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王の花嫁  作者: 川本千根
30/50

役目

今のハナを支えているのは昔の自分だった

人に苦しみを与えようとしていた自分だった


少し前はそんな自分を恥じていたけれど、今は違う

あの罪があるからこそ、こうしてこの辛さが受け入れられるのだと思った


これが罰だと思うからこそ…




きれい事ではなくサリのことはどうしても嫌いになれなかった

ハナにとって初めてできた友達だった

長年友達という存在に憧れていて、やっと手に入れた宝だった

だから余計苦しい


サリさんが王をどう思っているのかははっきりわからない、けれど、もし女として王をを好きであるならば苦しい


サリさんも


私にその気持ちを気づかせないように振る舞うには相当の努力が必要なはず


サリはハナの人としての手本だった


ハナはカエンのサリへの気持ちは何も気づいていないふりをしようと決めた

自分もそのほうが惨めにならない


カエン様の妻としてではなく、私は王の花嫁として生きていくしかない


私は感情的になって我を忘れてしまう瞬間があるけれど、王の花嫁として生きていくには少し賢くならなければならないとハナは考えた




地図作りを命じられたのはサリだけではなかった


政治局や役所の人間、神官などのなかで、人当たりの良い者たちが選ばれ、やはり四人一組で各地に派遣された


もちろん結婚を禁じられたのはサリだけだったが




ハナは王の

髪を梳かしながらもしこの黒髪が私に与えられていたらどんな人生だったろうと思った


今までずっと思い続けてきたことだけど


逆にサリさんが私のような容姿で生まれてきたらどうだったんだろうと思う


…どんな姿でもサリさんはみんなから愛されていた気がする



私はうまく行かないことを全て自分の人とは違った容姿のせいにしてきたけど、ここに来てからそうではないと気づきはじめた


学び舎で何回満点をとっても教師に褒めてもらえなかったのは、多分醜い容姿のせいだけではない

私のなかにあった教師の知識の浅さへの軽蔑を教師が感じ取っていたのだ


逆にフェイ様には尊敬と畏怖の念を持って接していた

だからフェイ様も私を認めて下さったのだ


私は自分の容姿に悩む一方でとんでもなく思い上がった人間だった

そんなところが人に嫌われたのかもしれない


だとしたら私は黒い髪で生まれてきても幸せにはなれてなかったのではないだろうか…


「ハナ」


いけない、手が止まっていた




その日の昼過ぎハナは王に政治所に呼び出された

初めてのことだった


ハナが政治所に着くと役人たちと話をしていた王は中座して


「ハナ、二階に上がる、来い」

と命令した


そして二階の窓辺にハナを連れて行き、そこから一緒に湖を見た


あ、ここは…


「父上が最後に湖をご覧になった場所だ」

「父上はここで森の国白国を懐かしんでおられた」


「ハナは白国にいた時のことを憶えているか」

と王は話しかけた


「はい、よく覚えています」


「森で野苺を見つけた時の単純な喜びとか、川辺で動物に遭遇した時のうれしさとか」

「草木の語りかけが親のいない私を慰めました」

「森の奥は人目がなかったので私は伸び伸び過ごせました」

「ひとりが幸せでした」


「ハナ、今が辛いか」


ハナはドキッとした


「あっ、いえ、そんなつもりで言ったわけではありません」

「申し訳ありません」

「今も…幸せに暮らしています」


「神や王に仕えられる事を光栄に思っております」


王はそう言って目を伏せたハナを眺めていたが、しばらくして


「ハナに頼みたいことがある」

と話を切り出した



王によりハナにも移動準備のための役目が与えられた




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