフェイの孫だ


フェイの長女の息子で地方の神官をしていたのだが、その優秀さが鳴り響き都に呼び寄せられた

そして政治局の一員となりサリと一緒に旅に出た


ハナは三年の旅の後、サリにこの男を紹介されたとき

あっ

と思った


見た目が似ているのだ、カエンに


あのときの「シャリアは良い男だが好きになってはいけない」という言葉はこういう意味だったかと…


王が自分に似たシャリアにサリの心が動くことを恐れたということは…

サリも王を好きなのだと

そしてそれを王もわかっているのだと



王は周りに澄んだ空気をまとっているけどシャリアさんは何か霞がかった感じがする


王とシャリアさんが似ているということは、王とフェイ様も似ていたのかも知れない


初めて会った頃私は自分がしてきたことの後ろめたさからフェイ様が苦手だった


今にして思えばフェイ様は最初から私を受け入れてくれていた

花嫁選びのとき私の姿を見て嫌悪を示さなかったのはフェイ様だけだった


「姉上?どうなさいました」


「いえ、シャリアさんのお顔を拝見していたらフェイ様のことを思い出してしまって…」


皆でひとしきりフェイの思い出話をしたあと、ハナは二人に温石のことを話した


「そうですか、そんなことを…」

「私はこの青国においての貴重な収入源としか考えておりませんでした」


「温石自体そうあるものではありませんし…」


「兄上にはお話なさいましたか?」


「いえ、まだ可能性とも言えない思いつきの段階ですから」


「フフ、でも姉上は調べてみたいのですね」


「私は姉上の検証のお手伝いをしたいのですが、この緑地の端へ水を引くトイの資材の調達と費用のことでこれからサリたちと打ち合わせをしなければなりません」


「最初に設置しようと思っていた場所が思ったより起伏がはげしく、場所を変えるか、それともそのまま支柱を工夫するなどして予定通りに行うかで迷っているのです」


「財務のユジン以上にサリが…厳しいのですよ」


と言ってリオスは笑った

そしてシャリアに少しハナを手伝うよう頼み


「では姉上、私はこれで失礼します」

と政治所に帰って行った




リオスを見送ってシャリアはハナに話しかけた


「ハナ様、この辺りは温石は無いと聞きますが」


「シャリアさん、確かに大きい温石は無いかもしれないけど小さい温石はあるかもしれない」


「みんなは売り物になる大きな温石ばかりに目が行ってるけど、掘り起こすと数時間で熱が冷めてしまう小さな温石も、砂のなかにいればずっと熱を保っているのかもしれないと思って」


少しシャリアは何か考えてからハナに言った


「ハナ様、大きい温石は丸い形をしていますが小さい温石はそこらへんの石と変わらない形をしていると聞きます」


「だとしたら日中砂の温まったなか小さい温石を探すのは効率が良くない」

「砂の温まる前の早朝に探しましょう」


「そして」

ここでシャリアはハナに向かってほほえみかけた


「今後あなた様はご自分で砂を掘ることをしてはいけません」

「砂のなかに毒虫が潜んでいる可能性がありますから」


「それに神に供物を捧げる手にまめなどを作ってはいけません」


有無を言わせぬ微笑みであった




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