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王の花嫁  作者: 川本千根
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知恵

それから私は祭事のない日は王の持ち帰った砂漠の砂で育つ植物を探している

政治所で湖を見た後、王に紹介された農業指導の役人の方たちと


2メートル四方、高さ50センチのいくつもの木の枠に砂が敷き詰められた場所が湖のほとりにある


そこで私たちはどんな植物も可能性を捨てず、試している


朱国と青国では気候が違うので、もしここでこの砂に根付く植物を見つけたとしても青国では育たないのではないかと王に進言したのだけれど


王は


「それはわかっている」

「考えがあって頼んでいる」

とおっしゃった


王はいったい何を考えているのだろう


もしかして…


私は前々から不思議に思っていたことがある

この朱国の土地の肥沃さだ

大きな川もなく火山もないのになぜこの土地はこんなに肥沃なのか


もしかしたら力があるのは土ではなくこの朱国の植物なのではないか?

逆に植物が土に力を与えているのではないだろうかと


王もそんなことを考えているのだろうか


やっぱり力強い朱国の植物を青国に持ち込もうとしている?


あの淡々とした表情の下でどれだけ広範囲のことを考えているのだろう


日々忙しく動き回ってあらゆる国の方針の決定をご自分で行っている

神事でお体を拘束される時間も多い

いつそんなことを考えているのだろう


私に分かるのは前回の青国への移動を踏襲するつもりはないということだけ


なにか新しいことをしようとしている



王の人としての心にサリさんが住んでいるのであれば私は王に幸せを与えられないのかもしれない


それでも王は私に優しくして下さっている

あれからも時々小さな贈り物が届く


少し…複雑な気持で受け取っている


でもなんとなく

愛情ではないのかもしれないけど私への信頼のようなものを感じる


それならばせめて王の花嫁として少しでも役にたちたい

王のしようとしている事を手伝いたい



リオス様は王のご命令で建築や土木のお勉強を始めた


ユキ様は語学のお勉強を命じられた

青国の砂漠の東、海に面した国から先生をお招きになって


同時にユキ様にはご結婚も勧められた

お相手は国庫を預かるユジン様の甥のアズサ様

この方も政治局にいる



王は国民にも課題を出した


あらゆる生活用品の軽量化だ

家具や食器、寝具、テントにいたるまで

もともと移動を前提としているので湖族の持ち物はすでに軽量化しているのだが…


その他にもありとあらゆる知恵を募集した

例えば効率よく荷造りする手順や新しい保存食、潤滑に回る荷車の車輪の改良案など


良い知恵を出したものには報奨金が与えられ、その知恵は国民全員で共有された


今までとは比べ物にならないほど長期間、大規模な移動の準備だった





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