その3
特急電車から私鉄を二本乗り継いで、目的地の最寄り駅に着いた。そこからさらに強い向かい風の中、徒歩で十二分。さびれた村はそこにあった。いや、建物はきれいで道も整備されているそこは、さびれていると言う表現は不適切かもしれない。が、なにせ見える範囲に人がいないのだ。集会でも行われているのだろうか?そうロジーナが推察するも、窓ガラスどころか雨戸までしっかり閉まっていた。この真昼間に、だ。明らかにおかしい。
しかしどうやら違和感を抱いているのは、ロジーナだけのようだった。むしろ他三人は、人がいないことについて敢えて触れていないように感じる。
「閑散としてるなぁ」というイルの一言以来、視線までもそらされるような扱いだ。そこに不自然さを覚えて、彼女は先頭を歩くビルに追いついて尋ねてみる。
「あの、おかしくないですか?この村」
「おかしいって、何処がです?」
きょとんとした顔で、ビルが聞き返してきた。そのため、ロジーナも調子が狂う。しどろもどろな言葉を発してから、続きを話した。
「あまりにも人がいなくないですか?」
「過疎化が進んでんじゃねぇの」
質問が聞こえたのか、ひょいと横からイルが顔を出した。そんなに大きい声での会話ではなかったのに、どうやら耳がよかったらしい。ロジーナはそれに驚いてから、反論する。
「院のある首都から電車で数時間のところに、こんなひどい過疎地があるとは・・・」
「そうですね。イル、マイナス一点です」
何の点数なのかわからないが、イルがふてくされているのを見ると、蒼春院内にある特殊なルールなのかもしれない。後ろでニヒルに笑っているシュールも気になるところだ。
よく解らないことの連続で疑問符を並べる彼女に、ビルは笑いかける。
「きっと避難通告が届いているのでしょう。町の外に皆さん待機中なんですよ」
確かにそれなら合点がいく。だが、それとはなにか違うのだ。ただのゴーストタウン状態なら、ロジーナだって気にしない。しかしゴミ箱のごみやら、町にただよう香りが新しいのだ。嗅覚の優れたスメル族じゃなくても、すぐに解ることだろう。ちなみにスメル族とは全十三種存在する人種のうち、特殊能力保持種という分類の人種で、嗅覚に優れているという特徴がある。ちなみに、彼女はイルがそのスメル族だろうと踏んでいた。他の人種が、目と耳を塞がれた状態で物にぶつからずに歩けるなんて信じられないからだ。




