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王の花嫁  作者: 川本千根
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温石

青国には不思議な石がある


温石と呼ばれる


その名の通りこの石は温かいのだ

一番大きいものだと赤ん坊の頭ほどのものが採れる


この大きさだと掘り出して十年ほど人肌程度の温かさを保つ

水に濡れてもその温かさは失われない

この石が南の大陸の最南端や西の大国の北方で尊ばれる


温石は砂漠の砂に埋まっている

不思議なことに取り尽くしたと思ってもまた数年するとその場所に埋まっていたりする


青国の東に広がる砂漠はその中央付近から東の海辺の領地になるのだが、なぜか青国の領地でしかこの温石は採れない

盗掘を恐れて青国にいる間は鳥湖も中央部のオアシスに武官を配置する



ハナは温石についての数少ない文献を読んでいた


湖族は移動を常とするので運ぶのに負担がかかる書物の量が少ない

口伝承が主で紙に知識を記す習慣が乏しい


カエンが朱国にいた時、サリたちに人の話を聞きに行かせ詳しい地図を作らねばならなかったのも、この習慣のせいである


湖族は高値で売れるこの石を尊ぶが、この石が植物に悪さをしているのではないかとハナは漠然と考えていた




ハナが王宮に落ち着いてしばらくするとサリやユキたちが到着した

続いてリオスやシャリア


最後に王とトウゴが北に民を送り届け王宮に戻ってきた


そして初めて王宮は王宮の体をなした

木造建築物である神殿はすでに完成している

政治所も完成間際だ


ハナはこれでやっと青国での新しい生活が始められると思った


王が王宮に戻った日、行動を共にしたトウゴたちに三日休むよう申し付け、自分は翌朝の湖の祭事に行くと言った


ハナはその日にカエンが間に合うとは思っていなかったのでリオスと行くつもりでいた


皆、王の体を心配して必死に止めた

2月の湖の水が一番冷たい


ハナは止めなかった


無駄だと思ったからだ

王にとって湖は母であり父であり、たった一つの心の拠り所なのだ


義務で行っているわけではない

王はただ祈りたいのだ


次の日の朝、ハナは王の髪を結い冬の湖に青国での鳥湖の暮らしをお守り下さるよう二人で祈りに行った





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