私財
ハナには少しばかりの私財があった
これは朱国にいた頃薬を作って得たものだ
数年前朱国には原因不明の病が流行した
死ぬ間際まで激しい咳が続く致死率の高い病だった
治る力のないものは最後の最後まで咳に苦しみのた打ち回って死に至る
皆、死よりもその苦しみを恐れた
ハナは神経の中枢を少し麻痺させて咳を鎮める薬を作った
あの朱国特有の黒い大きな蜂の毒を使って
自分が刺されたことであの蜂の毒が神経毒であるのは確認済みだった
その薬は咳も鎮めるが他の臓器への影響も大きかった
病気自体を治す力も無い
だが病人に安らかな最後の時を提供することができた
最後に家族と語り合える状態をつくりだした
もちろん鳥湖の者には無料で配布した
朱国でその病が収束を迎えた頃、南の大陸でこの病が流行した
南の大陸の大公に薬を譲ってくれるよう頼まれたがハナは気乗りがしなかった
病を治すことの出来ない薬だったからだ
しかし南の大陸の強い説得を受けハナは薬を作った
咳が鎮まり、そのうちにいくばくか体力を取り戻し、命が助かる者がいたのも事実だったからだ
薬のお礼に南の大陸から大量の砂糖と少しばかりの砂金がハナに贈られた
この砂糖で移動の際、皆に配った金柑の砂糖漬けを作った
砂金は国庫に入れず手元に残してもらった
青国で植物を育てる研究の費用にしようと思ったからだ
青国では自分の発想である程度の自由を持って砂漠の緑地化に取り組みたいとハナは思っていた
実験が思い描いた結果を残すのはほんとにまれなことなのだ
結果を出せれば成功体験となりそれがなによりの報酬となる
それは何回かの無駄だとも思える努力の末に手に入れられるものなのだ
そしてそれは必ず手に入れられるとは限らない
協力者にこの無駄だな努力をしてもらうためにはは多少の謝礼が必要だとハナは思っていた
結果を出すのに焦ってはいけないとハナは自分に言い聞かせる
焦りは目を曇らせ道を誤らせると…
それは結果を早く出したがる性質の自分への戒めだった




