その1
一行は現場に向かうため、電車に乗る。今回の場所は付近の道路が整備されていないので、車で乗り込むことはできないと聞いた。さらに電車で行ったほうが近いのだそうだ。昼頃には着くだろうとビルが教えてくれた。
三人が乗ったのは、特級電車である。寝台を使うほど遠くないが、やはりそれなりの時間がかかりそうだ。
内院が経費を出てくれるからなのか、ずいぶんと立派な電車であった。外装は程よい色合いの黄色に、真っ赤な屋根が特徴的である。内装にいたっても、ブラウンの木目調の壁に、シックな赤色の弾力あふれる座席はいかにもだ。向かい席という配置は特級電車には珍しくないが、足元にここまで余裕があるのは珍しい。
こういうものに乗り慣れていないロジーナは、乗る前から緊張していた。更にいえば、なんとなく予感はしていたものの、彼女は車内での光景を信じたくなかった。なんせ、三人とも異様な格好のまま乗っていたのだ。向かい席のせいで、嫌でも注目を浴びてしまう。高級車両だっただけに、この異様さは目立ちすぎる。ただでさえ姿が個性的なのに、各々が好きなことをしているせいで、さらに人目を引いていた。ロジーナは努めて他人を装うものの、それにも限界がある。
そんな中、人目を気にせぬシュールが、ビルに尋ねた。
「そういえば、今回はどんな依頼なんだ?」
「言いませんでしたっけ?」
「言ってないな」
慣れているはずのシュールが、いらだちを隠せないでいる。どうやら彼は短気らしい。ビルがペンを取り出したので、ロジーナが慌てて寝ていたイルを起こす。ビルの動作を、説明開始の合図ととったためだ。彼女がいないころは、きっとイルはそのまま放置されていた。
それを目で確認したビルは、窓ガラスに図を書き始めた。説明するときにビルが図を描くのは、単純に彼が説明しやすいからである。今回描かれたのは先ほどとは違い、蒼春院と黄央院の二院だけ。その間の少し外れた位置に星を書き、その斜め下に黒丸を付け足す。先ほどの図から考えて、星が現場で黒丸が最寄りの村だろう。しかしその間は、先ほどより確実に短かった。




