その2
描き終えたビルは、油性ペンのキャップを閉めながら、依頼内容から次のような説明する。
今回の依頼は討伐依頼。最寄りの村から現場までの距離は五キロ。四人という人数は、対象がそれほど大きいということで、早急に向かわなければならない理由は距離と大きさの二つにある。期間は二日間。予定としては、初日となる今日は情報収集、二日目に討伐先へ移動し、電車で蒼春院に帰るとのことだった。
そこでロジーナは二つの疑問を抱く。
一つ目は距離。先ほどの話によると、十キロ以上離れているのが通常と言っていた。山などで姿が見えないということも考えられるが、辺境地担当の白秋院が西にあるように、この国に山は西側にしか存在しない。むしろ東側は平地が続いており、山があっても十キロ以上は離れていて、五キロ先の異変にまったく気付かない村はそうそうない。あっても丘がせいぜいで、四人がかりで倒すほどの大物がずっと隠れることは難しいだろう。
二つ目は帰り道だ。通常、報酬を貰うために依頼場所による必要がある。村からの依頼ではないので、村に寄らずに帰るというのは理解できなくもないのだが、依頼者である黄央院に寄る必要があるはずなのだ。
彼女が質問をする前に、話を聞いたシュールがつぶやいた。
「そういうことか」
一体どういうことなのか?その発言について、ロジーナは考える。寝起きで目がきちんと開いていないイルが、頭をかきながらシュールの発言に反応した。
「何がそういうことなんだ?」
「馬鹿には一生解らないだろうな」
シュールがニヤリと笑いながら、イルを馬鹿にする。寝起きにも関わらず、彼は解りやすいほど過剰に反応して見せた。その隣でロジーナは、シュールの馬鹿と言う言葉に抵抗がありながらも、言い返せずショックを受けている。しかも、そう言われてしまうと同じ質問はしにくくなってしまう。
「さ、もうそろそろ着きますよ。準備をしてください」
そういったビルのほうを見ると、もうすでに窓に書かれた図は消えていた。何らかの魔法なのだろうが、本当に見事な手際だ。
ロジーナが荷物を降ろそうとすると、対面に座っていたシュールが荷物を降ろしてくれた。礼を言うが、先ほどはしゃべっていたのに、なにも言わずにさっさと行ってしまう。その動作に感じが悪いと思いながら、人がつっかえてしまう事を懸念して、ロジーナはあとに続いた。




